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偽装結婚を疑われたら|公正証書原本不実記載と在留資格への影響

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偽装結婚を疑われたら|公正証書原本不実記載と在留資格への影響

偽装結婚を疑われたら|公正証書原本不実記載と在留資格への影響

2026/09/02

在留期間の更新を申請したところ、入管から質問書が届いた。婚姻の経緯、交際の始まり、同居の状況、生活費の分担について、細かく書くよう求められている。あるいは、ある朝、警察官が自宅を訪ねてきて、婚姻届の提出について事情を聴かせてほしいと言われた。偽装結婚の嫌疑は、多くの場合こうした形で表に出ます。

ここで難しいのは、当事者にとっては本物の結婚であっても、書類の上では説明が足りない、という状況が珍しくないことです。言語が違えば会話の記録も残りにくく、文化的背景が異なれば交際の進め方も違います。実体があるかどうかと、実体を証明できるかどうかは別の問題です。

この記事では、偽装結婚の嫌疑がどの罪名で立件されるのか、調査はどこから始まるのか、婚姻の実体をどう示すのか、そして刑事と入管の双方でどのような帰結が生じるのかを整理します。

偽装結婚という名前の犯罪はありません

まず押さえておくべきは、偽装結婚それ自体を処罰する罪名は存在しないという点です。実際に立件されるのは、婚姻の意思がないのに婚姻届を提出して戸籍に不実の記載をさせたという構成で、刑法157条1項の公正証書原本不実記載罪です。戸籍はこの規定にいう公正証書の原本に当たると理解されています。

これに加えて、在留資格の取得や変更、更新の申請において虚偽の内容を申告したとされる場合には、入管法上の問題が別に生じます。刑事の罪名がひとつであっても、手続は刑事と入管の二つが並行して動くと考えておく必要があります。

調査は申請の場面から始まることが多い

入管の調査の端緒は、多くの場合、日常の申請手続です。日本人の配偶者等への在留資格変更申請、在留期間の更新申請、永住許可の申請といった場面で、夫婦それぞれに質問書の提出が求められ、記載内容の食い違いが検討されます。出会った時期、交際の経過、結婚式の有無、家族への紹介、住居の間取りといった項目です。

質問書の回答に矛盾があると、実態調査や事情聴取に進むことがあります。近隣への聞き込み、住民票と実際の居住状況の照合などが行われる場合もあり、婚姻を仲介したとされる者の事件から嫌疑が及ぶこともあります。

いずれの場面でも、最初に提出した書面が後の判断の出発点になります。急いで空欄を埋めた質問書が、数年後に矛盾の証拠として引用されることは珍しくありません。

婚姻の実体は、記憶ではなく記録で示す

婚姻の実体を示す作業の中心は、日常生活の痕跡を集めることです。具体的には次のようなものが考えられます。

  • 同居の事実を示す資料(賃貸借契約書、公共料金の請求書、郵便物)
  • 生計を一にしていることを示す資料(送金記録、共同の口座、家計の分担)
  • 交流の記録(写真、通信アプリの履歴、通話記録、旅行の記録)
  • 周囲の認識(双方の家族や職場の同僚による陳述書)
  • 婚姻に至る経緯を時系列でまとめた説明書

言語が異なる夫婦の場合、会話が翻訳アプリを介して行われていた、共通言語が第三の言語だったという事情は、それ自体が不自然さの根拠にされることがあります。しかし、実際にどのようにコミュニケーションを取ってきたのかを具体的に説明できれば、むしろ実体を裏づける材料になります。説明の順序と資料の選び方が結果を左右します。

刑事処分は在留資格にこう跳ね返ります

この類型では、刑事処分よりも先に在留資格の取消しが問題になることがあります。入管法22条の4は、偽りその他不正の手段により在留資格を取得した場合や、当該在留資格に応じた活動を3か月以上行わないで在留している場合などを取消事由としています。婚姻の実体が否定されれば、日本人の配偶者等という在留資格の基礎そのものが失われます。入管庁の令和7年の統計では、在留資格の取消しは1,446件でした。

取消しの後に在留資格がない状態が続けば、入管法24条4号ロの不法残留の問題が重なります。刑事事件については、同法24条4号リが無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としつつ、但書により刑の全部の執行猶予が付された場合を除外しています。一部猶予でも実際に服する部分が1年以下であれば同様です。したがって、刑事で執行猶予を得ても、在留資格の取消しという別の経路が残ることになります。

在留特別許可の見通し

退去強制事由に該当した場合の出口は、入管法50条の在留特別許可です。同条5項は、在留を希望する理由、家族関係、素行、本邦に在留することとなった経緯、在留期間などを考慮要素として法定しています。婚姻の実体がある事案では、この家族関係の評価が中心になります。2024年6月に改定されたガイドラインが現行の運用であり、不許可の場合は同条10項により理由を付記した書面が交付されます。

もっとも、入管庁の令和7年の統計によれば、在留特別許可は申請2,424件に対して許可1,026件、不許可1,233件でした。申請すれば認められるという性質の手続ではありません。同条2項により、収容令書により収容されている者や監理措置決定を受けた者に申請権があり、同条3項により退去強制令書が発付された後は申請できません。時期を逸しないことが重要です。

よくある誤解

  • 本当に結婚しているのだから、説明しなくても分かってもらえる。実体の有無は資料によって判断されます。何も出さなければ、疑いは残ったままになります。
  • 質問書は正直に書けば十分だ。正直であることは前提ですが、記憶違いや日付のずれが矛盾として扱われます。提出前に双方の記載を突き合わせる作業が必要です。
  • 刑事で執行猶予になれば在留は守られる。在留資格の取消しは入管法22条の4という別の規定によるもので、刑事処分の軽重とは切り離して判断されます。
  • 離婚すれば刑事事件も終わる。婚姻届提出時に婚姻の意思があったかどうかが問われるため、その後の離婚は結論を左右しません。

今の段階でできること

  • 質問書や上申書の提出前に、夫婦双方の記載内容と手元の資料を照合する
  • 取調べでは刑事訴訟法198条2項により黙秘権が告知されます。供述調書は同法198条4項により読み聞かせを受け、事実と違えば増減変更を申し立てられます
  • 通訳を介する場合は、同法175条・178条により通訳と翻訳が予定されています。署名の前に全文の読み上げを求めてください
  • 身柄拘束された場合、弁護人は同法39条1項により立会人なしで面会できます。領事関係に関するウィーン条約36条により、希望すれば本国領事館への通報と領事面会を求められます
  • 住居地や所属機関に変更があれば、入管法19条の7以下、19条の16・19条の17の届出義務を確認する

当事務所の対応

舟渡国際法律事務所では、松村大介弁護士が接見と打合せに直接対応します。中国語については外国人事件専属の通訳が常駐しており、その他の言語については事案に応じて通訳人を手配します。

この類型では、刑事事件と入管手続を一体として設計することが特に重要です。刑事の供述調書は、後の違反審査や口頭審理でそのまま資料になります。婚姻の意思についてどう述べたかが、在留資格の取消しの判断や在留特別許可の判断にまで及ぶためです。当事務所は執行猶予判決で足りるとは考えず、不起訴処分の獲得を最優先の目標としたうえで、退去強制事由の該当性についても故意や過失を争うという視点を保ちます。初回相談は無料です。微信(WeChat)ID matsumura1119 でもご連絡いただけます。

本記事のまとめ

偽装結婚の嫌疑では、争われているのは書類の形式ではなく、婚姻届を出した時点の意思です。そしてその判断は、刑事の法廷だけでなく、在留資格の取消しと在留特別許可という入管の場面でも別々に行われます。三つの手続が同じ事実を別の角度から見ている、と理解しておくことが出発点になります。本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119

この記事の簡体字中国語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099169/

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