舟渡国際法律事務所

不同意わいせつ・不同意性交等|改正後の8類型と弁護、在留への影響

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不同意わいせつ・不同意性交等|改正後の8類型と弁護、在留への影響

不同意わいせつ・不同意性交等|改正後の8類型と弁護、在留への影響

2026/09/02

性犯罪の規定は、令和5年の刑法改正で大きく組み替えられました。かつての強制わいせつ罪・強制性交等罪は、不同意わいせつ罪(刑法176条)と不同意性交等罪(同177条)になり、成立要件の書き方そのものが変わっています。

ところが、この改正を同意がなければすべて犯罪になった、と単純化して理解している方が少なくありません。実際の条文はそうではなく、同意しない意思を形成し、表明し、又は全うすることが困難な状態を作り出す八つの原因が、条文に列挙されています。争点はこの八つのどれに当たるとされているのか、という点に絞られます。

この記事では、改正後の要件、取調べで残る記録の意味、示談が果たす役割と限界、そして有罪となった場合に在留資格へどう跳ね返るかを、外国籍の方の立場から整理します。

条文が列挙する八つの原因を確認することから始まります

不同意わいせつ罪・不同意性交等罪の出発点は、刑法176条1項が掲げる八つの事由です。具体的には、暴行又は脅迫、心身の障害、アルコール又は薬物の影響、睡眠その他の意識が明瞭でない状態、同意しない意思を形成し表明し又は全うするいとまがないこと、予想と異なる事態に直面させて恐怖させ又は驚愕させること、虐待に起因する心理的反応、経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させることです。

これらの原因によって、同意しない意思を形成し、表明し、又は全うすることが困難な状態にさせ、又はその状態に乗じてわいせつな行為をした場合に、刑法176条の不同意わいせつ罪が成立します。性交等に及べば同法177条の不同意性交等罪です。相手が16歳未満の場合は、同法176条3項・177条3項により同意の有無を問いません。

改正で変わったのは、争いの立て方です

実務上の変化は、争点が暴行や脅迫の有無から、相手方の状態と行為者の認識へ移ったことです。旧規定では暴行・脅迫が要件の中心にあり、その程度が争われました。現行規定では、飲酒の程度、意識の明瞭さ、職場での立場の差といった事情が正面から評価されます。

その結果、弁護活動では、当日の飲酒量や時間経過、やり取りの内容、その場の関係性を丁寧に再構成する作業が中心になります。外国籍の方の事件では、当時のやり取りが日本語でどのように行われたのかが重要な争点になることがあります。相手の発言をどう理解したのかは、故意の認定に直結します。

取調べで残る記録が、その後のすべてを規定します

この類型の事件では、初期の供述調書が結論を左右します。刑事訴訟法198条2項により黙秘権が告知され、供述する義務はありません。作成された調書は同法198条4項により読み聞かせを受けることができ、内容が違えば増減変更を申し立て、署名押印を拒むこともできます。

通訳を介した取調べでは、同法175条・178条により通訳と翻訳が予定されています。自由権規約14条3項(a)(f)も、理解できる言語で罪の内容を告げられる権利と、通訳を無償で付される権利を定めています。日本語の調書に署名する前に、通訳人に全文を読み上げてもらってください。一定の事件では同法301条の2により取調べの録音録画が義務づけられています。弁護人は同法39条1項により、立会人なしで面会できます。

示談の位置づけと、その限界

示談は重要ですが、これらの罪は非親告罪であり、示談が成立すれば必ず不起訴になるという関係にはありません。被害者が処罰を望まない意思を示しても、検察官は公訴を提起することができます。

それでも示談交渉には意味があります。被害の回復と、被害者が宥恕の意思を示しているという事情は、起訴猶予の判断でも、起訴後の量刑でも重く扱われるからです。ただし、被疑者本人やご家族が直接連絡を取ることは避けなければなりません。被害者への働きかけを疑われれば、勾留が継続する理由になり、否認事件では接見等禁止の決定が付くこともあります。弁護人が検察官を通じて連絡先の開示を受け、被害者側の代理人と交渉する手順を踏みます。

有罪となった場合、在留資格に何が起きるか

この類型で在留への影響が大きいのは、不同意性交等が入管法24条4号の2の対象犯罪に含まれるためです。同号は、強盗、不同意性交等、危険運転致死傷などの一定の重大犯罪で拘禁刑に処せられた者のうち、別表第一の在留資格をもって在留する者を退去強制事由とします。留学、技能実習、技術・人文知識・国際業務、特定技能などがこれに当たります。

一般的な規定である同法24条4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としつつ、但書により刑の全部の執行猶予が付された場合を除外しています。一部猶予でも実際に服する部分が1年以下であれば除外されます。この違いを整理すると次のようになります。

条文対象執行猶予の扱い
24条4号リ無期又は1年を超える拘禁刑全部執行猶予は除外される
24条4号の2不同意性交等を含む重大犯罪の拘禁刑(別表第一の在留資格)在留資格の種別が要件となる

退去強制事由に該当した場合でも、同法50条の在留特別許可の申請という道があります。同条5項は、在留を希望する理由、家族関係、素行、本邦に在留することとなった経緯、在留期間などを考慮要素として定め、2024年6月改定のガイドラインが現行の運用です。不許可の場合は同条10項により理由を付記した書面が交付されます。

なお令和7年版犯罪白書によれば、令和6年の来日外国人被疑事件の起訴率は44.28%で、全体の40.38%を上回ります。外国籍であることが有利に働くという前提は成り立ちません。

よくある誤解

  • 相手が拒まなかったから同意があった、という理解。条文が問うのは、同意しない意思を形成し、表明し、全うすることが困難な状態だったかどうかです。明示的な拒絶の有無だけでは決まりません。
  • 示談すれば必ず不起訴になる、という理解。非親告罪であり、示談は有利な事情の一つにとどまります。
  • 被害者に直接謝罪すれば誠意が伝わる、という判断。二次被害を生むだけでなく、証拠隠滅を疑われて身体拘束が長期化します。
  • 執行猶予なら在留は安泰、という理解。24条4号リについては但書がありますが、別表第一の在留資格で不同意性交等に問われた場合は24条4号の2という別の入口があります。

ご家族が今できること

  • ご家族が面会できない場合でも、弁護人は刑事訴訟法39条1項により面会できます
  • 在留カードと旅券を確保し、在留期間の満了日を確認する。身体拘束中は更新申請ができず、満了すれば入管法24条4号ロの不法残留の問題が生じます
  • 領事関係に関するウィーン条約36条により、本人が希望すれば本国領事館への通報と領事面会を求められます
  • 勤務先や学校への説明と、在職・在学関係の維持について早めに検討する

当事務所の対応

舟渡国際法律事務所では、松村大介弁護士が接見と打合せに直接対応します。中国語については外国人事件専属の通訳が常駐しており、ベトナム語を含むその他の言語については、事案に応じて通訳人を手配します。最高裁判所の資料(あなたも法廷通訳を ごぞんじですか、令和7年1月版)によれば、令和5年に通訳を要した事件の終局被告人3,851人のうち、ベトナム語は40.4%と最も多い言語でした。

弁護方針として、執行猶予判決を得ることをもって足りるとは考えず、不起訴処分の獲得を最優先の目標としています。あわせて、刑事事件と入管手続を一体として設計します。刑事の供述調書が違反審査や口頭審理の資料になるため、退去強制事由の該当性についても、故意や過失の有無を争う視点を最初から持っておく必要があるからです。初回相談は無料です。微信(WeChat)ID matsumura1119 でもご連絡いただけます。

最後に

改正後の条文は、同意という一語では要約できない構造を持っています。八つの原因のどれが主張されているのかを特定して防御を組み立てること、そして同時に在留の見通しを描くこと。この二つを別々に進めることはできません。本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119

この記事のベトナム語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099165/

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