豚肉やソーセージを持ち込んだら刑事事件に|家畜伝染病予防法45条と在留への影響
2026/09/02
母国の家族が持たせてくれた自家製のソーセージ、真空パックの干し肉、月餅に入っていた肉そぼろ。空港の検疫でこれらが見つかり、その場で回収されて終わりだと思っていたら、後日、警察や検察から連絡が来る。この流れを知らずに来日される方は少なくない。
日本では、指定された地域からの肉製品の持込みが厳しく制限されており、違反は行政上の措置にとどまらず、刑事事件として扱われることがある。持込み量が少なくても、家族への土産であっても、法的な評価は変わらない。本稿では、根拠となる条文、動物検疫所から刑事手続に至る流れ、そして在留資格への影響を整理する。
根拠は家畜伝染病予防法45条
肉製品の無許可の持込みは、家畜伝染病予防法45条の問題となる。同条は、輸入が禁止され又は制限されている物品を輸入した場合について、3年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金を定めている。
ここで注意すべきは、対象が商業目的の輸入に限られていないことである。手荷物に入れて持ち込む行為も輸入に当たり得る。個人的な消費のためであっても、量が少なくても、条文の適用は否定されない。豚肉やソーセージ、ハム、乾燥肉、肉の入った加工食品が典型例である。
検疫での回収から刑事手続へ
実務の流れは、おおむね次のとおりである。空港の動物検疫所において、機内検疫や検疫探知犬、手荷物検査によって肉製品が発見される。持ち込んだ人から事情が聴かれ、廃棄の手続がとられる。ここで終わることも多いが、事案によっては動物検疫所から告発が行われ、警察の捜査、検察官の処分へと進む。
告発に至るかどうかを分ける要素としては、持込みの量、回数、申告の有無、質問票への記載内容、過去に注意を受けた経過があるか、営業目的をうかがわせる事情があるかといった点が挙げられる。とりわけ、質問票に肉製品を持っていないと記載していた場合には、意図的な申告の回避と評価されやすい。
知らなかったという説明はどう扱われるか
この類型では、故意の有無が主要な争点になる。持ち込んだ物が肉製品であることの認識、そして規制の対象であることをどう認識していたかが問題となる。
もっとも、日本の空港では、入国時の質問票や機内アナウンス、掲示によって申告が求められている。したがって、知らなかったという説明が通るかどうかは、実際にどのような案内に接していたか、質問票にどう記載したか、荷物を誰が詰めたのか、といった具体的な事情に左右される。家族が善意で入れたもので本人が中身を知らなかったという事案では、荷造りの経過を裏づける資料が意味を持つ。
刑事処分が在留資格にどう跳ね返るか
まず、罰金にとどまる場合には、入管法24条4号リの退去強制事由には当たらない。同号は無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を対象とし、但書により、刑の全部の執行猶予が付された場合は除外される。一部執行猶予でも実刑部分が1年以下であれば除外される。家畜伝染病予防法45条の法定刑からすれば、通常この条文に至ることは考えにくい。
しかし、在留を続けられるかどうかは別の問題である。在留期間の更新や在留資格の変更の審査では素行が考慮されるため、前科の存在は説明を要する事情となる。また、身柄が拘束されて勤務や学業が中断すれば、入管法22条の4による在留資格の取消し(在留資格に応じた活動を3か月以上行わないで在留していること等)が問題となり得る。将来の帰化を考える場合には、国籍法5条1項3号の素行要件にも関わる。
参考として、警察庁の令和7年確定値によれば、来日外国人の総検挙人員は12,777人であり、そのうちベトナムは4,167人(32.6%)で最も多い。ここでいう来日外国人とは、永住者、永住者の配偶者等、特別永住者、在日米軍関係者及び在留資格不明者を除く定義である。
よくある誤解
第1に、その場で捨てたので終わりだという理解である。廃棄と刑事手続は別であり、後から連絡が来ることがある。
第2に、家族への土産だから問題ないという理解である。目的の私的性は、条文の適用を排除しない。
第3に、少量だから見逃されるという理解である。量は処分の判断における一事情にすぎない。
第4に、罰金なら記録に残らないという理解である。罰金も刑罰であり、刑法34条の2が定める期間が経過するまでは、在留審査の場面で考慮され得る。
連絡を受けた後にできること
取調べでは、刑事訴訟法198条2項により供述を拒むことができる旨が告げられる。調書の内容が説明と食い違うときは、同条4項に基づき増減変更を申し立てることができる。日本語での聴取に不安があるときは、刑事訴訟法175条・178条の通訳・翻訳の手続がある。自由権規約14条3項(a)及び(f)は、理解する言語で罪の性質を告げられる権利と通訳の無償の援助を保障している。弁護人との接見交通権は刑事訴訟法39条1項による。
資料としては、搭乗前後の経緯、荷造りをした人、購入や受領の経過、質問票の記載内容、これまでの渡航歴、勤務先や学校での状況を早期に整理しておきたい。再発防止として、検疫の対象品目を確認した記録を残しておくことも、意味のある材料になる。
当事務所の対応
当事務所では、松村大介弁護士が接見と打合せに直接対応する。中国語については外国人事件専属の通訳が常駐しており、その他の言語については事案に応じて通訳人を手配する。
方針としては、執行猶予判決では足りないと考え、不起訴処分の獲得を最優先の目標とする。検疫関係の事案では、故意の有無、申告の経過、量と態様、再発防止の具体性が結論を分ける。刑事事件と入管手続は一体として設計し、刑事段階の供述調書が後の在留審査に用いられ得ることを前提に対応する。初回相談は無料であり、微信(WeChat)ID matsumura1119 からもご連絡いただける。
おわりに
土産の肉製品が刑事事件になるという感覚は、多くの方にとって縁遠いものだと思う。だからこそ、経緯を丁寧に説明し、記録として残すことが結果を左右する。本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談いただきたい。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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この記事のベトナム語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099157/
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