無免許運転で逮捕された外国人の方へ|うっかり失効との違いと在留への影響
2026/09/02
免許証の有効期限が切れていることに気づかないまま通勤していた。母国の免許証があれば日本でも運転できると聞いていた。取消しや停止の処分を受けた記憶がなく、はがきも見ていない。無免許運転として検挙された外国籍の方から伺う説明は、おおむねこうした内容である。
日本の道路交通法は、有効な運転免許を受けないで自動車等を運転する行為を処罰の対象としている。ここで重要なのは、免許を一度も取ったことがない場合だけでなく、更新を忘れて失効した後の運転や、停止処分の期間中の運転も、同じ枠組みで扱われるという点である。本稿では、失効運転と本来の無免許運転の違い、故意がどう判断されるのか、そして刑事処分が在留資格にどう跳ね返るのかを整理する。
無免許運転にはいくつかの型がある
無免許運転と一口にいっても、内容は同じではない。第1に、免許を取得したことがないまま運転する場合。第2に、更新を怠って免許が失効した後に運転する場合。第3に、取消し又は停止の処分を受けているのに運転する場合。第4に、日本で有効とされる資格なしに、母国の免許証だけで運転する場合である。
外国籍の方に多いのは第2の型と第4の型である。日本で自動車を運転するには、日本の運転免許か、日本で通用する国際運転免許証等が必要であり、母国で発行された免許証を持っているだけでは足りない場合がある。有効期間の考え方も国によって異なるため、日本の制度に置き換えて確認しておく必要がある。
うっかり失効と本来の無免許運転は、故意の点で分かれる
失効に気づいていなかったという主張は、故意の有無という形で法的な意味を持つ。犯罪が成立するには、原則として行為者に故意、すなわち自分が無免許で運転しているという認識が必要だからである。
もっとも、認識がなかったという説明が常に通るわけではない。更新の通知を受け取っていたか、住居地の変更を届け出ていたか、免許証の有効期間の記載を確認する機会があったか、過去に更新手続を経験しているか、といった事情が総合的に検討される。住居地の届出(入管法19条の7から19条の10まで)を怠っていたために通知が届かなかったという経過は、かえって不利に働くこともある。
したがって、この争点では、いつ、どのような通知を受け取ったか、住所や勤務先の変更をどのように届け出ていたかを、記録に基づいて具体的に示すことが中心となる。
刑事処分が在留資格にどう跳ね返るか
まず押さえるべきは、罰金にとどまる限り、入管法24条4号リの退去強制事由には当たらないという点である。同号は無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を対象とし、かつ但書により、刑の全部の執行猶予が付された場合は除外される。一部執行猶予の場合も、実刑部分が1年以下であれば除外される。
しかし、退去強制を免れることと、在留を続けられることは同じではない。在留期間の更新や在留資格の変更の審査では素行が正面から考慮されるため、無免許運転の前科があること自体が説明を要する事情になる。特に、繰り返しの検挙がある場合や、無免許運転が他の交通違反と重なっている場合には、評価は厳しくなる。
また、事故を伴う場合には話が変わる。自動車運転死傷処罰法2条又は6条1項の危険運転致死傷に当たる事案では、入管法24条4号の2により、別表第一の在留資格をもって在留する者が拘禁刑に処せられたときに退去強制事由となる。技術・人文知識・国際業務、技能実習、留学といった在留資格の方にとって、この条文の意味は大きい。
身柄拘束が長引いて勤務を続けられなくなれば、入管法22条の4による在留資格の取消し(在留資格に応じた活動を3か月以上行わないで在留していること等)も問題になり得る。将来の帰化を視野に入れる場合には、国籍法5条1項3号の素行要件にも影響する。
よくある誤解
第1に、罰金なら前科ではないという理解である。罰金も刑罰であり、記録は残る。刑法34条の2は一定期間の経過による刑の消滅を定めているが、それまでの間は在留審査の場面で考慮され得る。
第2に、母国の免許証があるので無免許ではないという理解である。日本で通用する資格がなければ、結論は無免許運転となる。
第3に、免許が切れているだけだから軽い違反だという理解である。失効後の運転は行政上の手続違反ではなく、刑事事件として扱われる。
第4に、会社に知られなければ在留に影響しないという理解である。勤務先を離れた状態が続けば、それ自体が在留資格の審査対象となり得る。
逮捕・検挙された後に取れる行動
取調べでは、刑事訴訟法198条2項により供述を拒むことができる旨が告げられる。調書の内容が自分の説明と異なるときは、同条4項に基づいて増減変更を申し立てることができる。日本語での取調べに不安があるときは、刑事訴訟法175条・178条の通訳・翻訳の手続があり、自由権規約14条3項(a)及び(f)は、理解する言語で罪の性質を告げられる権利と通訳の無償の援助を保障している。早期に弁護人と接見する権利は刑事訴訟法39条1項が定めている。
資料の面では、免許の更新通知の到達状況、住居地や勤務先の届出の履歴、運転せざるを得なかった事情、以後の再発防止策(車両の処分、公共交通機関への切替え、勤務先の運行管理の変更)を早い段階でそろえておくと、処分の判断に影響し得る。参考として、警察庁の令和7年確定値によれば、来日外国人の総検挙人員は12,777人であり、そのうちブラジルは561人である。ここでいう来日外国人とは、永住者、永住者の配偶者等、特別永住者、在日米軍関係者及び在留資格不明者を除く定義である。
当事務所の対応
当事務所では、松村大介弁護士が接見と打合せに直接対応する。中国語については外国人事件専属の通訳が常駐しており、その他の言語については事案に応じて通訳人を手配する。
方針としては、執行猶予判決では足りないと考え、不起訴処分の獲得を最優先の目標とする。無免許運転の事案では、故意の有無、運転の必要性、常習性の有無、再発防止の実効性が判断を分ける。刑事事件と入管手続は一体として設計し、刑事段階の供述調書が後の在留審査に用いられ得ることを前提に対応する。初回相談は無料であり、微信(WeChat)ID matsumura1119 からもご連絡いただける。
おわりに
免許が切れていた期間の長さよりも、なぜ気づけなかったのかを説明できるかどうかが、結論を左右することが多い。本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談いただきたい。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
この記事のポルトガル語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099145/
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