住居地の届出を忘れた 在留カードの届出義務違反の罰則と在留への影響
2026/09/02
引越しをした。転職した。会社が倒産した。結婚した。どれも生活のうえでは当たり前の出来事ですが、在留カードをお持ちの方にとっては、それぞれに届出の期限が設定されている場面でもあります。
そして、この届出を忘れていたことが、数年後の在留期間更新の場で突然表に出てくる。実務では、これがかなりの頻度で起きます。届出義務の違反は、罰則という刑事の問題と、在留資格の取消しという入管の問題の、両方につながっています。この記事では、その二つの側面を分けて説明します。
住居地の届出は入管法19条の7以下に定めがある
住居地に関する届出義務は、出入国管理及び難民認定法(入管法)19条の7から19条の10までに定められています。新たに上陸した場合、住居地を変更した場合など、場面ごとに届け出るべき内容が定められています。市区町村の窓口で行う住民基本台帳上の手続と重なる部分がありますが、制度としては入管法上の義務です。
期限を過ぎてしまった場合、まず考えるべきは、遅れてでも届け出るということです。届け出ないまま放置した期間が長くなるほど、後の説明が難しくなります。
所属機関等の届出は14日以内
入管法19条の16と19条の17は、所属機関等に関する届出を定めています。契約機関や活動機関に変更が生じた場合、その期限は14日以内です。
ここで見落とされやすいのが、退職した時点で既に届出義務が生じているという点です。次の就職先が決まってからまとめて届け出ればよいと考えて、そのまま数か月が経ってしまう例をよく見ます。退職の事実、契約の終了の事実は、それ自体が届出の対象です。
在留資格の取消しという入管側の帰結
届出義務の違反は、在留資格の取消しの理由になり得ます。入管法22条の4は在留資格の取消しについて定めており、住居地の届出義務に違反した場合に関する規定を置いています。届け出るべき期間として90日という基準が示されており、正当な理由なくこれを超えて届け出ない場合が問題になります。
同条の典型的な類型としてはもうひとつ、正当な理由がある場合を除き、当該在留資格に応じた活動を継続して3か月以上行わないで在留していることがあります。転職の空白期間が長引くと、こちらに触れてきます。虚偽の申請によって上陸許可等を受けた場合についても、同条に規定があります。
出入国在留管理庁の統計によれば、令和7年の在留資格の取消しは1,446件で、国籍別ではベトナムが947件と最も多く、インドネシア94件、スリランカ91件と続きます。在留資格別では技能実習973件、留学343件でした。
罰則という刑事側の帰結 23条・75条の2・75条の3
刑事の側では、在留カードの携帯と提示について罰則が置かれています。入管法23条が携帯義務と提示義務を定め、これに対応して、携帯義務違反については入管法75条の3が20万円以下の罰金を、提示義務違反については入管法75条の2が1年以下の拘禁刑又は20万円以下の罰金を、それぞれ定めています。
提示義務違反の方が重いのは、単に持っていなかったという状態と、求められたのに見せることを拒んだという行為とでは、評価が異なるためです。職務質問の場面で、感情的になって提示を拒むことが、結果として重い側の条文に触れてしまう。これは避けられる事態です。
警察庁の統計によれば、令和7年の入管法違反の検挙人員は3,349人で、内訳は不法残留2,779人、偽造在留カード所持等191人、資格外活動等160人、旅券等不携帯・提示拒否70人でした。
刑事処分が在留にどう跳ね返るか
ここで重要なのは、75条の2の法定刑の上限が1年以下の拘禁刑だという点です。入管法24条4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としていますので、1年以下にとどまる限り、この号には該当しません。しかも4号リには但書があり、全部執行猶予が付された場合は除外されます。一部猶予の場合も、実刑部分が1年以下であれば同様です。
ただし、退去強制事由に当たらないことと、在留に影響がないことは別です。在留期間の更新や在留資格の変更の審査では素行が考慮されますので、罰金であっても不利に働き得ます。また、届出義務の違反そのものが22条の4の取消しの理由になり得ることは、既に述べたとおりです。刑事と入管の二方向から見ておく必要があります。
なお、退去強制手続に進んだ場合、在留特別許可については入管法50条5項が、在留を希望する理由、家族関係、素行、本邦に在留することとなった経緯、在留期間その他の事情を考慮すると定めています。届出をきちんと行ってきたという事実は、素行の評価において意味を持ちます。
実際に取れる行動とよくある誤解
- 期限を過ぎていても、気づいた時点で届け出る。放置が最も不利
- 引越しの際は、市区町村での手続と入管法上の届出の両方を意識する
- 退職した日、契約が終了した日が分かる書面を保管する
- 在留カードは常に携帯する。自宅に保管しておけば安全という考え方は成り立たない
- 提示を求められたら、内容に納得できない場合でも、提示自体は行う
よくある誤解を三つ挙げます。第一に、会社が届け出てくれているはずだという理解です。所属機関の側の届出と本人の届出は別に定められています。第二に、住民票を移したから入管への届出は不要だという理解です。制度が別である以上、そうはなりません。第三に、罰金なら記録に残らないという理解です。刑法34条の2は刑の消滅について定めていますが、一定の期間の経過を前提としており、直ちに消えるものではありません。帰化を検討される場合には、国籍法5条1項3号が素行が善良であることを条件としている点も関わってきます。
当事務所の対応
舟渡国際法律事務所では、松村大介弁護士が接見と打合せに直接対応します。中国語については外国人事件専属の通訳が常駐しており、ベトナム語を含むその他の言語は事案に応じて通訳人を手配します。
刑事事件になっている場合には、執行猶予判決を得れば足りるとは考えず、不起訴処分を最優先の目標として方針を組み立てます。届出義務違反の事案では、刑事の処分と在留資格の取消しが並行して問題になりますので、刑事事件と入管手続を一体のものとして設計します。取消しや退去強制事由の該当性についても、正当な理由の有無、故意や過失の有無を含めて争うという視点で対応します。初回相談は無料です。微信(WeChat)ID matsumura1119 からもご連絡いただけます。
おわりに
届出は、書類を一枚出すだけの作業です。それを出さなかったという一点が、後になって在留の議論の中心になることがあります。逆に言えば、いま気づいて出しておけば、将来の議論をひとつ減らせるということでもあります。本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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この記事のベトナム語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099129/
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