不法就労助長で在留資格を失うのか 入管法24条3号の4という条文
2026/09/02
飲食店や解体業、人材派遣の現場で、実際に多く寄せられるご相談があります。人手が足りず、知人の紹介で来た人を働かせた。在留カードは見せてもらった記憶があるが、コピーは取っていない。後日、警察の捜索が入り、経営者であるご自身も取調べを受けた。こういう経緯です。
このとき、多くの方が刑事処分の重さだけを心配されます。しかし、雇っていた側も外国人である場合、本当に重いのは別のところにあります。入管法24条3号の4は、不法就労助長行為をした者を、刑事処罰の有無と切り離して退去強制事由としているからです。この記事では、その条文の構造と、実際にどう備えるかを説明します。
入管法24条3号の4は、行為があれば足りる
不法就労助長は、刑罰を受けていなくても、それだけで退去強制事由になり得ます。出入国管理及び難民認定法(入管法)24条3号の4は、不法就労助長行為をした者を退去強制の対象として掲げていますが、この号は、有罪判決を受けたことも、拘禁刑に処せられたことも要件としていません。
これは、24条の他の号と比べると際立ちます。4号リは無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を対象とし、しかも但書によって全部執行猶予が付された場合を除外しています。4号ヘは入管法73条の罪により拘禁刑に処せられた者です。いずれも刑の言渡しを前提としています。ところが3号の4には、その前提がありません。刑事事件が不起訴で終わっても、入管が独自に助長行為の存在を認定すれば、退去強制事由に該当すると判断される余地が残るということです。
刑事の側の条文は73条の2 過失がなかったことの反証責任
刑事処罰の根拠は別の条文にあります。入管法73条の2は、不法就労助長罪について、5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科すると定めています。
実務上、特に重要なのが同条2項です。ここには、行為者の側で過失がなかったことを示すという構造が置かれています。つまり、知らなかったと述べるだけでは足りず、知らなかったことに過失がなかったと言えるだけの事情を、こちら側から積極的に示していく必要があります。在留カードの現物を確認したのか、コピーを残したのか、在留期限と就労制限の有無をどのように読み取ったのか、資格外活動許可の有無を確認したのか。こうした一つ一つが、後になって効いてきます。
刑事処分が在留資格にどう跳ね返るか
雇用主が外国人である場合、跳ね返り方は二重になります。第一に、24条3号の4により、刑事処分と無関係に退去強制事由該当性が問題になります。第二に、73条の2により1年を超える実刑が言い渡された場合には、24条4号リの問題が別に生じます。ただし4号リには但書があり、全部執行猶予が付された場合は除外されます。一部猶予でも実刑部分が1年以下であれば同様です。
加えて、経営・管理や技術・人文知識・国際業務といった在留資格で在留しておられる方の場合、在留期間の更新や在留資格の変更の審査において、素行が考慮されます。罰金であっても、更新審査で不利に働くことは十分にあり得ます。仮に退去強制手続に進んだ場合には、入管法50条5項が、在留を希望する理由、家族関係、素行、本邦に在留することとなった経緯、在留期間その他の事情を考慮すると定めており、2024年6月に改定された在留特別許可のガイドラインが現行の運用指針となっています。
数字が示す傾向
警察庁の統計によれば、令和7年の不法就労助長罪の検挙件数は253件、検挙人員は308人でした。同じ統計で、被雇用者である不法就労外国人475人の国籍は、ベトナム169人、タイ69人、インドネシア63人の順です。
この数字から読み取るべきは、摘発が特定の業種や国籍に集中しがちだということよりも、雇用主側の立件が現に相当数あるという事実の方です。働いた側だけの問題ではありません。なお、雇われた側については、資格外活動であれば24条4号イや、73条の罪による拘禁刑を要件とする4号ヘが、不法残留であれば4号ロが、それぞれ別に問題となります。
実際に取れる備えと、事件になった後の行動
まだ事件になっていない段階でできることは明確です。
- 採用時に在留カードの原本を確認し、写しを保管する
- 在留期限、在留資格、就労制限の有無の記載を必ず読む
- 就労制限がある場合は資格外活動許可の有無と時間の上限を確認する
- 確認した日付と担当者を記録に残す
- 入管法19条の16・19条の17の所属機関等に関する届出(14日以内)を、雇用する側も雇用される側も期限内に行う
既に取調べが始まっている段階では、供述の設計が決定的です。刑事訴訟法198条2項は、自己の意思に反して供述をする必要がない旨の告知について定めており、同条4項は、調書の読み聞け又は閲覧と、増減変更の申立てについて定めています。確認の経緯は細部が重要ですから、記憶があいまいな部分をあいまいなまま調書に固定しないことが要になります。刑事訴訟法39条1項の接見交通権に基づき、早い段階で弁護人と打ち合わせてください。通訳については同法175条・178条があり、裁判所法74条は裁判所で日本語を用いる旨を定めています。
よくある誤解
第一に、雇用契約書を作っていないから雇用ではない、という理解です。助長行為の該当性は契約書の有無で決まるものではありません。第二に、紹介しただけで自分は雇っていない、という理解です。斡旋や場所の提供が助長と評価される場合があります。第三に、不起訴になれば入管も問題視しない、という理解です。3号の4が刑罰を要件としていない以上、これは成り立ちません。第四に、罰金で済んだから在留に影響はない、という理解です。退去強制事由に当たらなくても、更新審査で素行が考慮される点は残ります。
当事務所の対応
舟渡国際法律事務所では、松村大介弁護士が接見と打合せに直接対応します。中国語については外国人事件専属の通訳が常駐しており、その他の言語は事案に応じて通訳人を手配します。
執行猶予判決を得れば足りるとは考えず、不起訴処分を最優先の目標として弁護方針を組み立てます。不法就労助長の事案では、刑事事件の供述調書がそのまま違反審査や口頭審理の資料になりますので、刑事と入管を一体として設計します。24条3号の4の該当性についても、確認の経緯や認識の内容を含めて争うという視点で対応します。初回相談は無料です。微信(WeChat)ID matsumura1119 からもご連絡いただけます。
おわりに
この類型の難しさは、刑事の結論が軽くても入管の結論が軽くなるとは限らない、という非対称にあります。逆に言えば、確認の記録を一枚残しておくかどうかが、数年後の在留を左右することもあります。本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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この記事のベトナム語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099123/
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