資格外活動の28時間超過が発覚したら 24条4号イと4号ヘの違い
2026/09/02
週28時間を超えて働いていたことが、更新申請のときに指摘された。あるいは勤務先に警察の捜査が入り、そこから自分の勤務時間が明るみに出た。この二つは、入口も進み方もまったく違います。
資格外活動の超過が問題になるとき、実務では二本の道が並走します。ひとつは刑事事件としての道、もうひとつは退去強制手続としての道です。同じ事実から出発しても、どちらの道をどこまで進むかによって結論は変わります。本記事では、入管法24条4号イと同号ヘの違いを軸に、超過が発覚した後に何が起きるのかを整理します。
ベトナム語を母語とする方は、この論点で最も多くご相談をいただく層です。警察庁の令和7年の統計では、入管法違反の検挙人員3,349人のうち、資格外活動等は160人でした。検挙に至らない段階で在留審査上の不利益を受ける方は、はるかに多いのが実情です。
28時間の上限はどこから来るのか
週28時間という上限は、資格外活動許可に付された条件です。留学の在留資格をもって在留する方が、包括的な資格外活動許可を受けた場合、原則として1週について28時間以内という枠の中で働くことができます。この枠は複数の勤務先の合計で計算されます。掛け持ちで、それぞれの店では短時間しか働いていなくても、合算して超えていれば超過です。ここを誤解したまま働き続けたというご相談は少なくありません。
入管法24条4号イ 専従による退去強制
第1の道は、刑事処罰を経ないまま退去強制事由に該当する経路です。入管法24条4号イは、専ら在留資格外の活動を行っていると明らかに認められる者を退去強制事由と定めています。ここで問われるのは、有罪判決の有無ではなく活動の実態です。学校にほとんど通わず、収入の大半をアルバイトから得て、生活の中心が就労にあると評価されれば、刑事事件になっていなくても該当し得ます。逆に、超過はあったものの学業を継続しており、超過が一時的であった場合には、専従という評価には距離があります。したがって、この道で争う場面では、出席状況、単位の取得、超過の理由と期間、収入の使途といった事実の積み重ねが決定的になります。
入管法24条4号ヘ 73条の罪による退去強制
第2の道は、刑事処分を経由する経路です。入管法24条4号ヘは、同法73条の罪により拘禁刑に処せられた者を退去強制事由とします。73条は資格外活動を処罰する規定ですから、起訴され、拘禁刑の言渡しを受けた場合に問題になります。ここで重要なのは、罰金であればこの規定には当たらないこと、そして不起訴であれば刑に処せられていない以上、当然にこの規定には当たらないことです。だからこそ、資格外活動の事件で不起訴処分を獲得することは、単に前科を避けるという意味を超えて、在留の帰趨に直結します。
刑事処分は在留にどう跳ね返るか
資格外活動以外の罪で処分を受けた場合も、在留への影響は罪名と刑の種類によって変わります。入管法24条4号リは無期または1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としますが、但書により全部執行猶予が付された場合は除外されます。一方、同条4号チは麻薬・大麻・あへん・覚醒剤等に関する法令違反で有罪の判決を受けた者を対象とし、罰金でも執行猶予でも該当し、在留資格の別表を問いません。令和6年12月12日施行の法改正により、大麻取締法は大麻草の栽培の規制に関する法律へ改称され、大麻は麻薬及び向精神薬取締法上の麻薬とされました。使用罪も新設されています。また同条4号の2は、強盗、不同意性交等、危険運転致死傷等の重大犯罪で拘禁刑に処せられた別表第一の在留資格者を対象とします。留学、特定技能、技術・人文知識・国際業務はいずれも別表第一です。
雇っていた側にも責任が及ぶ
超過就労は、働いた側だけの問題ではありません。入管法73条の2は不法就労助長罪を定め、5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金またはその併科としています。同条2項は、過失がなかったことを雇用者側が反証しなければならない構造を採っており、知らなかったという弁解だけでは足りません。さらに入管法24条3号の4は、不法就労助長行為をした者を、刑事処罰を要することなく退去強制事由としています。経営者が外国人である場合、この規定の意味は極めて大きくなります。警察庁の令和7年の統計では、不法就労助長罪の検挙は253件、検挙人員308人でした。
発覚した後にできること
まず、勤務実態を示す資料を保全してください。給与明細、タイムカードの控え、シフト表、送金の記録は、超過の程度と期間を確定させるための基礎資料です。次に、超過に至った経緯を整理してください。学費の支払、家族への送金、勤務先からの依頼といった事情は、専従性の評価にも、量刑や処分の判断にも影響します。取調べを受ける場面では、記憶に反する内容の調書に署名しないことが重要です。刑訴法198条2項は取調べに際して黙秘権を告知すべきことを定め、同条4項は供述調書について読み聞けと増減変更の申立ての機会を保障しています。読み上げられた内容が違うと感じたら、その場で訂正を申し立ててください。刑訴法39条1項は、身体を拘束された被疑者が弁護人と立会人なしに接見する権利を定めています。
よくある誤解
第1に、超過しても罰金で済めば在留には影響しないという理解です。罰金であれば入管法24条4号ヘには当たりませんが、同条4号イの専従該当性は別途判断されますし、在留期間の更新審査では素行が考慮されます。第2に、勤務先が届け出ていないから発覚しないという理解です。給与の支払記録や社会保険の記録は残ります。第3に、更新が不許可になっても再申請すればよいという理解です。在留期間を経過すれば入管法24条4号ロの不法残留に当たり、入管法70条1項5号の罪の対象にもなります。
当事務所の対応
当事務所では、松村大介弁護士が接見と打合せに直接対応します。中国語については外国人事件専属の通訳が常駐しており、ベトナム語その他の言語については事案に応じて通訳人を手配します。資格外活動の事件では、執行猶予判決を得れば足りるとは考えず、不起訴処分の獲得を最優先の目標としています。刑事事件で作成された供述調書は、その後の違反審査や口頭審理でそのまま資料になりますから、刑事弁護と入管手続を一体として設計します。退去強制事由の該当性についても、専従といえるか、故意や過失があったかを含めて争う視点を持ちます。初回のご相談は無料です。微信(WeChat)ID matsumura1119 でもご連絡いただけます。
おわりに
28時間という数字だけを見て諦めてしまう方がいますが、実際に結論を分けるのは、超過の程度、期間、経緯、そして手続のどの段階で対応を始めたかです。本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
この記事のベトナム語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099103/
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東京にて行政事件に関する対応
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