留学生・特定技能が在留資格を失う場面 除籍・退学・失踪・資格外活動
2026/09/02
日本語学校や専門学校を辞めることになった、勤務先を離れてしまった。そうしたとき、多くの方はまず在留カードの期限を確かめます。まだ半年ある、まだ1年ある。それで少し安心してしまう。ご相談の入口は、たいていこの安心から始まります。
しかし在留資格は、在留期間の満了によってだけ失われるものではありません。学籍や雇用という土台が崩れた瞬間から、期限とは別の時計が動き始めます。本記事では、留学と特定技能を中心に、在留資格を失う具体的な場面、アルバイトの超過が刑事事件に転じる筋道、そして刑事処分が在留にどう跳ね返るのかを、条文に沿って整理します。
ネパール語を母語とする方からのご相談も年々増えています。出入国在留管理庁の統計では、令和7年末のネパールの在留者は300,992人です。制度を先に知ることが、結局は一番の備えになります。
在留資格を失う場面は三つに分けて考える
在留資格を失う場面は、在留期間の満了、在留資格の取消し、退去強制事由への該当という三つに整理できます。この三つは互いに独立して進みます。期限に余裕があっても取消しの手続は始まり、取消しを受けていなくても退去強制事由に該当することはあります。どの入口に立っているのかを見極めることが出発点です。
除籍・退学と在留資格の取消し(入管法22条の4)
学校を除籍または退学になっても在留カードの期限までは安全、という理解は誤りです。入管法22条の4は在留資格の取消し事由を定めており、その典型は、正当な理由がないのに3か月以上、当該在留資格に応じた活動を行わないで在留していることです。留学の在留資格は学ぶ活動を前提としますから、学籍を失った状態が続けばこの要件に近づきます。ほかに、虚偽申請による取得や、住居地の届出義務に90日以上違反した場合も取消し事由です。出入国在留管理庁の令和7年の統計では、在留資格の取消しは1,446件で、在留資格別では技能実習973件、留学343件でした。決して例外的な処分ではありません。
特定技能で受入れ機関を離れたとき
特定技能でも、雇用契約が終了して次の受入れ機関が決まらない状態が続けば、同じ3か月の枠組みが問題になります。加えて、所属機関に関する事項の届出が入管法19条の16と19条の17により14日以内と定められています。退職や転職の届出を怠ると、活動の実態を説明する材料が手元に残らず、後の審査で不利に働きます。求職活動を続けている、次の受入れ機関と手続中であるといった事情は正当な理由の主張として意味を持ちますが、主張には証拠が要ります。応募履歴や支援機関とのやり取りは、その日のうちに保存してください。
資格外活動の超過が刑事事件に転じるとき
アルバイトの時間超過は、在留審査の問題にとどまらず、退去強制事由と刑事事件の双方に直結します。入管法24条4号イは、専ら在留資格外の活動を行っていると明らかに認められる者を退去強制事由としており、これは刑事処罰を受けていなくても該当し得ます。さらに、資格外活動を処罰する入管法73条の罪により拘禁刑に処せられた者は、同条4号ヘに当たります。雇う側も無関係ではありません。不法就労助長罪は入管法73条の2が5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金またはその併科と定め、同条2項は過失がなかったことの反証責任を雇用者側に置いています。加えて入管法24条3号の4は、不法就労助長行為をした者を、刑事処罰の有無にかかわらず退去強制事由としています。
刑事処分は在留資格にどう跳ね返るか
刑事処分の在留への影響は、刑の重さだけでなく罪名と在留資格の種類によって変わります。入管法24条4号リは無期または1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としますが、但書があり、全部執行猶予が付された場合は除外されます。これに対し同条4号チは、麻薬・大麻・あへん・覚醒剤等に関する法令違反で有罪の判決を受けた者を対象とし、罰金でも執行猶予でも刑の免除でも該当します。在留資格の別表も問いません。さらに同条4号の2は、強盗、不同意性交等、危険運転致死傷等の一定の重大犯罪で拘禁刑に処せられた者のうち、別表第一の在留資格で在留する者を対象とします。留学も特定技能も別表第一ですから、この規定の射程に入ります。執行猶予が付いたから大丈夫、という一般論は成り立ちません。
いま取れる行動
できることは、時間の経過を止める方向の行動に絞られます。第1に、退学、除籍、退職が決まったら14日以内の届出を済ませること。第2に、活動を行わない期間が3か月に達する前に、在留資格変更許可申請、別の学校や受入れ機関への所属、あるいは出国という選択肢を具体的に動かすこと。第3に、正当な理由を裏づける資料を集めておくこと。もし在留期間を過ぎてしまえば、入管法24条4号ロの不法残留に該当し、入管法70条1項5号の罪として3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金の対象にもなります。自ら出頭して速やかに出国する意思があるなど入管法24条の3の要件を満たせば出国命令の手続もありますが、要件は限定されており、薬物事犯に該当する方は使えません。
よくある誤解
第1の誤解は、学校を辞めても在留カードの期限までは何の問題もない、というものです。3か月の取消し事由がある以上、そうはなりません。第2の誤解は、勤務時間の超過は入管には分からない、というものです。給与の支払記録、社会保険、勤務先からの届出など、活動実態が判明する経路は複数あります。第3の誤解は、通知が届いてから考えればよい、というものです。取消しや退去強制の手続が進むほど選択肢は狭まり、在留特別許可の申請権も、入管法50条2項が収容令書により収容されている者や監理措置決定を受けた者について定め、同条3項は退去強制令書の発付後は申請できないとしています。動ける時期は限られています。
当事務所の対応
当事務所では、松村大介弁護士が接見と打合せに直接対応します。中国語については外国人事件専属の通訳が常駐しており、ネパール語その他の言語については事案に応じて通訳人を手配します。弁護方針としては、執行猶予判決を得れば足りるとは考えず、不起訴処分の獲得を最優先の目標に置いています。刑事事件で作成された供述調書は、その後の違反審査や口頭審理で資料として用いられますから、刑事弁護と入管手続を初めから一体のものとして設計します。退去強制事由の該当性そのものについても、故意や過失の有無を含めて争う視点を持ちます。初回のご相談は無料です。微信(WeChat)ID matsumura1119 でもご連絡いただけます。
おわりに
在留資格を失う場面は、突然訪れるように見えて、実際には数か月をかけて静かに進みます。逆に言えば、早い段階であれば打てる手が残っています。本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
この記事のネパール語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099101/
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東京を中心に刑事事件の弁護
東京にて行政事件に関する対応
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