在留資格が取り消されるのはどんな場合か 入管法22条の4と3か月ルール
2026/09/02
出入国在留管理庁の令和7年の統計によると、在留資格の取消しは1,446件でした。在留資格別では技能実習が973件、留学が343件を占めています。取消しは特別な事件を起こした人だけに起きるものではなく、届出を怠った、転職後に活動が途切れた、といった日常的な出来事から生じています。
それでも、取消しの制度は正しく理解されていないことが多い分野です。更新が不許可になることと取り消されることは違いますし、取り消されたら直ちに国を出なければならないというわけでもありません。
この記事では、入管法22条の4がどのような場合を取消事由としているのか、3か月という期間の意味、そして通知を受けたときに何ができるのかを整理します。
取消しは更新不許可とは別の制度である
結論として、在留資格の取消しは、在留期間がまだ残っている途中の段階で、与えられた在留資格そのものを失わせる処分です。
更新の不許可は、次の期間を認めないという判断にとどまり、現在の在留期間が満了するまでは在留が続きます。これに対して取消しは、現に有効な在留資格に働きかけます。したがって、更新の時期がまだ先だから安心だ、という前提は成り立ちません。
入管法22条の4の主な取消事由
結論として、取消事由は虚偽の申請に関するものと、在留の実態に関するものに大きく分かれます。
- 偽りその他不正の手段により上陸許可や在留資格の許可を受けたこと。
- 3か月以上、その在留資格に応じた活動を行わないで在留していること。ただし正当な理由がある場合は除かれます。
- 住居地の届出義務に違反したこと。届け出ないまま90日を経過した場合などが問題になります。
- 虚偽の住居地を届け出たこと。
3か月という期間は、活動が途切れた状態がどれだけ続いたかを測る基準です。会社を辞めてから次の就職先が決まらない期間、学校を退学してから次の進路が定まらない期間などが、ここに直結します。ただし条文は正当な理由がある場合を除外しており、病気で就労できなかった、会社側の事情で契約が突然終了し再就職活動を続けていた、といった事情は検討の対象になります。何もしていなかったのか、事情があって動けなかったのかを、資料で示せるかどうかが分かれ目です。
届出義務は日常の中にある
結論として、取消しの多くは、届出という地味な義務の不履行から始まります。
入管法19条の16と19条の17は、所属機関等に関する届出を定めており、期限は14日以内です。会社を辞めたとき、転職したとき、学校を卒業や退学したときなどが対象になります。住居地の届出については同法19条の7以下が定めています。
あわせて、在留カードの携帯・提示義務も日常的な論点です。入管法23条が携帯と提示を義務づけ、75条の3は携帯義務違反を20万円以下の罰金、75条の2は提示義務違反を1年以下の拘禁刑又は20万円以下の罰金と定めています。提示義務違反の方が重い法定刑である点は、あまり知られていません。
刑事処分は在留資格にどう跳ね返るか
結論として、取消しの問題とは別に、刑事処分は退去強制事由に直結する場合があります。
- 入管法24条4号リ:無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者。ただし但書があり、刑の全部の執行猶予が付された場合は除外されます。
- 入管法24条4号チ:薬物犯罪で有罪判決を受けた者。罰金でも執行猶予でも刑の免除でも該当し、在留資格の別表を問いません。
- 入管法24条4号ロ:在留期間を経過して在留する不法残留。
- 入管法24条4号イ:専ら在留資格外の活動を行っていると明らかに認められる者。
取消しを受けた後に在留の手当てをしないまま時間が経つと、4号ロの不法残留に移行します。取消しそのものより、その後の対応の遅れが重い結果を招くことが多いのです。
取消しの通知を受けたときにできること
結論として、取消しの手続には意見を述べる機会があり、そこが最初の勝負どころです。
- まず、取消しの理由として何が挙げられているのかを正確に確認する。3か月要件なのか、届出義務なのか、虚偽申請なのかで、反論の組み立てがまったく違います。
- 正当な理由を示す資料を集める。診断書、雇用契約の終了に関する書面、求職活動の記録、学校とのやり取りなどが該当します。
- 他の在留資格への変更の可能性を検討する。事実関係によっては、取消しを避ける道が別にあります。
- 不法残留に移行させない。取消しの後に出国準備の期間が指定されることがあり、その期間の管理が重要です。
- 退去強制手続に進んだ場合、在留特別許可の検討に入る。入管法50条5項は、在留を希望する理由、家族関係、素行、本邦に在留することとなった経緯、在留期間その他の事情を考慮すると定めています。2024年6月改定のガイドラインが現行の基準です。
よくある誤解
結論として、取消しをめぐる誤解は、制度の段階を飛ばして考えることから生じます。
第一に、取り消されたら即日退去強制されるという誤解です。取消しと退去強制は別の手続で、間に段階があります。第二に、届出は忘れても後で出せば同じという誤解です。期限は14日以内と定められており、遅れの理由は評価の対象になります。第三に、仕事をしていない期間が3か月を超えたら自動的に取り消されるという誤解です。条文は正当な理由がある場合を除いており、事情の説明ができれば結論は変わりえます。第四に、取消しの理由は聞かなくても分かるという誤解です。理由を正確に把握しない反論は的を外します。
当事務所の対応
当事務所では、松村大介弁護士が接見や打合せに直接対応します。通訳については、中国語は外国人事件専属の通訳が常駐しており、インドネシア語を含むその他の言語は事案に応じて通訳人を手配します。
刑事事件を伴う場合、当事務所は執行猶予判決ではなお不十分と考え、不起訴処分の獲得を最優先の目標とします。刑事手続で作成された供述調書は、その後の違反審査や口頭審理で資料として用いられることがあるため、刑事事件と入管手続を一体として設計します。取消しや退去強制事由の該当性についても、故意や過失の有無を含めて争う視点を持ちます。初回相談は無料で、微信(WeChat)ID matsumura1119 でもご連絡いただけます。
おわりに
在留資格の取消しは、突然降ってくるように見えて、実際には手続の途中に必ず説明の機会があります。その機会に何を示せるかは、日ごろどれだけ記録を残していたかに左右されます。届出の控え、雇用契約、通院の記録といった紙が、後になって意味を持ちます。
本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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この記事のインドネシア語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099091/
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