交通事件が刑事事件になったとき 永住者の在留にどこまで波及するか
2026/09/02
交通の事案は、多くの場合、反則金の納付や行政上の処分で完結します。ところが、事故の態様や飲酒の有無によっては、刑事事件として立件され、公判に付されることがあります。永住者の方にとって、この線を越えるかどうかは在留の問題に直結します。
ご相談で最も多い誤解は、交通の事案は入管とは関係がないというものです。実際には、入管法24条4号の2には自動車運転死傷処罰法2条・6条1項の危険運転致死傷が明示的に列挙されており、交通の事案は退去強制事由の議論の中に確かに位置を占めています。
この記事では、交通の事案がどこで刑事事件に変わり、永住者の在留にどこまで波及しうるのかを、条文の構造に沿って整理します。
行政上の処理と刑事処分は別の系統にある
反則金の納付は、刑罰ではなく行政上の手続として設けられた仕組みです。これに対し、罰金は刑罰であり、有罪の判断を前提とします。同じくお金を納めるという形をとっていても、法的な性質はまったく異なります。
この区別は入管の場面でも意味を持ちます。刑罰を受けたかどうかが要件になっている条文では、反則金の納付と罰金とでは扱いが変わります。統計の場面でも、令和7年版犯罪白書の起訴率の分母は、過失運転致死傷等および道路交通法違反を除いた終局処理人員18,696人とされており、交通の事案が別立てで扱われていることが分かります。
危険運転致死傷は入管法24条4号の2に列挙されている
入管法24条4号の2は、一定の重大犯罪で拘禁刑に処せられた者のうち、別表第一の在留資格をもって在留する者を退去強制事由としています。列挙されているものの中に、自動車運転死傷処罰法2条・6条1項の危険運転致死傷が含まれています。
交通の事案が入管法の条文に名指しで登場するのは、この号です。技術・人文知識・国際業務、留学、技能実習、特定技能、家族滞在などの別表第一の在留資格の方は、この号の適用範囲に入ります。
永住者は別表第二であるため4号の2の対象外
永住者は入管法の別表第二に置かれた在留資格です。別表第二には、永住者のほか、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者が含まれます。
4号の2は別表第一の在留資格者に対象を限定しているため、永住者は、危険運転致死傷で拘禁刑に処せられたとしても、この号によって退去強制事由に当たることはありません。同じ判決を受けた別表第一の在留資格者とは、この一点で結論が分かれます。
それでも4号リは永住者にも適用される
永住者にとっての本当の分岐点は、入管法24条4号リです。この号は無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を対象としており、在留資格の別表を問いません。但書により、全部執行猶予が付された場合は除外され、刑の一部の執行猶予の場合も実際に服する部分が1年以下であれば除外されます。
したがって、永住者の交通事案では、実刑か猶予か、実刑であれば1年を超えるかどうかが、在留の帰趨を左右する中心的な争点になります。量刑を争うことが、そのまま在留を守る活動になるということです。
退去強制手続に入った場合の在留特別許可
4号リに該当したとしても、入管法50条の在留特別許可という道が残されています。同条2項により、収容令書により収容されている者と監理措置決定を受けた者には申請権があり、3項により、退去強制令書が発付された後は申請できません。
同条5項は、在留を希望する理由、家族関係、素行、本邦に在留することとなった経緯、在留期間その他の事情を考慮要素として法定しています。現行の運用基準は2024年6月改定の在留特別許可ガイドラインです。10項は、不許可の場合に理由を付記した書面を交付すべきことを定めています。同条1項の但書には加重要件が列挙されており、無期又は1年を超える実刑の場合にはこの要件が問題になります。
永住許可と帰化への波及
すでに永住許可を得ている方でも、交通の刑事事件は将来の手続に影響します。国籍法5条1項3号は帰化の要件として素行を挙げており、交通の刑事処分は素行の判断材料になります。
また、永住許可をこれから申請する段階の方にとっては、刑事処分の有無と内容が審査の対象になります。ブラジル国籍の方について見ると、警察庁の令和7年の統計では、来日外国人の総検挙人員12,777人のうちブラジルが561人、永住者の総検挙人員3,175人のうちブラジルが469人とされています。永住者としての検挙が来日外国人としての検挙に近い水準にあることは、定着した生活を営む方が多いことの反映といえます。
事故の直後に押さえておくべきこと
第一に、事案が刑事事件として立件されているかどうかを確認することです。捜査機関からの呼出しの有無、罪名の告知内容が手がかりになります。
第二に、被害者との示談と被害弁償の記録を残すことです。交通の事案は個人の身体や財産が侵害される類型であり、被害回復が量刑にも素行の評価にも影響します。
第三に、供述の内容を弁護人と検討することです。刑事事件の供述調書は、後に入管手続で資料として用いられます。運転の態様についての説明は、危険運転に当たるかどうかの判断に直結します。
よく見られる誤解
第一に、交通の事案は入管とは無関係という誤解です。24条4号の2に明示的に列挙されています。
第二に、永住者だから何があっても在留は揺るがないという誤解です。4号の2の対象外である一方、4号リは別表を問いません。
第三に、反則金を納めたから前科がついたという誤解です。反則金の納付は刑罰ではありません。
当事務所の対応
舟渡国際法律事務所では、松村大介弁護士が接見と打合せに直接あたります。中国語については外国人事件専属の通訳が常駐しており、ポルトガル語を含むその他の言語は事案に応じて通訳人を手配します。
交通の刑事事案では、危険運転に当たるかどうかという構成要件の争いと、量刑を1年以下に収められるかという争いを、在留の帰趨から逆算して組み立てます。執行猶予判決でも影響が残る場面があるため、不起訴処分の獲得を最優先の目標とし、刑事事件と入管手続を一体として設計します。初回相談は無料で、微信(WeChat)ID matsumura1119 でもご連絡いただけます。
おわりに
ハンドルを握る日常と在留資格は、普段は交わりません。交わってしまったときに、どの条文が動き出すのかを知っておくことが備えになります。本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
この記事のポルトガル語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099079/
----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
東京を中心に刑事事件の弁護
東京にて行政事件に関する対応
----------------------------------------------------------------------