永住者が実刑判決を受けた 退去強制事由の適用と在留特別許可
2026/09/02
永住許可を得るまでには、長い在留期間と、素行や生計についての審査を経ています。それだけに、永住者の方が実刑判決を受けたときのご家族の動揺は大きく、これまで積み上げてきたものがすべて失われるのかという問いを、真っ先に投げかけられます。
この問いに対する答えは、罪名と刑の重さによって変わります。永住者であることが有利に働く条文もあれば、永住者であっても例外なく適用される条文もあるからです。
この記事では、永住者に対して退去強制事由がどのように適用されるのか、そして退去強制手続に入った後に残されている入管法50条の在留特別許可という道筋を整理します。
永住者は別表第二の在留資格である
永住者は、入管法の別表第二に置かれた在留資格です。別表第二は身分または地位に着目した在留資格であり、永住者のほか、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者が含まれます。日本で行う活動に着目した別表第一とは構造が異なります。
この違いが最初に効いてくるのが、入管法24条4号の2です。この号は、一定の重大犯罪で拘禁刑に処せられた者のうち、別表第一の在留資格をもって在留する者を対象としています。列挙されているのは強盗、不同意性交等、自動車運転死傷処罰法2条・6条1項の危険運転致死傷、盗難特定金属製物品処分防止法22条などですが、永住者は別表第二であるため、この号の対象にはなりません。
4号リと4号チは別表を問わずに適用される
他方で、永住者であっても免れない号があります。入管法24条4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を対象としており、在留資格の別表を問いません。ただし但書により、全部執行猶予が付された場合は除外され、刑の一部の執行猶予の場合も実際に服する部分が1年以下であれば除外されます。
1年を超える実刑判決は、この号に正面から当たります。永住者であるという事実は、この号の適用を妨げません。
入管法24条4号チも別表を問いません。麻薬・大麻・あへん・覚醒剤等に関する法令の違反により有罪の判決を受けた者であれば、罰金でも執行猶予でも該当します。永住者の薬物事件が重く受け止められるのは、この構造によるものです。
在留資格の取消しとの関係
入管法22条の4は在留資格の取消しを定めていますが、その典型的な事由である、3か月以上、当該在留資格に応じた活動を行わないで在留していることという類型は、活動に着目した別表第一の在留資格を前提としています。身分に基づく永住者について、活動をしていないことを理由とする取消しは想定されにくい構造です。
もっとも、虚偽の申請によって在留資格を取得した場合や、住居地の届出義務に90日を超えて違反した場合の取消しは、別表の区別と関係なく問題になります。永住許可の申請時に提出した資料の正確性は、後から問われることがあります。
実刑判決の後に何が起きるか
刑事裁判が確定し、24条の号に該当すると判断されれば、入管の違反調査、違反審査、口頭審理、異議の申出という手続が進みます。ここでの資料には、刑事事件で作成された供述調書や判決書が含まれます。刑事手続の段階での説明が、そのまま入管手続に持ち込まれるということです。
警察庁の令和7年の統計によれば、永住者の総検挙人員は3,175人で、国籍別では中国が1,015人です。永住者であっても刑事事件と無縁ではないことが、数字の上でも示されています。
入管法50条の在留特別許可という道
退去強制事由に該当したとしても、そこで在留が確定的に失われるわけではありません。入管法50条は在留特別許可を定めています。
同条2項により、収容令書により収容されている者と監理措置決定を受けた者には申請権があります。3項により、退去強制令書が発付された後は申請できません。したがって、いつ申請するかという時期の管理が決定的に重要です。
同条5項は、在留を希望する理由、家族関係、素行、本邦に在留することとなった経緯、在留期間その他の事情を考慮要素として法定しています。永住者は在留期間が長く、家族関係が日本国内で完結していることが多いため、これらの要素を具体的な資料で示す余地があります。現行の運用基準は2024年6月改定の在留特別許可ガイドラインです。10項は、不許可の場合に理由を付記した書面を交付すべきことを定めています。
出入国在留管理庁の令和7年の統計では、在留特別許可の申請は2,424件、許可は1,026件、不許可は1,233件でした。
1項但書の加重要件をどう読むか
入管法50条1項の但書には加重要件が列挙されていますが、そこに4号チは含まれていません。無期又は1年を超える実刑でなければ、この加重要件は課されないという構造です。実刑の長さが在留特別許可の見通しに直結するのは、この規定によるものです。
ご家族が早い段階でできること
第一に、刑事手続の段階で、入管手続を見据えた資料を整えることです。家族の生活状況、扶養の実態、納税や社会保険の記録、地域との関わりを示す資料は、後の50条5項の主張の裏づけになります。
第二に、収容や監理措置の有無を確認し、申請権が生じる時期を把握することです。3項の制約がある以上、時期を逃せば申請自体ができなくなります。
第三に、供述の内容を弁護人と検討することです。刑事の調書は入管手続でも用いられます。
当事務所の対応
舟渡国際法律事務所では、松村大介弁護士が接見と打合せに直接あたります。中国語については外国人事件専属の通訳が常駐しており、その他の言語は事案に応じて通訳人を手配します。
永住者の事案では、量刑を1年以下に収められるかという刑事弁護上の課題と、50条の考慮要素を裏づける資料の準備とを、同時に進めます。執行猶予判決でも影響が残る類型があるため、不起訴処分の獲得を最優先の目標とし、退去強制事由の該当性についても故意や過失を含めて争う余地を検討します。初回相談は無料で、微信(WeChat)ID matsumura1119 でもご連絡いただけます。
おわりに
永住という資格は強いものですが、無条件のものではありません。どの条文が働き、どの条文が働かないのかを確かめることが、次の一手を決める土台になります。本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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この記事の簡体字中国語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099075/
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