留学生が事件を起こして退学になった 在留資格該当性の喪失と22条の4
2026/09/02
大学や専門学校から退学の通知が届いた段階で、多くの留学生の方は、刑事事件がどうなるかよりも、在留カードがどうなるのかを心配されます。この心配は的を射ています。留学という在留資格は、日本で教育を受けるという活動があってはじめて成り立つからです。
刑事処分がまだ決まっていない、あるいは不起訴になったという場合でも、退学という事実そのものが在留資格の基盤を崩します。ここで問題になるのが、入管法22条の4による在留資格の取消しです。
この記事では、退学の後に在留資格がどのような仕組みで失われうるのか、3か月という期間がどこから数えられるのか、そして次に取りうる手続は何かを整理します。
留学は活動に基づく在留資格である
留学は入管法の別表第一に置かれた在留資格であり、日本の教育機関で教育を受けるという活動が在留の根拠です。身分や地位に基づく別表第二の在留資格、たとえば永住者や定住者とは、この点で構造が違います。
したがって、退学によって教育を受けるという活動がなくなれば、在留資格の前提そのものが失われます。在留期間が残っていることと、在留資格の前提が保たれていることは別の話です。
入管法22条の4による取消しの中身
入管法22条の4は在留資格の取消しを定めており、典型的な事由の一つは、3か月以上、当該在留資格に応じた活動を行わないで在留していること、正当な理由がある場合を除く、というものです。退学後に他の学校へ入り直すこともなく時間が経過すれば、この事由に該当しうる状態になります。
同条は他の事由も定めています。虚偽の申請によって在留資格を取得した場合、また住居地の届出義務に90日を超えて違反した場合などです。学費や在籍の状況について事実と異なる書類を提出していた場合には、こちらの事由も併せて問題になります。
正当な理由があると認められる場合
条文は、正当な理由がある場合を除く、と定めています。病気の治療のためやむを得ず休学している、転校の手続を現に進めている、といった事情は、正当な理由として説明の対象になります。
重要なのは、正当な理由は主張すれば認められるものではなく、資料で裏づける必要があるという点です。診断書、転校先とのやり取りの記録、受験や出願の資料などを、時系列が分かる形で保存しておくことが実務上の分かれ目になります。
刑事処分と入管手続は別々に進む
不起訴になれば刑事手続はそこで終わりますが、在留資格の取消しはそれとは独立に進みます。22条の4は有罪判決を要件としていないからです。
他方、刑事処分が重くなれば、入管法24条の各号が別途問題になります。24条4号リは無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を対象とし、但書により全部執行猶予が付された場合は除外されます。24条4号チは薬物に関する法令の違反で有罪判決を受けた者を対象とし、罰金でも執行猶予でも該当します。24条4号の2は別表第一の在留資格者を対象とするため、留学生はこの号の適用範囲に入ります。
数字が示す取消しの実情
出入国在留管理庁の令和7年の統計によれば、在留資格の取消しは1,446件であり、在留資格別では技能実習が973件、留学が343件を占めています。留学は取消しが二番目に多い資格です。
また、警察庁の令和7年の統計では、在留資格別の検挙人員のうち留学が1,521人とされています。事件と退学と取消しが連鎖する経路は、統計の上でも決して例外的なものではありません。
退学の連絡を受けた時点で取るべき行動
第一に、退学の効力がいつ発生したのかを書面で確認することです。3か月という期間の起算点を把握しなければ、残された時間が分かりません。
第二に、入管法19条の16の届出を14日以内に行うことです。所属機関である教育機関との関係が終了した場合、この届出の義務が生じます。
第三に、進路の選択を早く決めることです。別の教育機関に入り直して留学の資格を維持するのか、就職先を確保して在留資格の変更を申請するのか、方向によって集めるべき資料がまったく違います。
よく見られる誤解
第一に、在留期限がまだ先だから大丈夫という誤解です。取消しは在留期限とは無関係に進みます。
第二に、不起訴になったから学校の処分も入管の問題も消えるという誤解です。学校の処分と刑事処分と入管処分は、それぞれ別の判断です。
第三に、取消しは即座に強制送還を意味するという誤解です。取消しの場面では出国のための期間が指定されることがあり、その内容によって取りうる手続が変わります。
当事務所の対応
舟渡国際法律事務所では、松村大介弁護士が接見と打合せに直接あたります。中国語については外国人事件専属の通訳が常駐しており、その他の言語は事案に応じて通訳人を手配します。
留学生の事案では、刑事弁護と並行して、学校の処分に対する対応、届出の履行、進路の再設計を同時に進めます。執行猶予判決でも在留への影響は残るため、不起訴処分の獲得を最優先の目標とし、刑事事件と入管手続を一体のものとして設計します。初回相談は無料で、微信(WeChat)ID matsumura1119 でもご連絡いただけます。
おわりに
退学の通知は終わりの合図に見えますが、在留の観点からは時計が動き始める合図です。残された時間をどう使うかで結論は変わります。本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
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ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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この記事の簡体字中国語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099069/
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