微罪処分・在宅事件になったとき 油断してはいけない理由
2026/09/02
取調べの終わりに、今日は帰っていいですよ、と言われる。その一言でほとんどの方が安心します。逮捕されなかったのだから大したことにはならない、と受け取るのは自然な反応です。
しかし、帰宅を許されたその日から、事件は静かに進み続けます。身体を拘束されないというのは、捜査が終わったという意味ではありません。そして、その先で下される処分は、在留期間の更新、永住許可、帰化の審査に、それぞれ違う形で影響します。この記事では、微罪処分と在宅事件の仕組み、記録がどう残るか、入管にどの経路で情報が届くかを整理します。
微罪処分とはどういう処分か
微罪処分は、司法警察員が事件を検察官に送致せずに処理することを指します。刑事訴訟法246条は、司法警察員が犯罪の捜査をしたときは速やかに書類および証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならないとしたうえで、但書で、検察官が指定した事件についてはこの限りでないと定めています。この但書に基づく運用が微罪処分です。
対象になるのは、被害が軽微で、被害者が処罰を望まず、素行に問題がなく、再犯のおそれが小さいといった事情がそろう場合です。検察官に送致されないため、起訴もされず、罰金も科されません。この点では確かに軽い処理です。
ただし、事件そのものが存在しなかったことになるわけではありません。警察には記録が残ります。同種の事件を繰り返した場合、次は微罪処分では済まないという判断につながります。
在宅事件はどう進むのか
在宅事件は、身体を拘束されないまま捜査が進む形態です。呼出しを受けて出頭し、取調べを受け、必要な捜査が終わった段階で検察官に送致され、そこから起訴・不起訴の判断がなされます。
特徴は、期間が読みにくいことです。勾留された事件には最大23日という枠がありますが、在宅事件にはこうした期限がありません。数か月が経ってから呼出しが来ることもあります。連絡が途絶えた期間を、終わったものと受け取ってしまうことが、最も多い誤りです。
在宅のまま略式手続により罰金が科されることもあります。略式命令は簡易な手続ですが、有罪の裁判であることに変わりはありません。
罰金でも残るもの 刑法34条の2
罰金は前科ではないと考える方がいますが、そうではありません。有罪判決による罰金は前科です。刑法34条の2は、刑の執行を終わり、または執行の免除を得た者が、罰金以下の刑については5年間、拘禁刑以上の刑については10年間、罰金以上の刑に処せられないで経過したときに、刑の言渡しが効力を失うと定めています。
つまり、記録の効力が消えるまでには一定の期間が必要です。その期間中に在留期間の更新や永住許可の申請時期が来れば、審査の材料になります。
入管に情報が届く経路
刑事処分の情報は、いくつかの経路で入管の審査に反映されます。まず、在留期間更新許可申請や在留資格変更許可申請の際に、申請人自身が申告を求められます。虚偽の申告は、それ自体が後に重い問題になります。
次に、入管法19条の16および19条の17は、所属機関等に関する届出を14日以内に行うことを求めています。刑事事件によって離職や退学が生じた場合、この届出の内容から状況が把握されることがあります。
さらに、入管法22条の4は、正当な理由なく3か月以上その在留資格に応じた活動を行わないでいることを取消事由の一つとしています。出入国在留管理庁の令和7年の統計によれば、在留資格の取消しは1,446件で、国籍別ではベトナムが947件と最も多くなっています。
更新・変更・永住・帰化への影響
在留期間の更新や在留資格の変更は、申請すれば当然に認められるものではありません。審査では素行を含む諸事情が考慮されます。罰金であっても、直近の処分であれば説明を求められます。
永住許可については、素行が善良であることが要件の一つとされています。帰化については、国籍法5条1項3号が素行要件を定めています。刑事処分の記録は、これらの判断の場面で意味を持ちます。だからこそ、在宅事件だからといって放置してよいとは言えないのです。
薬物事件だけは構造が違う
ここまでは、罰金や軽微な処分が直ちに退去強制につながるわけではないという前提で述べてきました。入管法24条4号リは、無期または1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としますが、但書により刑の全部の執行猶予が付された場合は除外されます。
しかし、薬物事件は別です。入管法24条4号チは、麻薬・大麻・あへん・覚醒剤等に関する法令に違反して有罪の判決を受けた者を挙げており、罰金でも執行猶予でも刑の免除でも該当します。在留資格の種類も問いません。在宅事件で略式罰金となった場合であっても、有罪の判決を受けた者であることに変わりはありません。
さらに、入管法5条1項5号により、薬物関係の上陸拒否には年限の定めがなく、期間の定めのない上陸拒否となります。また入管法24条の3の出国命令は、4号ハからヨまでのいずれにも該当しないことを要件の一つとしているため、薬物該当者は出国命令を使えません。なお、令和6年12月12日施行の法改正により、大麻は麻薬及び向精神薬取締法上の麻薬とされ、使用罪が新設されました。
よくある誤解
逮捕されていないのだから入管には知られない、という理解は正確ではありません。更新申請の際の申告、所属機関に関する届出など、複数の経路があります。
また、罰金を払えば終わりだ、という理解も見られます。支払いによって刑の執行は終わりますが、記録が残る期間があることは前述のとおりです。
在宅のうちにできること
- 呼出しには必ず応じる。応じないことが、身体拘束の理由になり得ます。
- 取調べで何をどう述べるかを、事前に弁護人と相談する。刑事訴訟法198条2項は、供述をする必要がない旨の告知を定めています。
- 被害者がいる事件では、示談の可否を早期に検討する。不起訴の判断に影響します。
- 在留期間の満了日を確認し、更新申請の時期と刑事処分の時期の関係を把握する。
当事務所の対応
舟渡国際法律事務所では、松村大介弁護士が打合せに直接対応します。在宅事件では、起訴・不起訴の判断がなされる時期を見据えて、示談交渉、意見書の提出、在留手続との時期の調整を行います。
通訳体制については、中国語は外国人事件専属の通訳が常駐しています。ベトナム語を含むその他の言語は、事案に応じて通訳人を手配します。弁護方針としては、執行猶予判決ではなお不十分と考え、不起訴処分を最優先の目標とします。刑事の供述調書が後の違反審査や口頭審理の資料になるため、刑事事件と入管手続は一体として設計します。初回相談は無料です。微信のIDは matsumura1119 です。
おわりに
身体を拘束されないことは、事件が軽いことを意味しません。むしろ、時間の余裕がある分だけ、準備できることが多い局面です。その余裕を使うかどうかで、数か月後の結論が変わります。本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
この記事のベトナム語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099055/
----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
東京を中心に刑事事件の弁護
----------------------------------------------------------------------