日本で逮捕された ミャンマー語話者のための最初の手引
2026/09/02
ミャンマー出身の方の在留のかたちは、いま一様ではありません。技能実習、特定技能、留学、家族滞在、そして人道的な配慮に基づく在留。同じ罪名でも、どの在留資格を持っているかによって、逮捕がもたらす影響の形はまったく違ってきます。
出入国在留管理庁の令和7年末の統計によれば、在留外国人数は412万5,395人で、ミャンマーは182,567人でした。この記事では、逮捕直後に何が決まるのか、通訳と弁護人はどう付くのか、在留のかたちごとに何が変わるのか、そして退去強制事由の条文を正確にどう読むのかを整理します。
最初の72時間で何が決まるのか
逮捕後の手続は法定の期限に沿って進みます。警察は逮捕から48時間以内に事件を検察官へ送致し、検察官は身柄を受け取ってから24時間以内、かつ逮捕から72時間以内に、裁判官へ勾留を請求するかどうかを決めます。勾留が認められると原則10日、延長でさらに最大10日です。
この期間に作成された供述調書は、後の裁判でも、入管の違反審査や口頭審理でも使われます。最初の数日の対応が、刑事の結論だけでなく在留の帰趨にも影響するのは、この仕組みによります。
通訳はどう付くのか
通訳は捜査機関や裁判所の側で手配されます。刑事訴訟法175条は国語に通じない者に陳述をさせる場合に通訳人を付すことを、178条は国語でない文字等の翻訳を定めています。裁判所法74条は裁判所において日本語を用いると定め、自由権規約14条3項(f)は使用言語を理解できない場合に無償で通訳の援助を受ける権利を保障しています。
最高裁判所『あなたも法廷通訳を ごぞんじですか』令和7年1月版によれば、通訳人候補者名簿には平成29年4月時点で62言語3,823人が登録されていました。言語ごとの人数には大きな差があり、話者の少ない言語では期日や接見の調整に時間がかかることがあります。訳語に疑問を感じたときは、その場で述べてかまいません。刑法171条は虚偽の通訳を犯罪と定めています。
弁護人の三つの経路
第一に当番弁護士です。逮捕された方は一度、無料で弁護士を呼ぶことができます。第二に被疑者国選弁護で、勾留された段階から資力要件のもとで選任されます。第三に私選弁護で、ご家族や勤務先の関係者が依頼する形です。
刑事訴訟法39条1項は、身体を拘束された被疑者・被告人が、弁護人または弁護人になろうとする者と立会人なしに接見し、書類や物の授受をすることを認めています。ご家族との面会が制限されている段階でも、弁護人の接見は別枠であり、外部との確実な通路になります。
在留のかたちによって影響が変わる
技能実習の在留資格をお持ちの場合、身体拘束によって実習先との関係が切れることの影響が大きく出ます。入管法22条の4は、正当な理由なく3か月以上その在留資格に応じた活動を行わないでいることを取消事由の一つとしています。出入国在留管理庁の令和7年速報値によれば、技能実習の失踪者は3,950人で、ミャンマーは398人でした。
留学の在留資格では、在籍が失われれば同じ問題が生じます。特定技能や技術・人文知識・国際業務では、雇用契約の維持が焦点になります。家族滞在や身分に基づく在留資格では、家族関係そのものが在留の基礎であるため、判断の材料が異なります。
いずれの場合も、入管法19条の16および19条の17は所属機関等に関する届出を14日以内に行うことを求めており、身体拘束中も期限は進みます。どの時点で誰が何を届け出るかは、弁護人と相談して決めるべき事柄です。
退去強制事由の条文を正確に読む
入管法24条4号リは、無期または1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としています。ただし但書があり、刑の全部の執行猶予が付された場合は除外されます。一部猶予の場合も、実刑部分が1年以下であれば除外されます。執行猶予でも必ず退去強制になる、という説明は正確ではありません。
これに対して同条4号チは、麻薬・大麻・あへん・覚醒剤等に関する法令に違反して有罪の判決を受けた者を挙げており、罰金でも執行猶予でも刑の免除でも該当します。在留資格の種類も問いません。さらに入管法5条1項5号により、薬物関係の上陸拒否には年限の定めがありません。
もう一つ、入管法24条4号の2があります。強盗、不同意性交等、危険運転致死傷などの一定の重大犯罪で拘禁刑に処せられた者のうち、別表第一の在留資格をもって在留する者が対象です。技能実習、特定技能、留学、技術・人文知識・国際業務はいずれも別表第一に含まれます。罪名によっては、この規定の適用範囲を確認する必要があります。
よくある誤解
示談ができれば在留も安全になる、という理解を聞くことがあります。示談は不起訴や量刑に向けて重要ですが、薬物事件では有罪判決そのものが4号チに直結するため、示談の有無で結論が変わる構造にはなっていません。
また、母国の資格を持つ法律家に依頼すれば足りる、という誤解もあります。日本の刑事手続で弁護人となるには日本の弁護士資格が必要です。
ご本人とご家族が取れる行動
- 当番弁護士の派遣を求めると述べる。
- 領事機関への通報を希望するかどうかを本人の意向として確認する。領事関係に関するウィーン条約36条が領事通報と領事接見を定めています。
- 在留カード、旅券、雇用契約書または在学証明、住居に関する資料、家族関係を示す書類を集める。
- 実習先や学校への連絡は、内容と時期を弁護人と相談してから行う。
当事務所の対応
舟渡国際法律事務所では、松村大介弁護士が接見と打合せに直接対応します。刑事の見通しと在留への影響を同時に検討し、取調べでの対応、勾留への不服申立て、所属機関への連絡の順序を組み立てます。
通訳体制については、中国語は外国人事件専属の通訳が常駐しています。ミャンマー語を含むその他の言語は、事案に応じて通訳人を手配します。弁護方針としては、執行猶予判決ではなお不十分と考え、不起訴処分を最優先の目標とします。刑事の供述調書が後の違反審査や口頭審理の資料になるため、刑事事件と入管手続は一体として設計します。退去強制事由の該当性についても故意や過失を争う視点で検討します。初回相談は無料です。微信のIDは matsumura1119 です。
おわりに
同じ事件でも、在留のかたちが違えば取るべき手当ては変わります。だからこそ、罪名だけを見て結論を急がず、手元の在留資格と条文を突き合わせることから始める必要があります。本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
この記事のミャンマー語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099053/
----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
東京を中心に刑事事件の弁護
----------------------------------------------------------------------