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逮捕直後に黙秘すべきか 外国人事件で黙秘が持つ意味

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逮捕直後に黙秘すべきか 外国人事件で黙秘が持つ意味

逮捕直後に黙秘すべきか 外国人事件で黙秘が持つ意味

2026/09/02

黙秘したほうがよいのでしょうか。接見の場で、最も多く受ける質問です。ただ、この問いには一律の答えがありません。事件の内容、証拠の状況、本人が何を体験したのかによって、取るべき対応は変わります。

それでも、外国人の方の事件には、日本人の事件とは異なる考慮要素があります。刑事の取調べで作られた供述調書が、刑事手続の中だけで役割を終えず、その後の入管手続でも資料として使われるという点です。この記事では、黙秘権の内容と、その外国人事件における意味を整理します。

黙秘権とは何か

被疑者は、自己の意思に反して供述をする必要がありません。刑事訴訟法198条2項は、取調べに際して、あらかじめ、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げなければならないと定めています。これは制度上の建前ではなく、実際の取調べの冒頭で告げられるべき事項です。

黙秘は、全部について行うこともできますし、特定の質問についてのみ行うこともできます。また、途中まで話していた人が、その後に黙秘に切り替えることもできます。一度話し始めたから最後まで話さなければならない、という決まりはありません。

外国人事件で黙秘が持つ特別な意味

外国人の方の事件では、供述調書が刑事手続の外にも出ていく点を意識する必要があります。刑事段階で作成された調書は、その後の違反調査、違反審査、口頭審理といった入管の手続において、事実関係の資料として用いられ得ます。

つまり、刑事事件では大きな意味を持たない一文が、入管の手続では退去強制事由の判断を左右することがあります。たとえば、就労の頻度や態様に関する記述、在留資格上の活動をどれだけ行っていたかに関する記述は、刑事の量刑にはほとんど影響しなくても、22条の4の在留資格取消しや24条各号の該当性の判断では重い意味を持ちます。二つの手続を見比べながら供述の範囲を考える必要があるのは、このためです。

黙秘すると不利になるのか

黙秘権の行使それ自体を理由に、量刑や処分を重くすることは許されません。もっとも、実務上は、反省や被害弁償に関する事情が説明されないまま推移することで、結果として有利な事情が伝わりにくくなる場面はあります。だからこそ、何を話し、何を話さないかは、弁護人と方針をすり合わせて決めるべきものです。

状況を正しく把握しないまま全部話す、あるいは何も分からないまま全部黙るという二択で考えると、後で修正が利きません。まずは弁護人と会い、証拠の状況と見通しを聞いたうえで方針を決めることをお勧めします。弁護人は逮捕当日から立会人なしで面会できます(刑事訴訟法39条1項)。

調書に署名する前に確認すること

署名は、内容を確認し、必要な訂正を求めたうえで行うものです。刑事訴訟法198条4項は、供述調書を読み聞かせ又は閲覧させ、増減変更の申立てがあればこれを調書に記載しなければならないと定めています。訳し戻して読み聞かせてもらい、違うと感じた箇所は具体的に指摘してください。

通訳を介した取調べでは、意図と異なる表現が調書に残ることがあります。日本の裁判所では日本語を用いることとされており(裁判所法74条)、通訳と翻訳については刑事訴訟法175条・178条が定めています。最高裁判所の資料によれば、通訳人を必要とした事件の終局被告人は令和5年に3,851人で、うちベトナム語が40.4%を占めています(最高裁判所『あなたも法廷通訳を ごぞんじですか』令和7年1月版)。一定の事件では取調べの録音録画も行われます(刑事訴訟法301条の2)。

刑事処分が在留資格にどう跳ね返るか

供述の内容は、最終的に在留資格の帰趨につながります。入管法24条4号リは無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としますが、但書により全部執行猶予が付された場合は除かれ、一部猶予でも実刑部分が1年以下なら除かれます。他方、同条4号チの薬物犯罪は、罰金でも執行猶予でも有罪判決を受けた時点で該当し、在留資格の別表を問いません。

令和7年版犯罪白書によれば、令和6年の来日外国人被疑事件の起訴率は44.28%で、全体の40.38%を上回っています。ここでいう来日外国人は、永住者、永住者の配偶者等、特別永住者、在日米軍関係者、在留資格不明の者を除いた定義です。起訴されれば公判で有罪となる可能性が高く、そこから在留の議論が始まることを踏まえると、起訴前の段階で何を残すかは決定的な意味を持ちます。

ご本人とご家族が取れる行動

ご本人は、まず弁護人を呼ぶことです。まだ弁護人がいなければ、留置施設の担当者に当番弁護士を呼びたいと申し出れば足ります。弁護人が来るまでは、分からないまま署名しないこと、通訳の内容に疑問があればその場で確認を求めることを心がけてください。

ご家族は、本人の在留資格の種類と在留期限、勤務先や学校、家族関係を示す資料を集めてください。在留特別許可の考慮要素については、入管法50条5項が、在留を希望する理由、家族関係、素行、本邦に在留することとなった経緯、在留期間その他の事情を挙げています。刑事段階から準備した資料は、そのまま入管手続でも使えます。

よくある誤解

第一に、黙秘すると必ず起訴されるという理解です。処分は証拠の内容によって決まるものであり、黙秘権の行使自体を不利益に扱うことは許されません。第二に、正直に話せば早く出られるという理解です。話した内容がそのまま在留の判断材料になることを踏まえると、正確さのほうが速さより重要です。第三に、刑事が終われば調書の役割も終わるという理解です。調書は入管手続でも生き続けます。

当事務所の対応

当事務所では、松村大介弁護士が接見に直接出向き、証拠の状況を踏まえて供述方針を一緒に組み立てます。中国語については外国人事件専属の通訳が常駐しており、ベトナム語を含むその他の言語については、事案に応じて通訳人を手配します。

弁護方針としては、執行猶予判決では不十分と考え、不起訴処分の獲得を最優先の目標とします。刑事の供述調書が違反審査や口頭審理の資料になる以上、刑事と入管を一体で設計し、退去強制事由の該当性についても故意・過失の有無を含めて検討します。初回のご相談は無料です。微信(WeChat)ID matsumura1119 でもご連絡いただけます。

おわりに

黙るか話すかは、性格の問題でも度胸の問題でもなく、記録に何を残すかという設計の問題です。本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119

この記事のベトナム語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099039/

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