身元引受人は誰がなれるのか 外国人事件の実務
2026/09/02
身元引受人がいないと出られないと言われました。この言葉は、外国人事件の相談で最も頻繁に出てくるものの一つです。では、身元引受人には誰がなれるのか。日本人でなければならないのか。在留資格のない親族でも構わないのか。この点を正面から説明した資料は、意外なほど少ないのが現状です。
この記事では、刑事手続における身元引受人と、入管手続における監理人・仮放免の身元保証人を区別しながら、それぞれ誰が引き受けられるのか、どのような資料が求められるのかを整理します。
身元引受人に法律上の資格要件はない
刑事手続でいう身元引受人には、国籍や職業といった法律上の資格要件は定められていません。求められているのは、本人と一定の関係があり、住居を提供し、日常的に監督でき、手続への出頭を確保できる立場にあるかどうかという実質です。
したがって、日本人でなければならないということはありません。外国籍の配偶者、親、兄、姉、あるいは長年一緒に働いてきた雇用主が引き受ける例も珍しくありません。重要なのは形式ではなく、本人が逃げず、証拠を隠さず、指定された日に出頭する体制を現実に整えられるかという点です。
誰が引き受けるとどう見られるか
同居する家族、勤務先、支援者では、それぞれ説得力の質が異なります。同居家族は生活の場を共有しているため、監督の実効性を示しやすい立場です。日々の生活状況、収入、家族構成を具体的に書ければ、それだけで一つの資料になります。
勤務先が引き受ける場合は、雇用の継続予定と、勤務中の状況を把握できる体制が示せることが強みになります。支援者や知人の場合は、関係の長さ、日常的な接触の頻度、これまでどのように関わってきたかを具体的に書く必要があります。いずれの場合も、抽象的に監督しますと書くだけの書面では足りません。
引受人に在留資格がない場合
引受人自身の在留状況が不安定な場合、その一点で否定されるとは限りませんが、説明の仕方は変わります。住居の安定性、生計の見通し、本人との関係を、より具体的に示す必要があります。ご自身の在留手続にも影響し得るため、書面を出す前に弁護人に相談してください。
また、引受人が一人しかいないという状況では、その方に何かあったときに体制が崩れます。可能であれば、複数の候補を用意し、役割を分けておくことが有効です。住居を提供する人、通院や通訳に付き添う人、勤務の受入れをする人と分担できれば、体制の厚みが増します。
入管手続の監理人・仮放免との違い
入管手続では、身元引受人に相当する役割として監理措置の監理人があり、刑事の身元引受人とは制度上別のものです。監理措置は、収容に代えて監理人の監理のもとで生活することを認める仕組みで、監理人は本人の生活状況を把握し、入管に届け出る立場に立ちます。
出入国在留管理庁によれば、令和6年6月10日から同年末までの監理措置の決定は1,123件(退去強制令書発付前647件、発付後476件)で、同時期の仮放免は127件でした。監理人の9割以上は親族・知人であり、この期間に所在不明となった者はいなかったとされています。刑事段階から引受体制を整えておくことは、入管手続に移った後の見通しにも直結します。
刑事処分が在留資格にどう跳ね返るか
身元引受体制の厚さは、身体拘束の可否だけでなく、在留の判断にも影響します。在留特別許可の考慮要素について、入管法50条5項は、在留を希望する理由、家族関係、素行、本邦に在留することとなった経緯、在留期間その他の事情を挙げています。誰がどのように支えているかは、家族関係と素行の両方に関わる事情です。
他方で、刑事処分そのものの評価も避けて通れません。入管法24条4号リは無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としますが、但書により全部執行猶予が付された場合は除かれます。同条4号チの薬物犯罪は罰金でも執行猶予でも該当します。申請権については50条2項が収容令書により収容されている者と監理措置決定を受けた者について定め、同条3項により退去強制令書の発付後は申請ができません。不許可の場合には、同条10項により理由を付記した書面が交付されます。
身元引受書に何を書くか
書面に盛り込むべき事項は、おおむね次のとおりです。引受人の氏名、生年月日、国籍、在留資格と在留期限、住所、職業と勤務先、本人との関係と関係の年数、同居の有無と住居の状況、収入の概要、本人を監督する具体的な方法、出頭の確保について引き受ける内容です。
あわせて、在留カードの写し、住民票、雇用契約書や在職証明、賃貸借契約書といった裏づけ資料を添えます。抽象的な決意ではなく、生活の実態が読み取れる書面のほうが、はるかに重く受け止められます。
よくある誤解
第一に、身元引受人は日本人でなければならないという誤解です。そのような要件はありません。第二に、身元引受書さえ出せば釈放されるという理解です。身元引受けは重要な資料ですが、事案の内容や証拠の状況と併せて判断されます。第三に、刑事で身元引受人になった人が自動的に入管の監理人になるという理解です。制度が別である以上、改めて要件と資料を整える必要があります。
当事務所の対応
当事務所では、松村大介弁護士が接見と打合せに直接対応し、どなたに引受人をお願いするか、どの資料を揃えるかを一緒に組み立てます。中国語については外国人事件専属の通訳が常駐しており、その他の言語については事案に応じて通訳人を手配します。
弁護方針としては、執行猶予判決では不十分と考え、不起訴処分の獲得を最優先の目標とします。刑事段階の供述調書が違反審査や口頭審理の資料になる以上、刑事と入管を一体で設計し、退去強制事由の該当性についても故意・過失の有無を含めて検討します。初回のご相談は無料です。微信(WeChat)ID matsumura1119 でもご連絡いただけます。
おわりに
引受人を探す作業は、単なる書面集めではなく、本人が戻る場所を用意する作業です。本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
この記事の簡体字中国語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099035/
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