事件は勤務先や学校にいつ伝わるのか 四つの経路
2026/09/02
逮捕されたことが会社や学校に知られてしまうのか。この心配は、ときに刑事処分そのものへの不安を上回ります。仕事を失えば在留資格の基礎が崩れ、学校を除籍されれば留学の在留資格が続きません。日本で生活を組み立ててきた方ほど、この点が切実になります。
ここでは、事件が外部に伝わる経路を四つに分けて整理し、それぞれどの段階で伝わるのか、そして伝わり方をどこまで整えられるのかを説明します。届出の期限や在留資格の取消しといった、入管の側の時計についても触れます。
伝わる経路は四つある
事件が勤務先や学校に伝わる経路は、本人からの連絡、ご家族からの連絡、報道、そして入管や捜査機関からの照会の四つに整理できます。この四つは伝わる時期も、伝わる内容の詳しさも異なります。
実務上、最も多いのは、無断欠勤が続いたことをきっかけに会社が事情を尋ね、家族が事実を伝えるという流れです。次いで、弁護人を通じて事情を説明する場合があります。報道は、事件の性質によっては起きますが、多くの事件では報じられません。入管からの照会は、退去強制手続や在留資格の審査の中で行われます。
勤務先に伝わる典型的なタイミング
勤務先が最初に異変に気づくのは、多くの場合、連絡なしの欠勤が二日、三日と続いた時点です。逮捕された本人は留置施設から電話をかけられないのが原則で、携帯電話も押収されていることが多いため、本人から会社に連絡することはできません。
この段階でご家族が沈黙を選ぶと、会社は無断欠勤として処理を進めることになります。他方で、事情をどう伝えるかによって、休職扱いや復職の可能性が残ることもあります。何をどこまで伝えるかは事案によりますので、弁護人と相談したうえで方針を決めることをお勧めします。伝えないという選択が常に安全とは限りません。
留学生・技能実習生の場合
学校や監理団体・実習実施者は、在籍や実習の状況を入管に報告する立場にあるため、長期の欠席や欠勤は必ず把握されます。留学生の場合、出席率の低下は在籍そのものに影響します。技能実習生の場合、実習先から離れた状態が続くと、失踪として扱われることがあります。
出入国在留管理庁の令和7年速報値によれば、技能実習生の失踪者は3,950人で、うちベトナム国籍が2,593人(65.6%)を占めています。勾留によって実習先を離れている状態は、本人の意思による失踪とは性質が異なりますから、その点を説明できる資料を早めに整えることが大切です。
入管への届出義務と時計の進み方
入管との関係では、身柄が拘束されている間も届出の期限は進みます。入管法19条の16・19条の17は、所属機関等に関する届出について定めており、契約機関や活動機関に変更が生じた場合には14日以内の届出が求められます。住居地についても19条の7から19条の10までに届出の定めがあります。
身体を拘束されていると、本人がこれらの手続を行うことは事実上できません。だからこそ、いつ何が期限を迎えるのかを把握し、弁護人や関係者と分担して対応を検討する必要があります。届出がされていないこと自体が、後の審査で不利に働くことがあります。
刑事処分が在留資格にどう跳ね返るか
職や学籍を失うことは、刑事処分とは別の経路で在留資格に直結します。入管法22条の4は、その在留資格に応じた活動を3か月以上行わないで在留していること(正当な理由がある場合を除く)などを在留資格の取消事由としています。出入国在留管理庁によれば、令和7年の在留資格取消しは1,446件で、在留資格別では技能実習973件、留学343件でした。
刑事処分の側では、入管法24条4号リが無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としますが、但書により全部執行猶予が付された場合は除かれます。他方、同条4号チの薬物犯罪は罰金でも執行猶予でも該当します。つまり、刑事の結果が軽くても、活動を行っていない期間が積み重なれば別の理由で在留を失うことがあり、二つの経路を同時に見ておく必要があります。
伝わり方を整える余地
できることは、伝わるか伝わらないかを操作することではなく、伝わるときの正確さを確保することです。第一に、弁護人を通じて、事実関係と手続の見通しを整理した形で伝える。第二に、勾留という事情で出勤できない状態であることを説明し、無断欠勤との違いを明確にする。第三に、復職や復学の可能性がある場合には、その意思を早い段階で示す。
不正確な噂が先に広がると、後から訂正することは容易ではありません。ご家族が善意で説明した内容が、結果として不利に働くこともあります。何を伝えるかは、弁護人と方針をすり合わせてから決めてください。
よくある誤解
第一に、逮捕されれば必ず会社に警察から連絡が行くという誤解です。事案によって扱いは異なります。第二に、黙っていれば分からないという理解です。欠勤や欠席が続けば、遅かれ早かれ把握されます。第三に、解雇や除籍が決まれば在留資格も自動的に消えるという理解です。取消しは22条の4の要件に沿って判断されるものであり、正当な理由の主張の余地があります。
当事務所の対応
当事務所では、松村大介弁護士が接見と打合せに直接対応し、勤務先や学校への説明の要否と内容についても一緒に検討します。中国語については外国人事件専属の通訳が常駐しており、ベトナム語を含むその他の言語については、事案に応じて通訳人を手配します。
刑事事件では、執行猶予判決では不十分と考え、不起訴処分の獲得を最優先の目標とします。刑事の供述調書が違反審査や口頭審理の資料となる以上、刑事と入管を一体で設計し、退去強制事由の該当性についても故意・過失の有無を含めて検討します。初回のご相談は無料です。微信(WeChat)ID matsumura1119 からもご連絡いただけます。
おわりに
伝わることを恐れて動かない時間が、いちばん多くを失わせます。本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
この記事のベトナム語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099033/
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