起訴までの23日間 ご家族にできることと準備する資料
2026/09/02
本人はいつ出られるのか。会社にはどう説明すればよいのか。今すぐ私たちにできることはあるのか。ポルトガル語を母語とするご家族から寄せられる質問は、だいたいこの三つに集約されます。いずれも、起訴・不起訴が決まるまでの23日間という枠組みを知らないと、答えが見えてきません。
この記事では、その23日間に何が起きるのかを段階ごとに追いながら、ご家族が実際に動ける場面を具体的に示します。あわせて、刑事事件の結果が在留資格にどう跳ね返るのかについても整理します。
23日間の内訳
逮捕から起訴・不起訴の判断までは、法律上、最長でおよそ23日間です。警察の手持ち時間は48時間、検察官に送致されてから勾留を請求するまでが24時間、勾留は原則10日、延長でさらに最大10日となります。実際には、この期間が満了する前に処分が決まることもあります。
ここで押さえておきたいのは、起訴された後に処分を覆すのは格段に難しくなるという点です。日本では、起訴されると有罪となる割合が高いことが知られています。だからこそ、この23日間に何を積み上げられたかが、その後の全体を左右します。
誰が何を決めているのか
この期間に判断を下しているのは、警察ではなく検察官と裁判官です。勾留するかどうかを請求するのは検察官、認めるかどうかを決めるのは裁判官、そして最後に起訴・不起訴を決めるのは検察官です。ご家族が働きかける先は、この判断の材料を届けられる人、すなわち弁護人ということになります。
令和7年版犯罪白書によれば、令和6年の来日外国人被疑事件の起訴率は44.28%で、全体の40.38%を上回っています。ここでいう来日外国人は、永住者、永住者の配偶者等、特別永住者、在日米軍関係者、在留資格不明の者を除いた定義です。外国人だから軽く済むということはないという前提で臨む必要があります。
ご家族が23日間にできること
ご家族の関与が結果を変え得る場面は、思っているより多くあります。順に挙げます。
- 弁護人を選任する。本人に会えなくても、配偶者や直系の親族、兄弟姉妹は独立して弁護人を選任できます(刑事訴訟法30条2項)
- 身元引受人となる意思を書面にし、同居の状況や監督できる体制を具体的に示す
- 在留カードの写し、雇用契約書、給与明細、家族の在留資格が分かる資料、子どもの在学証明を集める
- 被害者のいる事件では、弁護人を通じて示談の申入れを検討する。ご家族が直接連絡を取ることは避ける
- 本人の健康状態、常用薬、日本語の理解度を弁護人に伝える
示談は、成立すれば不起訴の判断に大きく影響し得る事情です。ただし、被害者の連絡先は捜査機関を通じて弁護人にしか開示されないのが通常であり、ご家族が独自に接触することは、かえって事態を悪化させます。
通訳と言葉の問題
言葉が通じないまま進む取調べは、後で争点になります。裁判所法74条は裁判所では日本語を用いると定め、刑事訴訟法175条・178条が通訳と翻訳について規定しています。取調べに際しては黙秘権が告げられ(同法198条2項)、供述調書は読み聞け又は閲覧のうえで増減変更を申し立てることができます(同条4項)。
最高裁判所の資料によれば、通訳人を必要とした事件の終局被告人は令和5年に3,851人で、うちポルトガル語は5.5%を占めています(最高裁判所『あなたも法廷通訳を ごぞんじですか』令和7年1月版)。日常会話ができることと、法律用語を含む取調べを理解できることは別問題です。理解できていない部分があれば、その場で確認を求めてください。
刑事処分が在留資格にどう跳ね返るか
刑事処分の内容によって、在留資格に及ぶ影響はまったく変わります。入管法24条4号リは無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としますが、但書により全部執行猶予が付された場合は除かれ、一部猶予でも実刑部分が1年以下なら除かれます。したがって、執行猶予がついたら直ちに帰国させられるというものではありません。
一方、同条4号チの薬物犯罪は、罰金でも執行猶予でも有罪の判決を受けた時点で該当します。同法5条1項5号の上陸拒否には年限の定めがなく、再入国は12条1項の上陸特別許可による道しかありません。永住者や定住者、日本人の配偶者等の在留資格をお持ちの方であっても、この点は変わりません。だからこそ、当事務所は執行猶予ではなく不起訴を目標に据えます。
よくある誤解
第一に、初犯だから起訴されないという理解です。罪名と被害の内容によって扱いは大きく異なります。第二に、示談さえすれば必ず不起訴になるという理解です。示談は重要な事情ですが、それだけで結論が決まるわけではありません。第三に、判決が出るまで在留のことは考えなくてよいという理解です。刑事段階で作成された供述調書は、その後の違反審査や口頭審理の資料として用いられ得ます。
当事務所の対応
当事務所では、松村大介弁護士が接見と打合せに直接対応します。中国語については外国人事件専属の通訳が常駐しており、ポルトガル語を含むその他の言語については、事案に応じて通訳人を手配します。
方針としては、執行猶予判決では足りないと考え、不起訴処分の獲得を最優先の目標とします。刑事事件と入管手続を一体として設計し、退去強制事由の該当性についても故意・過失の有無を含めて検討します。初回のご相談は無料です。微信(WeChat)ID matsumura1119 でもご連絡いただけます。
おわりに
23日間は短いようでいて、準備を積み上げるには足りる長さです。本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
この記事のポルトガル語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099031/
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