日本の警察に逮捕されたら 留置と入管収容の違いと期間
2026/09/02
いつ出られますか。インドネシア語話者のご家族から最初に届く質問は、ほとんどがこの一言です。日本の手続は、逮捕された後の身体拘束が二段階に分かれていて、しかもその二つを別々の役所が扱うため、外から見ると全体像がつかみにくくなっています。
この記事では、警察署の留置施設での拘束と、出入国在留管理庁の施設での収容が何によって区別されるのか、それぞれどのくらいの期間になるのか、そして拘束を解くためにどのような手段があるのかを整理します。あわせて、刑事事件の結果が在留資格にどう跳ね返るのかについても触れます。
刑事手続の23日間という区切り
逮捕された人が起訴・不起訴の判断を受けるまでの拘束は、最長でおよそ23日間です。警察の手続が48時間以内、検察官への送致後24時間以内に勾留請求をするかが決まり、勾留は原則10日、延長で最大10日が加わります。この間、平日も休日も取調べが行われることがあります。
起訴されれば被告人としての勾留に切り替わり、保釈が認められなければ判決まで続きます。逆に不起訴となれば、刑事手続としての拘束は終わります。もっとも、在留資格の問題が残っている場合には、そこで自由の身になるとは限りません。ここが二段階の分かれ目です。
留置施設と入管の収容施設はどう違うのか
留置施設は刑事事件の捜査のための拘束であり、入管の収容は退去強制手続のための拘束で、根拠となる法律も担当する機関もまったく別です。警察署の留置施設や拘置所は刑事訴訟法に基づく身体拘束の場であり、東日本入国管理センターや各地方出入国在留管理局の収容場は、出入国管理及び難民認定法に基づく収容の場です。
刑事事件で釈放された当日に、入管の職員が身柄を引き継ぐ形で収容が始まることがあります。ご家族から見ると同じ拘束の続きに見えますが、法的にはまったく別の手続の開始であり、求めるべき対応も変わります。刑事の弁護人がそのまま入管手続を担当するとは限らないため、早い段階で両方を見通せる体制にしておく必要があります。
入管の収容はいつまで続くのか
入管の収容には刑事の勾留のような一律の日数制限がなく、手続の進み方によって長さが変わります。違反調査、入国審査官による違反審査、特別審理官の口頭審理、法務大臣への異議の申出という流れを経て、退去強制令書が発付されるか、在留特別許可が与えられるかが決まります。
身体拘束を解く道としては、監理措置と仮放免があります。出入国在留管理庁によれば、令和6年6月10日から同年末までの監理措置の決定は1,123件で、監理人の9割以上が親族・知人であり、この期間に所在不明となった者はいませんでした。監理人を務められる方がいるかどうかが、現実の見通しを大きく左右します。
出国命令という別の道
不法残留だけであれば、収容を経ずに帰国できる出国命令の制度が用意されています。入管法24条の3は、速やかに出国する意思をもって自ら出頭したこと、不法残留以外の退去強制事由に該当しないこと、過去に退去強制されたことや出国命令により出国したことがないこと、速やかに出国することが確実と見込まれることなどを要件としています。
注意が必要なのは、この要件のひとつが4号ハからヨまでのいずれにも該当しないことである点です。薬物事件で有罪となった方は4号チに当たるため、出国命令を使うことができません。上陸拒否期間についても違いがあり、出国命令により出国した場合は5条1項9号の2により1年ですが、退去強制の場合は同項9号により、イが1年、ロが5年、ハが10年とされています。令和7年に入管法違反で退去強制手続又は出国命令手続が執られた者は18,442人、うちインドネシア国籍は1,555人でした(出入国在留管理庁)。
刑事処分が在留資格にどう跳ね返るか
刑事の結果は、在留資格の帰趨を決める分岐点になります。入管法24条4号リは無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としますが、但書により全部執行猶予が付された場合は除かれ、一部猶予でも実刑部分が1年以下なら除かれます。他方、同条4号チの薬物犯罪は、罰金でも執行猶予でも有罪判決を受けた時点で該当し、在留資格の別表を問いません。
また、刑事事件とは別に、3か月以上その在留資格に応じた活動を行っていない場合などには、22条の4による在留資格の取消しが問題となります。令和7年の在留資格取消しは1,446件で、そのうちインドネシア国籍は94件でした(同庁)。勾留が長引いて仕事や学業から離れた状態が続くこと自体が、在留資格に影響し得るという点は見落とされがちです。
ご家族が取れる行動
ご家族にできることは、待つこと以外にもあります。第一に、弁護人を通じて所在と手続の段階を確認すること。弁護人は逮捕当日から立会人なしで面会できます(刑事訴訟法39条1項)。第二に、身元引受けや監理人を引き受けられる方を早めに探し、在留カードや住民票、収入を示す資料を準備しておくこと。
第三に、勤務先や学校との関係を切らさないための連絡です。在留特別許可の判断では、入管法50条5項が在留を希望する理由、家族関係、素行、本邦に在留することとなった経緯、在留期間その他の事情を考慮すると定めており、生活の基盤が日本にあることを示す資料は早い段階から積み上げるほど厚くなります。
よくある誤解
第一に、刑事で釈放されれば手続は終わりだという誤解です。入管の手続はそこから始まることがあります。第二に、出国命令なら誰でも使えるという誤解です。薬物事件で有罪となった方は使えません。第三に、収容期間は法律で決まっているという誤解です。刑事の勾留と異なり、入管の収容には一律の上限がなく、監理措置や仮放免を求める働きかけが必要になります。
当事務所の対応
当事務所では、松村大介弁護士が接見と打合せに直接対応します。中国語については外国人事件専属の通訳が常駐しており、インドネシア語を含むその他の言語については、事案に応じて通訳人を手配します。
刑事事件では、執行猶予判決では足りないと考え、不起訴処分を最優先の目標とします。刑事段階の供述調書が違反審査や口頭審理の資料として用いられる以上、刑事手続と入管手続を一体として設計し、退去強制事由の該当性についても故意・過失の有無を検討します。初回のご相談は無料です。微信(WeChat)ID matsumura1119 からもご連絡いただけます。
おわりに
拘束の長さは、手続の種類と、その手続の中で何を準備できたかによって変わります。本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
この記事のインドネシア語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099025/
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