当番弁護士・国選弁護人・私選弁護人の違いと切り替えの手順
2026/09/02
逮捕された本人から、弁護士が来たと連絡があった。しかし、その弁護士が誰なのか、費用がかかるのか、次も来てくれるのかが分からない。外国人の刑事事件では、ここで判断を誤ると、勾留や処分が決まる大事な二十日間を空費してしまいます。
日本の刑事手続には、当番弁護士、国選弁護人、私選弁護人という三つの入口があります。名前が似ていて混同されやすいのですが、選任される時期、誰が選ぶのか、通訳をどう確保するのかがそれぞれ違います。
三つの違いは、時期と選ぶ主体にある
三者の違いは、いつ関与できるのか、そして誰が選ぶのかという二点に集約されます。
| 種類 | 関与の時期 | 選ぶ主体 |
|---|---|---|
| 当番弁護士 | 逮捕直後から、原則として一回の接見 | 弁護士会の当番名簿 |
| 国選弁護人 | 勾留された段階から | 裁判所が選任 |
| 私選弁護人 | 逮捕前でも逮捕直後でも可能 | 本人または家族 |
いずれの立場であっても、刑事訴訟法39条1項により、弁護人または弁護人となろうとする者は立会人なしで本人と接見できます。捜査機関の目の届かない場所で事件の中身を話せるのは、この三者だけです。
当番弁護士は一回限りの初回接見である
当番弁護士は、逮捕された人が一度だけ無料で呼べる制度です。弁護士会が当番の名簿を作り、要請を受けた弁護士が接見に行きます。
ここで受けられるのは、手続の流れの説明、黙秘権を含む権利の説明、家族への伝言の中継などです。継続してその事件を担当するかどうかは別の話であり、引き続き弁護を受けたい場合は、国選弁護人の選任を求めるか、私選弁護人を選任することになります。
国選弁護人は勾留の段階から付く
国選弁護人は、勾留された被疑者が資力の要件を満たす場合に、裁判所によって選任されます。費用は国が負担するため、経済的な理由で弁護人を持てないという事態を避けられます。
他方で、弁護人を指名して選ぶことはできません。外国人事件の経験や、その言語の通訳を確保できるかどうかは、選任の段階では選べない要素になります。
私選弁護人は逮捕前から動ける
私選弁護人の最大の特徴は、時期の制約がないことです。逮捕前の任意の取調べの段階でも、逮捕直後の72時間の中でも、本国にいるご家族の依頼で動き始めることができます。
勾留請求の前に検察官へ意見を出す、勾留決定に対して不服を申し立てる、被害者との示談交渉を早期に始めるといった活動は、時間との勝負になります。国選弁護人が選任されるのを待つと、この局面が過ぎてしまうことがあります。
通訳は誰が用意するのか
取調べの通訳と、弁護人との打合せの通訳は、用意する主体が別です。取調べに立ち会う通訳人は捜査機関が手配し、法廷の通訳は、裁判所法74条が裁判所では日本語を用いると定めていることを前提に、刑事訴訟法175条および178条に基づいて裁判所が付します。
これに対して、弁護人と本人が接見するときの通訳は、弁護人側が確保しなければなりません。最高裁判所の資料によれば、通訳人候補者名簿の登載者は平成29年4月時点で62言語3,823人ですが、言語によって偏りがあります。打合せの通訳を安定して確保できるかどうかは、弁護人を選ぶ際の実質的な判断材料になります。
刑事処分は在留資格にどう跳ね返るか
弁護人選びが在留に関わるのは、目指す到達点が処分の種類によって変わるからです。入管法24条4号リは、無期または1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としますが、但書により全部執行猶予が付された場合は除外されます。
ところが、同条4号チの薬物犯罪は、罰金でも執行猶予でも有罪判決であれば該当し、入管法5条1項5号によって期間の定めのない上陸拒否にもつながります。また同条4号の2は、強盗、不同意性交等、危険運転致死傷等で拘禁刑に処せられた者のうち、別表第一の在留資格で在留する者を対象とします。執行猶予を取れば安心という発想が通らない領域があるということです。だからこそ、起訴前の段階で不起訴処分を目指せる弁護人かどうかが問われます。
私選へ切り替える手順とよくある誤解
国選から私選への切り替えは、本人の意思を確認したうえで、私選の弁護人選任届を提出することで行います。ご家族が依頼した弁護士が接見に行き、本人の意向を直接確認してから手続を進めるのが通常の流れです。
誤解として多いのは、弁護士を替えると心証が悪くなるというものです。弁護人を選ぶことは本人の権利であり、それ自体が不利益に評価される制度にはなっていません。もう一つは、認めている事件なら誰が弁護しても同じだというものです。認めている事件ほど、被害弁償、身元引受、在留への影響の説明といった弁護活動の差が処分に表れます。
当事務所の対応
当事務所では、松村大介弁護士が接見と打合せに直接対応します。中国語については外国人事件専属の通訳が常駐しており、その他の言語については事案に応じて通訳人を手配します。
執行猶予判決でも在留資格への影響が残る場面があるため、不起訴処分の獲得を最優先の目標とします。刑事の供述調書がのちの違反審査や口頭審理の資料になることを踏まえ、刑事事件と入管手続を一体として設計し、退去強制事由の該当性についても故意や過失の有無を含めて争う視点を持ちます。初回相談は無料で、微信IDはmatsumura1119です。
おわりに
三つの制度は対立するものではなく、時間軸の上で役割が違います。当番で最初の情報を得て、国選で継続的な弁護を受け、必要に応じて私選へ切り替えるという選択も現実的です。本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
この記事のベトナム語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099005/
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