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就労資格で退職した後にオーバーステイになってしまったとき

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就労資格で退職した後にオーバーステイになってしまったとき

就労資格で退職した後にオーバーステイになってしまったとき

2026/08/27

就労の在留資格で来日された方が、会社を辞めた後、次の勤務先が決まらないまま時間が過ぎ、気がついたときには在留カードの期限を過ぎていた。こうしたご相談は珍しくありません。退職そのものは違法ではなく、辞めた翌日に在留資格が消えるわけでもありません。それでも、何の手続もしないまま日が過ぎると、在留資格の取消しや不法残留という、刑事罰にもつながる状態へ静かに移っていきます。ここでは、退職からオーバーステイに至る道筋を条文で確認し、今ご自身がどこに立っているのかを整理します。

会社を辞めた時点で、すぐに不法残留になるのですか

いいえ。在留カードに記載された在留期間の満了日までは、在留資格そのものが残っています。不法残留とは、入管法70条1項5号にいう「在留期間の更新又は変更を受けないで在留期間(20条6項の規定により本邦に在留することができる期間を含む。)を経過して本邦に残留する」状態であり、境目は退職日ではなく満了日です。実務で最も多いのは、次の内定を待つうちにこの満了日を越えてしまい、その瞬間から法的な立場が大きく変わるという経過です。

退職後に届出をしていません。在留資格が取り消されることはありますか

就労の在留資格の方には、勤務先である契約機関との契約が終了したときや、新たに契約を結んだときに、出入国在留管理庁へ届け出る義務があります。届出がないと、当局からは在留資格に対応する活動を行わない状態が続いているように見えますし、在留特別許可の判断でも入管法50条5項が素行を考慮事情の一つに挙げています。

さらに、入管法22条の4は、対応する活動を行わないで在留している状態が続いていること(正当な理由がある場合を除く)を取消事由の一つとしています。どのくらいの期間で取消しの対象となるかといった細目は、条文と最新の運用を直接ご確認いただく必要があるため、ここでは期間を断定しません。押さえていただきたいのは、退職後の無活動の継続が22条の4という独立した取消しの土俵に乗ること、そして取消し後もなお残留すれば入管法70条1項3号・3号の2・3号の3の刑事罰の対象となりうることです。

在留期限を過ぎたまま日本にいると、何罪になりますか

入管法70条1項5号の不法残留にあたります。法定刑は同項の柱書により、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはこれらの併科です。オーバーステイは行政上の問題にとどまらず、刑事罰の対象となる犯罪です。同時に、入管法24条4号ロにより退去強制事由にも該当します。刑事の側で不起訴や執行猶予となっても24条4号ロに該当する事実は変わらないため、入管の手続はそれとは別に進みます。刑事で軽く済んだから日本に居られる、とは言えないのはこのためです。

再就職先が決まれば、在留資格の変更や更新で立て直せますか

在留期間が残っているうちであれば、新しい勤務先での業務内容に応じて、在留資格の変更(入管法20条)や在留期間の更新の許可を求める道があります。他方、満了日を過ぎた後は、通常の変更・更新の手続で在留資格を回復することは制度上想定されておらず、退去強制手続の中で在留特別許可(入管法50条)を求める形になります。内定が出てから相談しようと考えて満了日を越えることが、最も避けたい経過です。

なお、期限が切れた後も働き続けていた場合には、入管法70条1項4号の対象となり、退去強制事由としても24条4号イが加わりえます。不法残留に不法就労が重なると犯情は重く評価され、50条5項の素行等の評価にも直接関わります。雇用していた側についても、24条3号の4の不法就労助長は行為そのもので退去強制事由に該当する構造です。

出国命令で帰国できますか。次に日本へ来られるのはいつですか

不法残留(24条4号ロ)の方は入管法24条の3の出国命令の対象となりうる類型ですが、次の5要件をすべて満たす必要があります。①27条の違反調査の開始前に、速やかに出国する意思をもって自ら出入国在留管理官署に出頭した者(1号イ)、または違反調査の開始後で47条3項の通知を受ける前に入国審査官もしくは入国警備官に出国の意思を表明した者(1号ロ)であること、②24条3号から3号の5まで、4号ハからヨまで、8号または9号のいずれにも該当しないこと、③本邦に入った後、住居侵入・偽造・窃盗強盗・詐欺恐喝等の一定の罪により拘禁刑に処せられていないこと、④退去強制歴・出国命令歴がないこと、⑤速やかに出国することが確実と見込まれることです。出国命令となった場合、主任審査官は速やかに出国を命じ、15日を超えない範囲内で出国期限を定めます(55条の85第1項)。この手続は収容を前提としません。

次に日本へ来られる時期は、出国の経路で大きく変わります。

  • 出国命令により出国した場合は、出国した日から1年(5条1項9号ホ)
  • 違反調査の開始後に出国意思を表明した24条の3第1号ロの類型の方が、その後に短期滞在の活動を行おうとする場合は5年(同項9号ヘ)
  • 退去強制され、それ以前に退去強制歴・出国命令歴がない場合は5年(同号ハ)、すでに前歴がある場合は10年(同号ニ)
  • 退去強制の後、52条5項の決定を受けて期限までに自ら出国した場合は、短期滞在目的を除き1年(同号ロ)
  • 24条4号オからヨまでに該当して退去強制された場合は、5条1項10号により期間の定めなし

在留特別許可の可能性はどう考えればよいですか

中心となるのは入管法50条です。法務大臣は、退去強制対象者に該当する場合であっても、同条1項各号のいずれかに該当するときは、申請により、または職権で在留を特別に許可することができ、退職後の不法残留の多くは同項5号の「その他法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき」を求める形になります。

重要なのが1項ただし書です。無期または1年を超える拘禁刑に処せられた者(全部執行猶予の言渡しを受けた者、および一部猶予で実刑部分が1年以下の者を除く)などについては、在留を許可しないことが人道上の配慮に欠けると認められる特別の事情があると認めるときに限る、という加重要件がかかります。不法残留(24条4号ロ)のみの事案はこのただし書の対象ではなく、これは有利な事情です。逆に実刑が1年を超えるとこの壁が立ち上がるため、刑事処分を軽くする活動と在留特別許可を求める活動は、初動から一体で設計する必要があります。申請は、収容令書により収容された方または監理措置決定を受けた方が行い(同条2項)、退去強制令書が発付された後はできません(同条3項)。判断は47条3項の認定・48条8項の判定に服し、または異議の申出に理由がないと裁決された後に行われ(同条4項)、考慮事情は同条5項に法定されています。許可しない処分には、理由を付した書面による通知が必要です(同条10項)。

摘発される前に、自ら動くことの意味

退職後にオーバーステイとなった方の多くは、働いていない期間があるだけで悪いことはしていない、というお気持ちを抱えています。手続の上では、その空白期間をどう説明できるかが結論を分けます。違反調査の開始前に自ら出頭すれば24条の3第1号イにあたり、出国命令で出国した場合の上陸拒否期間は1年にとどまります。摘発によって出国命令の要件を欠けば、退去強制として5年または10年です。

運用の面でも差があります。令和6年3月に改定され令和6年6月10日に施行された在留特別許可に係るガイドラインは、在留特別許可を例外的・恩恵的に行われる措置と位置づけたうえで、50条5項の考慮事情ごとに評価の考え方を示しており、「当該外国人が、不法滞在を申告するため、自ら地方出入国在留管理官署に出頭したこと」は積極要素として考慮されると明記しています。他方、不法滞在の長期化は消極要素として評価されます。退職後の空白が長引くほど、この二つの評価は逆方向に開いていきます。

当事務所のご案内

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としています。松村大介弁護士(第一東京弁護士会所属・登録番号59077・2019年登録)が、接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当し、事務員や若手弁護士による代行は行いません。就労資格からの不法残留では、刑事処分の見通しと在留特別許可の見通しを同じ設計図の上に置く必要があり、最初の段階から同じ弁護士が一貫して関わることに意味があります。

外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しています。捜査機関や当局が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く通訳を利用できる体制です。退職の経緯や就職活動の実情、体調や家族の事情といった結論に直結する事情を、母語でお話しいただけます。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更等は、提携の行政書士とワンストップで対応します。

解決事例を二件ご紹介します。一件目は、観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの、在留資格を失い不法滞在で逮捕・起訴された事案です。婚姻・認知が未了で一旦不受理とされたところ、憲法的観点から交渉して婚姻・認知を成立させ、国籍国発行の公的書類がほとんど存在しない状況でも有利な証拠を集め、過去の許可事例を分析したうえで、1回の手続で在留特別許可を獲得しました。

二件目は、冤罪により不法就労助長罪に問われ、強制退去の危機に瀕した女性の事案です。退去強制事由には故意・過失が不要とする従来の実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を提起して上訴審まで争いました。その後、入管から在留特別許可が認められています。

初回のご相談は無料です。費用は事案に応じてお見積りいたします。

おわりに

退職後のオーバーステイは、ある日突然起きるものではなく、時間が積み重なって形になるものです。だからこそ、どの時点で動き出すかによって、使える制度も、次に日本へ来られる時期も変わります。今日の時点でできることは必ず残っています。

本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、ご紹介した過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではありません。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。

覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

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ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

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