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「家族滞在」で離婚・死別した後にオーバーステイになったとき

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「家族滞在」で離婚・死別した後にオーバーステイになったとき

「家族滞在」で離婚・死別した後にオーバーステイになったとき

2026/08/27

扶養者であったご家族と離婚された、あるいは亡くされた。悲しみと生活の立て直しに追われるうちに月日が過ぎ、気がつけば在留カードに書かれた在留期限を過ぎたまま日本にいる。ご相談の中で、このようなお話をうかがうことは決してめずらしくありません。手続を軽く見ていたわけではなく、目の前の暮らしとお子さんを守ることで精一杯だった、という方がほとんどです。

もっとも、日本の入管法は、事情がどうであれ在留期限を過ぎた状態が続くことを認めていません。しかも「家族滞在」の場合は、在留期限が来る前の段階から在留資格を失うおそれがあります。この記事では、扶養者との離婚・死別があった方について、どの時点で何が起きるのか、そしていま何を選べるのかを、条文に沿って整理します。

家族滞在の扶養者と離婚・死別すると、在留資格はすぐに失われますか

離婚や死別があった瞬間に在留資格が自動的に消滅するわけではありません。在留期限が残っている間は、形の上では「家族滞在」の在留資格を持ったままです。ただし、それは「安全である」という意味ではありません。

「家族滞在」は、入管法の別表第一に定められた在留資格で、その活動内容は、在留資格をもって在留する方に扶養を受ける配偶者または子としての日常的な活動です。扶養者との関係が失われれば、この活動の土台が失われます。そこから、次の二つの入口で在留資格を失う危険が生じます。一つは在留期間の更新が認められないこと、もう一つは、期限が来る前でも在留資格取消しの対象になりうることです。

離婚・死別から3か月がたつと、在留資格は取り消されるのですか

取り消される可能性があります。入管法22条の4第1項6号は、別表第一の在留資格をもって在留する方が、その在留資格に係る活動を継続して3か月以上行っておらず、かつ、行っていないことについて正当な理由がない場合に、法務大臣が在留資格を取り消すことができると定めています。

「家族滞在」も別表第一の在留資格ですから、離婚・死別によって扶養を受ける配偶者または子としての活動を行わない状態が続けば、この規定の対象になりえます。逆にいえば、「正当な理由」があると評価されれば取消しは行われません。お子さんの養育のために在留資格変更の準備を進めていること、すでに変更の申請をしていること、扶養者の死亡後の葬儀や相続の事情で手続が遅れていることなどは、説明すべき事情にあたります。大切なのは、その事情を心の中に置いておくのではなく、資料をそろえて自分から出入国在留管理官署に説明することです。

なお、在留資格が取り消された後もそのまま残った場合は、入管法70条1項3号・3号の2・3号の3の刑事罰の問題になります。取消しの通知を受け取った段階は、まだ選択肢が残っている段階です。

在留期限を過ぎてしまうと、どのような責任が生じますか

責任は、刑事の責任と行政上の手続の二本立てになります。

刑事の面では、入管法70条1項5号が、在留期間の更新または変更を受けないで在留期間を経過して本邦に残留する者を処罰の対象としています。法定刑は同項の柱書により、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはこれらの併科です。オーバーステイは、単なる手続の遅れではなく、犯罪として扱われる行為です。

行政の面では、入管法24条4号ロにより、在留期間を経過して残留する方は退去強制事由に該当します。手続は、入国警備官による違反調査に始まり、収容令書による収容または監理措置の決定、入国審査官の違反審査と認定、口頭審理の請求と特別審理官の判定、法務大臣への異議の申出と裁決の順に進みます。この流れのどこにいるかで、取りうる手段が変わります。

離婚・死別のあと、「定住者」への在留資格変更はできますか

在留期限が残っている間であれば、入管法20条による在留資格変更の許可を申請する道があります。日本での生活の基盤が定着しており、日本国籍または在留資格を有するお子さんを現実に監護し養育しているといった事情がある場合には、「定住者」への変更が検討されることがあります。もっとも、変更を許可するかどうかは法務大臣の裁量にゆだねられており、結果は個別の事情によって異なります。必ず認められると申し上げることはできません。

注意していただきたいのは、在留期限を過ぎてしまった後は、この在留資格変更の申請という道が使えなくなるという点です。期限を過ぎた後は、退去強制手続の中で在留特別許可を求める形になります。同じ「日本で子どもを育てたい」という願いでも、期限内かどうかで、通る道の険しさがまったく違います。

日本で育っているお子さんがいることは、在留特別許可で考慮されますか

考慮されます。入管法50条5項は、法務大臣が考慮すべき事情を法律で定めており、在留を希望する理由、家族関係、素行、本邦に入国することとなった経緯、本邦に在留している期間、その間の法的地位、退去強制の理由となった事実、人道上の配慮の必要性が挙げられています。これに加え、内外の諸情勢および本邦における不法滞在者に与える影響その他の事情も考慮されます。日本で生まれ育ち、日本語で学校に通うお子さんを養育しているという事情は、家族関係と人道上の配慮の必要性の双方にかかわります。

根拠は入管法50条1項で、多くの事案は同項5号(その他法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき)に位置づけられます。同項ただし書は、無期または1年を超える拘禁刑に処せられた方などについて、在留を許可しないことが人道上の配慮に欠けると認められる特別の事情があると認めるときに限る、という重い要件を課しています。もっとも、24条4号ロだけに該当する不法残留のみの事案は、このただし書の対象ではありません。これは有利な出発点です。反対に、実刑1年を超える判決を受けると加重要件がかかり、見通しは大きく厳しくなります。

申請は、収容令書により収容された方または監理措置決定を受けた方が行うことができ(50条2項)、それ以前は職権の発動を求める活動になります。退去強制令書が発付された後は申請できません(同条3項)。許可しない処分をするときは、理由を付した書面で知らされます(同条10項)。動ける時期が法律で区切られている、ということです。

出国命令で帰国した場合、次に日本へ来られるのはいつからですか

出国命令によって出国した方は、入管法5条1項9号ホにより、出国した日から1年間は上陸を拒否されます。出国命令は、収容を前提としない簡易な手続で、主任審査官が15日を超えない範囲内で出国期限を定めます(55条の85第1項)。

ただし、出国命令を利用するには、入管法24条の3の5つの要件をすべて満たす必要があります。

  • 違反調査の開始前に自ら出頭したこと(1号イ)、または開始後、47条3項の通知を受ける前に出国の意思を表明したこと(1号ロ)
  • 24条3号から3号の5まで、4号ハからヨまで、8号または9号のいずれにも該当しないこと
  • 入国後に、同条が列挙する刑法犯等により拘禁刑に処せられていないこと
  • 過去に退去強制されたことも、出国命令により出国したこともないこと
  • 速やかに出国することが確実と見込まれること

要件を欠いて退去強制となった場合、上陸拒否期間は、それまでに退去強制歴や出国命令歴のない方で退去の日から5年(5条1項9号ハ)、すでにそうした前歴のある方で10年(同号ニ)となります。

摘発される前に、自ら動くことの意味

離婚や死別は、戸籍や住民票、扶養者の勤務先の記録など、外から確認できる形で残ります。「気づかれないだろう」という前提は、家族滞在の事案では特に成り立ちません。動く順番が、結果を分けます。

入管法24条の3第1号イは、27条の規定による違反調査の開始前に、速やかに出国する意思をもって自ら出入国在留管理官署に出頭した方を出国命令の対象としています。この場合、出国後の上陸拒否期間は1年です(5条1項9号ホ)。これに対し、違反調査が始まった後に出国の意思を表明した場合(同号ロ)は、その後に短期滞在の活動を行おうとするときの上陸拒否期間が5年になります(5条1項9号ヘ)。同じ「帰国する」でも、動いた時点が違うだけで、再び日本の家族に会いに来られる時期が変わります。

在留特別許可を求める場合も同じです。在留特別許可に係るガイドライン(令和6年3月改定、同年6月10日施行)は、在留特別許可を例外的・恩恵的な措置と位置づけたうえで、不法滞在を申告するため自ら地方出入国在留管理官署に出頭したことを積極要素として考慮すると明記しています。他方、不法滞在の長期化は消極要素として評価されます。時間は、こちらの味方ではありません。

当事務所のご案内

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としています。担当するのは松村大介弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号59077、2019年登録)です。

当事務所では、接見の初動から公判の結審まで、松村弁護士が全工程を直接担当します。事務員や若手弁護士に代行させることはありません。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を利用していただけます。刑事手続が終わった後の在留資格の更新や変更については、提携の行政書士とワンストップで対応します。

家族滞在からのオーバーステイに近い解決事例として、次のものがあります。

事例1 観光目的で来日された方が日本人女性との間にお子さんを授かったものの、在留資格を失い、不法滞在で逮捕・起訴された事案です。婚姻と認知の手続が未了で当局から一旦不受理とされましたが、憲法的な観点から交渉して手続を成立させ、公的書類が乏しい状況でも有利な証拠を集め、1回の手続で在留特別許可を得ました。

事例2 不法就労助長罪に問われ、強制退去の危機に瀕した女性の事案です。退去強制事由には故意・過失が不要とする従来の実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を提起して上訴審まで争いました。その後、入管から在留特別許可が認められています。

初回のご相談は無料です。費用は事案に応じてお見積りいたします。まだ在留期限が残っている段階のご相談も、期限を過ぎてしまってからのご相談も、どちらもお受けしています。

おわりに

扶養者を失った後の在留の問題は、ご本人の努力の問題ではなく、制度の設計上、必ず期限が迫ってくる問題です。在留資格変更が使えるのか、出国命令が使えるのか、在留特別許可を求めるのかは、いまどの段階にいるかで決まります。判断を先延ばしにするほど、選べる道は狭くなります。

本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではありません。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。

覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

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ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

微信ID:matsumura1119

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