舟渡国際法律事務所

通訳の質が結論を変える|捜査機関の通訳と、あなたのための通訳

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通訳の質が結論を変える|捜査機関の通訳と、あなたのための通訳

通訳の質が結論を変える|捜査機関の通訳と、あなたのための通訳

2026/08/27

在留期限を過ぎたまま日本で暮らしていて、ある日、警察官や入国警備官から事情を聞かれる。あるいは自ら入管に出頭して、担当官の前に座る。そのとき、あなたと日本の役所との間には、必ず通訳人が入ります。手続はすべて日本語で行われ、あなたの言葉は日本語に置き換えられて、書面として残ります。

この置き換えは、思っているよりも結論に影響します。誰かに悪意があるという話ではありません。その通訳人が誰に依頼され、どの立場でその席に座っているかによって、担っている役割がそもそも違う。この構造を知っておくことが、あなた自身を守ることにつながります。

捜査機関が呼んだ通訳人は、私の味方ではないのですか

味方でも敵でもありません。捜査機関や入管が手配する通訳人は、手続を成り立たせるために、中立の立場で言葉を移す役割を担っています。その仕事ぶりを疑うべきだという話ではなく、立場が違うというだけのことです。

中立である以上、あなたに有利な事情を引き出すために質問を足すことも、言い足りない部分を補うことも、取調べの前後に二人で背景の事情を聞き取ることもできません。これは通訳人の落ち度ではありません。しかし結果として、その場に、あなたのために動く立場の人が誰もいないという状態が生まれます。

供述調書は、私が話したとおりに書かれるのですか

そのままではありません。供述調書は録音ではなく、取調官があなたの話を聞いたうえで日本語の文章にまとめた書面です。通訳を介すると、母語から日本語へ、読み聞かせのときに日本語から母語へと、二度の変換が入ります。

変換のたびに落ちやすいのは、留保の表現です。「たぶんそうだったと思う」「はっきりは覚えていない」といった言い回しが、書面になる過程で「そうです」「間違いありません」に近づきます。逆に、強く否定したつもりの部分が穏やかな表現に整えられることもあります。悪意がなくても、言語をまたぐ以上、こうしたずれは構造的に生じます。

オーバーステイの事件で、通訳のずれはどこに出ますか

主に四点です。在留期限が切れていることをいつ知ったか、なぜ日本に残ったか、その間に働いていたか、そして出国の意思をいつ表明したか。いずれも後の処分を左右する部分です。

不法残留は入管法70条1項5号の犯罪で、法定刑は3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金、又はその併科です。「更新できると思っていた」という説明が、調書の上で「期限が切れていることは分かっていました」の一文に丸められてしまえば、後から取り戻すのは容易ではありません。また、在留資格で認められない活動を専ら行っていた場合は70条1項4号の資格外活動、退去強制事由としては24条4号イの問題になります。単発の手伝いだったのか継続的な就労だったのかは、母語では区別して話していても、日本語の書面では同じ言葉に収まってしまいがちです。

入管の事情聴取でも同じことが起きますか

起きます。むしろ入管手続のほうが、記録の影響は長く残ります。

退去強制手続は、違反調査(入管法27条以下)に始まり、収容令書(39条)または監理措置決定(44条の2第7項)を経て、違反審査(45条以下)、認定(47条3項)へ進み、不服があれば口頭審理の請求(48条)、特別審理官の判定(48条8項)、法務大臣への異議の申出(49条)へと続きます。そして在留特別許可の判断は、50条5項が定める考慮事情、すなわち在留を希望する理由、家族関係、素行、本邦に入国することとなった経緯、本邦に在留している期間、その間の法的地位、退去強制の理由となった事実、人道上の配慮の必要性に加え、内外の諸情勢及び本邦における不法滞在者に与える影響その他の事情を踏まえて行われます。その多くは、あなた自身の説明を基礎資料としています。

調書に署名する前に、何を確認すればよいですか

読み聞かせの内容が自分の言ったことと違うと感じたら、その場で訂正を求めてください。署名を急ぐ必要はありません。

特に、日付と期間(いつ来日し、いつ在留期限が切れたか)、認識に関する表現(「知っていた」「分かっていた」)、就労に関する表現(回数・期間・金銭の受け取り方)の三点は丁寧に確認してください。意味の分からない日本語の言い回しがあれば説明を求め、分からないまま署名しない。それだけでも、後の手続はずいぶん違ってきます。

弁護人が同行する通訳は、何が違うのですか

依頼者本人のために動く立場だという点が違います。弁護人と依頼者のやりとりは外に出ることを前提としていないため、言いにくい事情や家族の事情まで含めて、時間をかけて話すことができます。

これは安心感だけの問題ではありません。50条5項の考慮事情を組み立てる素材は、日本にいる家族との関係、帰国した場合に生じる具体的な支障、これまでの生活の実態など、依頼者ご本人の生活の中にあります。短い取調べの質問に答えるだけでは出てきません。当事務所が、捜査機関の指定する通訳とは別に、依頼者のために動く立場の通訳を確保することを重視しているのは、このためです。

摘発される前に、自ら動くことに、どんな意味がありますか

言葉の面から見ても、自ら出頭する場面は、準備した説明を準備した順序で伝えられる、ほとんど唯一の機会です。突然の摘発では、それができません。

制度の上でも差が生まれます。出国命令(入管法24条の3)を使うには五つの要件をすべて満たす必要があり、その1号は、イとして違反調査の開始前に速やかに出国する意思をもって自ら出入国在留管理官署に出頭した者、ロとして違反調査の開始後、47条3項の通知を受ける前に入国審査官又は入国警備官に対して速やかに出国する意思がある旨を表明した者を定めます。ほかに、24条3号から3号の5まで・4号ハからヨまで・8号又は9号のいずれにも該当しないこと、入国後に住居侵入、文書偽造、賭博、殺人、傷害、窃盗強盗、詐欺恐喝その他所定の罪により拘禁刑に処せられていないこと、退去強制歴も出国命令による出国歴もないこと、速やかに出国することが確実と見込まれることが必要です。出国期限は15日を超えない範囲内で定められます(55条の85第1項)。

この違いは、次に日本へ来られる時期に直結します。出国命令により出国した者の上陸拒否期間は出国の日から1年(5条1項9号ホ)。これに対し、24条の3第1号ロに当たる方が、その後に短期滞在の活動を行おうとする場合は5年(同号ヘ)。要件を欠いて退去強制となれば退去の日から5年(同号ハ)、退去強制歴・出国命令歴があれば10年(同号ニ)です。

在留特別許可でも同じです。令和6年3月改定・同年6月10日施行のガイドラインは、在留特別許可を例外的・恩恵的な措置と位置づけたうえで、不法滞在を申告するため自ら地方出入国在留管理官署に出頭したことを積極要素として考慮すると明記し、他方で不法滞在の長期化を消極要素とします。なお在特の申請は、収容令書により収容された外国人又は監理措置決定を受けた外国人が行うものとされ(50条2項)、退去強制令書が発付された後は申請できません(50条3項)。動ける時期には限りがあります。

当事務所のご案内

舟渡国際法律事務所は、東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階にあり、松村大介弁護士が、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としています。

当事務所では、接見の初動から公判の結審まで、松村弁護士が全工程を直接担当します。事務員や若手弁護士が代わりに対応することはありません。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者本人のために動く立場の通訳を利用していただけます。刑事手続の後の在留資格の更新・変更等は、提携の行政書士とワンストップで対応します。

事例D-2/冤罪により不法就労助長罪に問われ、強制退去の危機に瀕した女性の事案です。退去強制事由には故意・過失が不要とする従来の実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を提起して上訴審まで争いました。その後、入管から在留特別許可が認められました。

事例D-1/観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの、在留資格を喪失し、不法滞在で逮捕・起訴された事案です。婚姻・認知の手続が未了で一旦不受理とされたところ、憲法的観点から当局と交渉して婚姻・認知を成立させ、有利な証拠を集めたうえ、過去の許可事例を分析することで、1回の手続で在留特別許可を獲得しています。

初回のご相談は無料です。費用は事案に応じてお見積りいたします。まだ何も決めていない段階でも、事実関係を整理し、選べる道筋を確認しておくことには意味があります。

おわりに

通訳の問題は、誰かを責めることでは解決しません。捜査機関の通訳人は中立の立場で職務を果たしているのであり、あなたのために動く役割は、もともとその場に用意されていないというだけのことです。だからこそ、あなたの側に立つ人を、早い段階でご自身で確保する必要があります。

本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではありません。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。

覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

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ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

微信ID:matsumura1119

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