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不許可の「理由」をどう次の一手に変えるか|入管法50条10項の理由付記

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不許可の「理由」をどう次の一手に変えるか|入管法50条10項の理由付記

不許可の「理由」をどう次の一手に変えるか|入管法50条10項の理由付記

2026/08/27

在留期限を過ぎたまま日本で暮らし、退去強制の手続の中で在留特別許可を求めたけれども、認められなかった。そうした書面を受け取ると、頭の中が真っ白になってしまう方がほとんどです。何が足りなかったのか、これからどうなるのか、まだ日本にいられるのか。ただ、その書面は「認められませんでした」とだけ伝える紙ではありません。入管法50条10項は、在留特別許可をしない処分をするときは、速やかに理由を付した書面をもって知らせなければならないと定めています。理由が書かれているということは、次の一手を組み立てる手がかりが、そこに残されているということです。

在留特別許可が認められなかったとき、理由は教えてもらえますか

はい。入管法50条10項により、不許可の判断は、窓口での口頭の説明で済まされるものではなく、理由を記載した書面という形で示されます。

まず確かめていただきたいのは、その書面がどの段階で出てきたのか、という点です。入管法50条4項により、在留特別許可は、47条3項の認定・48条8項の判定に服し、又は法務大臣が異議の申出に理由がないと裁決した後でなければすることができません。50条2項により、申請ができるのは、収容令書により収容された外国人又は監理措置決定を受けた外国人です。そして50条3項により、退去強制令書が発付された後は申請することができません。いま自分が手続のどの位置にいるのかを取り違えると、次の一手そのものを間違えてしまいます。

行政の処分に理由を書かせるのは、そもそも何のためですか

一般に、二つの意味があると説明されています。第一に、判断する側に慎重で合理的な検討を促し、恣意的な判断を抑えること。第二に、処分を受けた側に、どこを争えばよいのかという手がかりを与えることです。そのため理由は、どのような事実を前提に、どの事情をどう評価して結論に至ったのかが相手方に分かる程度に示されている必要があると考えられています。

在留特別許可は、ガイドライン上、退去を強制されるべき外国人に対する例外的・恩恵的な措置と位置づけられています。もっとも、恩恵的な措置だからといって理由を示さなくてよいことにはなりません。加えて50条5項が考慮すべき事情を法律上明示したことにより、どの事情をどう評価したのかを、書面の記載に即して検証できる構造になっています。

理由を付した書面には何が書かれていて、どこから読み解けばよいですか

多くの場合、入管法50条5項が挙げる考慮事情に沿って有利な事情と不利な事情が並べられ、総合的に考慮した結果として不許可の結論が示されます。50条5項が挙げるのは、在留を希望する理由、家族関係、素行、本邦に入国することとなった経緯、本邦に在留している期間、その間の法的地位、退去強制の理由となった事実、人道上の配慮の必要性であり、このほか内外の諸情勢及び本邦における不法滞在者に与える影響その他の事情も考慮されます。評価の考え方は、在留特別許可に係るガイドライン(令和6年3月改定、令和6年6月10日施行)に示されており、不法滞在を申告するため自ら地方出入国在留管理官署に出頭したことは積極要素として、不法滞在の長期化は消極要素として扱われます。

読むときは、記載を三つの層に分けてください。第一は前提とされた事実、第二はその事実に与えられた評価、第三は積極要素と消極要素の全体の重み付けです。第一の層に誤りや漏れがあれば資料で正す余地があり、第二の層が問題なら生活の実態を示す資料を厚くする必要があります。不法残留(24条4号ロ)のみの事案では、入国の経緯・在留期間・退去強制の理由となった事実はほとんど争いようがない一方、家族関係・素行・人道上の配慮の必要性は、提出する資料によって見え方が大きく変わります。

不許可の理由書を受け取った後、まだできることはありますか

あります。ただし、手続のどの段階にいるかによって、できることが変わります。

  • 入国審査官の認定(47条3項)に不服があれば口頭審理の請求(48条)、特別審理官の判定(48条8項)に不服があれば法務大臣への異議の申出(49条)ができます。
  • 異議に理由がないと裁決され、退去強制令書が発付された(51条)後は、50条3項により申請はできません。この段階では、退去強制令書発付処分の取消訴訟と、執行停止の申立てという司法救済に移ります。
  • 婚姻、認知、子の出生、治療を要する病気の判明など、判断の後に事情が変わった場合は、その資料を提出して職権による判断を求める活動が考えられます。
  • いったん出国し、上陸拒否期間の経過後に正規の在留資格で来日し直すという設計も、現実的な選択肢のひとつです。

理由書は、次の申請や訴訟でどう使うのですか

争点を特定するための地図として使います。消極的に評価された点が分かれば資料を集める方向を絞れますし、50条5項の考慮事情それぞれに対応する資料を割り当てて組み立て直すこともできます。入管庁が公表している許可事例・不許可事例と自分の事案を並べて検討する際の出発点にもなります。訴訟になれば、その書面の記載自体が、判断の基礎とされた事実と評価を示す資料になります。

あわせて、刑事処分との関係を必ず見てください。50条1項ただし書は、無期若しくは1年を超える拘禁刑に処せられた者(刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者、及び一部猶予で実刑部分が1年以下の者を除く)などについて、在留を許可しないことが人道上の配慮に欠けると認められる特別の事情があると認めるときに限る、という加重要件を定めています。不法残留(24条4号ロ)のみの事案は、このただし書の対象ではありません。これは有利な事情です。逆に1年を超える実刑となれば、見通しは大きく厳しくなります。なお、執行猶予が付けば大丈夫だという理解は誤りです。24条4号リには執行猶予の除外規定がありますが、不法残留はもともと24条4号ロによって退去強制事由に該当しているからです。

摘発される前に、自ら動くことの意味

理由付記の書面を読む局面に至る前に、実は結果の枠組みの多くが決まっています。分かれ道は、摘発を受けたのか、自ら出頭したのかという一点です。

入管法24条の3の出国命令は、5つの要件をすべて満たす場合に使えます。その第1号イは、27条の規定による違反調査の開始前に、速やかに出国する意思をもって自ら出入国在留管理官署に出頭した者です。この形で出国命令により出国した場合、上陸拒否期間は出国した日から1年です(5条1項9号ホ)。これに対し、違反調査が始まった後、47条3項の通知を受ける前に出国意思を表明した場合(同条第1号ロ)は、その後に短期滞在の活動を行おうとするときの上陸拒否期間が5年になります(5条1項9号ヘ)。摘発により24条の3の要件を欠けば出国命令自体が使えず、退去強制歴・出国命令歴がなければ退去の日から5年(5条1項9号ハ)、既にあれば10年(同号ニ)です。ガイドラインが自ら出頭したことを積極要素と明記していることと併せて考えれば、理由書を有利に書かせる最大の準備は、その前の段階の動き方にあると言えます。

当事務所のご案内

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としています。担当するのは松村大介弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号59077、2019年登録)です。接見の初動から公判の結審まで松村弁護士が全工程を直接担当し、事務員や若手弁護士に代行させることはありません。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳をご利用いただけます。刑事手続の後の在留資格の更新・変更等は、提携の行政書士とワンストップで対応します。

解決事例をご紹介します。ひとつは、難関とされた在留特別許可を1回の手続で獲得した事例です。観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの在留資格を失い、不法滞在で逮捕・起訴されました。婚姻と認知が未了で当局から一旦不受理とされたところ、憲法的な観点から交渉して婚姻・認知を実現させ、公的書類がほとんど存在しない状況でも有利な証拠を集め、過去の許可事例を分析して許可を得ています。

もうひとつは、不法就労助長の疑いをかけられ強制退去の危機に瀕した女性の事例です。冤罪でありながら罪に問われた事案で、退去強制事由には故意・過失が不要とする従来の実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を提起して上訴審まで争いました。その後、入管から在留特別許可が認められています。

初回のご相談は無料です。費用は事案に応じてお見積りいたします。不許可の理由書をお持ちであれば、その書面を拝見して、次に何ができるかを一緒に検討できます。

最後に

不許可の理由書は、終わりを告げる紙ではなく、次に何を示せばよいかを教えてくれる資料でもあります。ただし、できることは段階によって変わり、退去強制令書が発付されてしまえば50条3項により申請の道は閉じます。書面を受け取ったら、できるだけ早く、手続のどの位置にいるのかを確認してください。

本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、ご紹介した過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではありません。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。

覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

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ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

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