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摘発されてから結婚しても遅いのか|公表事例が示す評価の厳しさ

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摘発されてから結婚しても遅いのか|公表事例が示す評価の厳しさ

摘発されてから結婚しても遅いのか|公表事例が示す評価の厳しさ

2026/08/27

在留期限を過ぎたまま日本で暮らしているうちに、大切な人と出会った。結婚を考えていた矢先に入管や警察に身柄を押さえられ、あわてて婚姻届の準備を始めた。あるいは、収容されてから初めて婚姻の手続に動いた。そうしたご相談は、決して珍しいものではありません。ご本人にもご家族にも、事情があります。ただ、入管の判断の場面では「結婚したかどうか」よりも「結婚の実体がいつから、どのように積み上がっていたか」が問われます。ここを取り違えると、せっかくの努力が評価に結びつきません。この記事では、摘発後の婚姻がどう見られるのかを、条文と公表されている事例の傾向に沿って整理します。

摘発されてから結婚した場合、在留特別許可はもう認められないのですか

「もう認められない」と法律で決まっているわけではありません。ただし、婚姻届という形だけを後から整えても、それだけで在留特別許可(入管法50条)に結びつくとは限りません。入管法50条5項は、判断にあたって考慮する事情として、在留を希望する理由、家族関係、素行、本邦に入国することとなった経緯、本邦に在留している期間、その間の法的地位、退去強制の理由となった事実、人道上の配慮の必要性を挙げ、さらに内外の諸情勢及び本邦における不法滞在者に与える影響その他の事情を考慮すると定めています。婚姻はこのうち「家族関係」という一つの要素であって、それ単独で結論が決まる仕組みにはなっていません。

また、在留特別許可に係るガイドライン(令和6年3月改定、令和6年6月10日施行)は、在留特別許可を「本邦からの退去を強制されるべき外国人に対して例外的・恩恵的に行われる措置」と位置づけています。例外的な措置である以上、形式が整ったことではなく、退去を求めないだけの実質があるかどうかが見られます。

入管は婚姻の「何」を見ているのですか

届出がされたという事実そのものよりも、婚姻の実体です。具体的には、同居しているか、同居がいつから続いているか、生計を一つにしているか、日常的な交流が途切れずに続いてきたか、周囲の人がその関係を認識しているか、子がいる場合には認知や養育が現実に行われているか、といった点です。

公表されている事例集を個別の事件としてではなく類型として読むと、婚姻の届出はされているものの、同居の実態や関係の継続性に疑義があるとされた事案では、消極的な評価がされている例が見られます。逆に、長期にわたり生活をともにし、周囲にも関係が知られ、子の養育が現実に行われている事案では、家族関係が積極的に評価されている例が見られます。書面の枚数ではなく、生活の中身が判断を分けています。

収容されてから婚姻届を出した場合、どのように評価されますか

婚姻が成立した時期そのものが法律上の失格事由になるわけではありません。しかし、退去強制手続が始まってから、あるいは身柄を拘束されてから婚姻が成立した事案は、実体の積み上げが乏しいまま判断の時期を迎えることが多く、その分だけ評価は厳しくなりがちです。手続の進行に合わせて形が整えられたのではないか、という見方をされやすい局面だからです。

入管法50条5項が、個別の事情に加えて「本邦における不法滞在者に与える影響」まで考慮事情として明記していることも、この場面では意識せざるを得ません。手続が始まってから婚姻の形だけを整えれば在留が認められる、という運用にはなりにくい、ということです。もっとも、これは「収容後の婚姻は無意味」という意味ではありません。婚姻に至る以前から関係が継続していたことを、時系列に沿って具体的に示せるかどうかが分かれ目になります。

同居していなかった期間があると不利になりますか

同居していない期間があること自体が、直ちに不利と決まるわけではありません。ただし、その期間について合理的な説明が必要になります。就労先との距離、住居の事情、家族の看護や出産など、別居に理由がある例は現実に多くあります。

大切なのは、別居していた期間にも関係が実際に続いていたことを示せるかどうかです。連絡の記録、行き来の事実、経済的な支えの実績、写真などが、ある時期に固まってではなく期間全体に分散して存在しているかが見られます。資料が特定の短い時期にだけ集中している場合、関係の継続性そのものに疑いを持たれる原因になります。

婚姻の実体を裏づける資料には、どのようなものがありますか

次のようなものが考えられます。いずれも、量ではなく、時系列としての一貫性が意味を持ちます。

  • 同居を示すもの(住民票の記載、賃貸借契約、公共料金の名義や送付先など)
  • 生計が一つであることを示すもの(送金や生活費の負担の記録、家計の実情を説明する資料)
  • 交流の継続を示すもの(長期間にわたる通信の記録、時期の分散した写真)
  • 周囲の認識を示すもの(親族、勤務先、近隣の方などによる具体的な陳述書)
  • 子がいる場合の資料(認知や出生に関する書類、監護養育の実情を示すもの)

陳述書は、抽象的に「仲が良い」と述べるものではなく、いつ、どこで、誰が、何を見たのかが分かる内容にすることが重要です。

在留特別許可の申請は、いつからできるのですか

入管法50条2項は、在留特別許可の申請は、収容令書により収容された外国人又は監理措置決定を受けた外国人が、法務省令で定める手続により法務大臣に対して行うと定めています。つまり、申請という形をとれるのは、収容令書による収容か監理措置決定を受けた後です。それ以前の段階は、申請ではなく、職権の発動を求める活動になります。

他方で、入管法50条3項は、退去強制令書が発付された後は申請することができないと定めています。判断の時期についても、同条4項が、入国審査官の認定(47条3項)や特別審理官の判定(48条8項)に服した場合、又は法務大臣が異議の申出に理由がないと裁決した後でなければ在留特別許可をすることができないと定めています。資料を整える時間は無限にあるわけではなく、手続の進行に区切られているのです。なお、在留特別許可をしない処分をするときは、速やかに理由を付した書面をもって知らせなければならないとされています(同条10項)。

刑事事件の結果は、婚姻がある場合の在留にどう影響しますか

不法残留は、行政上の問題にとどまらず犯罪です。入管法70条1項5号は、在留期間の更新又は変更を受けないで在留期間を経過して本邦に残留する者を処罰の対象とし、法定刑は3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金、又はその併科です。

そのうえで、刑事処分の軽重と、在留を続けられるかどうかは別の問題です。刑事事件で不起訴や執行猶予となっても、入管法24条4号ロにより退去強制事由には該当したままであり、退去強制手続は進みます。「執行猶予が付いたから大丈夫」というのは誤りです。

逆に、刑が重くなると在留特別許可の要件が加重されます。入管法50条1項ただし書は、無期若しくは1年を超える拘禁刑に処せられた者(刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者、及び一部猶予でその執行が猶予されなかった部分の期間が1年以下の者を除く)などについては、本邦への在留を許可しないことが人道上の配慮に欠けると認められる特別の事情があると認めるときに限る、としています。不法残留(24条4号ロ)のみの事案は、このただし書の加重要件の対象ではありません。これは重要な有利事情です。ただし、実刑で1年を超える結果になれば、この加重要件がかかってきます。

ですから、刑事処分を軽くするための活動と、在留特別許可を得るための活動は、初動から一体で設計する必要があります。婚姻の実体に関する資料は、刑事手続における情状の資料としても、在留特別許可の判断資料としても働きます。

摘発される前に、自ら動くことの意味

結婚を考えている段階にある方にこそ、この点を知っておいていただきたいと思います。自ら出頭するか、摘発されるかで、法律上の帰結が具体的に変わるからです。

入管法24条の3は出国命令の対象を定めており、第1号イは、27条の規定による違反調査の開始前に、速やかに本邦から出国する意思をもって自ら出入国在留管理官署に出頭した者を挙げています。この経路で出国命令により出国した場合、上陸拒否期間は出国した日から1年です(入管法5条1項9号ホ)。これに対し、違反調査が始まった後に、47条3項の通知を受ける前に出国の意思を表明した場合(同条第1号ロ)は、出国命令で出国しても、その後に短期滞在の活動を行おうとするときの上陸拒否期間は出国した日から5年となります(同項9号ヘ)。

さらに、摘発の結果、24条の3の第2号から第4号までの要件(一定の退去強制事由に該当しないこと、一定の罪により拘禁刑に処せられていないこと、過去に退去強制歴・出国命令歴がないこと)を欠くと、出国命令自体が使えません。その場合は退去強制となり、上陸拒否期間は退去の日から5年(5条1項9号ハ)、以前にも退去強制歴等があれば10年(同号ニ)となります。

加えて、在留特別許可に係るガイドラインは、不法滞在を申告するため自ら地方出入国在留管理官署に出頭したことを積極要素として考慮すると明記しています。他方、不法滞在の長期化は消極要素として評価されます。婚姻の実体を積み上げる時間と、出頭申告が積極要素として働く時間は、どちらも待っているだけでは増えません。むしろ、待つほど長期化の消極評価だけが積み重なっていきます。

当事務所のご案内

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としています。担当は松村大介弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号59077、2019年登録)です。

体制の特徴は三つあります。第一に、接見の初動から公判の結審まで、松村弁護士が全工程を直接担当します。事務員や若手弁護士による代行は行いません。第二に、外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しています。捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を利用できます。第三に、刑事手続が終わった後の在留資格の更新や変更については、提携の行政書士とワンストップで対応します。

婚姻と在留が絡む事案では、次のような解決実績があります。

観光目的で来日した方が日本人女性との間に子を授かったものの、在留資格を失い、不法滞在で逮捕・起訴された事案です。婚姻と認知の手続が未了であったため当局から一旦は受理されませんでしたが、憲法的な観点から当局と交渉して婚姻と認知を成立させ、刑事裁判を意識した被告人質問と証人尋問を行いました。国籍国発行の公的書類がほとんど存在しない状況でも有利な証拠を集め、入管当局の過去の許可事例を分析することで、1回の手続で在留特別許可を得ています。

また、冤罪により不法就労助長罪に問われ、強制退去の危機に瀕した女性の事案では、退去強制事由には故意・過失が不要とする従来の実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を提起して上訴審まで争いました。その後、入管から在留特別許可が認められています。

初回のご相談は無料です。費用は事案に応じてお見積りいたします。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご相談も承ります。

結語

摘発されてから結婚したからといって、道が閉ざされるわけではありません。しかし、婚姻の実体は後から短時間で作れるものではなく、判断の時期は手続によって区切られています。だからこそ、結婚を考えている段階、迷っている段階で、法的な見通しを立てておくことに意味があります。

本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではありません。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。

覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

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ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

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