舟渡国際法律事務所

中国人の万引き・窃盗事件|示談で不起訴になりますか、在留資格は更新できますか

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中国人の万引き・窃盗事件|示談で不起訴になりますか、在留資格は更新できますか

中国人の万引き・窃盗事件|示談で不起訴になりますか、在留資格は更新できますか

2026/09/05

店の商品を持ったまま外に出てしまった。急いでいて会計を忘れた。置いてあった荷物を自分のものと思い込んだ。ご本人にとっては一瞬の出来事でも、日本ではその場で現行犯逮捕され、そのまま20日以上にわたって身柄を拘束されることがあります。中国のご家族からご覧になれば、数百円の菓子でなぜ人が留置場に入るのかは理解しがたいはずです。しかし外国人の事件では、本当の問題は刑罰の重さではありません。窃盗は、在留資格の種類によっては執行猶予がついても日本を離れなければならない類型に含まれているからです。

本記事の要点

  • 万引きは窃盗罪(刑法235条)であり、被害額が数百円でも現行犯逮捕され、勾留されることがあります。
  • 起訴するか不起訴にするかの判断は原則として逮捕から23日以内に行われるため、示談と被害弁償はこの期間内に間に合わせる必要があります。
  • 留学・技術・人文知識・国際業務・家族滞在等の別表第一の在留資格では、窃盗により拘禁刑に処せられると、執行猶予がついても退去強制事由(入管法24条4号の2)に該当します。
  • 永住者・定住者・日本人の配偶者等の別表第二は同号の対象外で、1年を超える実刑(同条4号リ)でなければ該当しません。
  • 罰金や起訴猶予で終わっても在留期間更新の審査では素行として考慮されるため、当事務所は起訴前の不起訴処分の獲得を最優先の目標に置いています。

少額の万引きでも、本当に逮捕されますか

逮捕されます。被害額の大小は、逮捕するかどうかを決める要素の一つにすぎません。日本の窃盗罪は刑法235条に定められ、法定刑は10年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金です。金額が小さければ罰金や不起訴に向かいやすいという傾向はありますが、それは処分の段階の話であって、その場で身柄を取られない理由にはなりません。

報道された例で申し上げます。2026年5月、札幌市内の土産物店で752円の菓子1箱を会計せずに退店したとして、中国籍の女性が警備員に確保され現行犯逮捕されたと報じられました。所持金は十分にあったとされています。他方、2025年には、茨城県内の畑からキャベツ8個を持ち去ったとして逮捕された中国籍の男性2人について、水戸地検下妻支部が不起訴としたことが報じられています。金額が小さくても逮捕され、しかし最終的な処分は別途判断される。この二つの報道は、日本の刑事手続の性格をよく表しています。

示談ができれば不起訴になりますか

示談と被害弁償は不起訴の判断に強く影響しますが、示談さえ成立すれば必ず不起訴になるというものではありません。検察官は、犯情、常習性、被害の回復、前科前歴、生活状況を総合して起訴するかどうかを決めます(起訴便宜主義。刑事訴訟法248条)。

数字で見ると、法務省『令和7年版犯罪白書』では、令和6年の来日外国人被疑事件の起訴猶予率は48.35%です。約半数が起訴猶予、すなわち不起訴で終わっています。ただし窃盗に限ると起訴率は52.53%で、日本人を含む全体の44.84%を7.7ポイント上回ります。窃盗は、外国人の事件では相対的に起訴されやすい罪名だという前提で組み立てる必要があります。

ここで壁になるのが送金です。中国のご家族から示談金を送る手続には日数がかかり、23日という期限の中では余裕がありません。当事務所では、受任した時点で送金経路と必要書類を先にお伝えし、示談交渉と並行して準備していただくようにしています。外国人の窃盗・万引き事件の考え方は別のページにもまとめています。

窃盗で有罪になると、在留資格はどうなりますか

在留資格が別表第一か別表第二かで、結論が正反対になります。ここを取り違えたまま執行猶予を目標に弁護活動を進めると、判決の日に在留を失うことになりかねません。

入管法24条4号の2は、別表第一の在留資格をもって在留する者が、刑法第36章(窃盗及び強盗の罪)、第37章(詐欺及び恐喝の罪)、第12章(住居を侵す罪)、第17章(文書偽造の罪)等の列挙された罪により拘禁刑に処せられたときを、退去強制事由と定めています。この号には執行猶予を除く旨の定めがありません。つまり、執行猶予付きの判決であっても該当します。留学、技術・人文知識・国際業務、技能実習、特定技能、家族滞在、経営・管理は、いずれも別表第一です。

これに対し同条4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としますが、ただし書により全部執行猶予の場合は除かれます。こちらは在留資格の種類を問わず、永住者にも適用されます。

処分・判決別表第一(留学・技人国・家族滞在等)別表第二(永住者・定住者・日本人の配偶者等)
不起訴(起訴猶予・嫌疑不十分)退去強制事由に該当しない該当しない
罰金該当しない。更新の素行審査では不利に働き得る該当しない
拘禁刑・全部執行猶予4号の2に該当(退去強制手続の対象)該当しない
実刑・1年以下4号の2に該当該当しない(4号リは1年を超えることが要件)
実刑・1年を超える4号の2及び4号リに該当4号リに該当

もっとも、刑事事件を起こせば直ちに送還されるというのも正確ではありません。出入国管理統計によれば、令和7年の退去強制令書発付7,722人のうち、単独の事由としての4号の2は49人(うち中国15人)、4号リは41人(同11人)にとどまり、圧倒的多数は不法残留の4号ロ(5,778人)です。ただし中国籍については、退令発付686人のうち4号リが単独11人と不法残留との並立36人の計47人(6.9%)を占め、ベトナムの2.3%の約3倍にあたります。国籍によって様相が異なる点は正確に見ておく必要があります。

罪名が窃盗か遺失物等横領かで、結果は変わりますか

変わります。同じ置き引きに見える行為でも、窃盗罪(刑法235条)と評価されるか、遺失物等横領罪(同254条)と評価されるかで、刑の重さも在留への影響も異なります。

両者を分けるのは、その物が誰かの占有下にあったかどうかです。持ち主が席を離れてまだ間もない、置き場所を認識している、店舗や施設の管理が及んでいるといった事情があれば占有は失われておらず窃盗になります。他方、置き忘れから相当の時間が経ち、持ち主も場所を把握していないような状態であれば、占有を離れた物として遺失物等横領にとどまり得ます。遺失物等横領の法定刑は1年以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金若しくは科料です。

入管法との関係では、この違いが決定的に効きます。遺失物等横領は刑法第38章(横領の罪)に属し、24条4号の2の列挙に入っていません。したがって別表第一の在留資格の方であっても、遺失物等横領で執行猶予付き判決を受けた場合には同号に該当しません。処分の統計にも差が表れており、令和6年の来日外国人の起訴率は、窃盗が52.53%であるのに対し、横領(遺失物等横領を含む)は4.61%です。

罰金や起訴猶予で終われば、在留期間の更新はできますか

退去強制事由に該当しないことと、更新が許可されることは別です。在留期間の更新は入管法21条3項により法務大臣の裁量に委ねられ、出入国在留管理庁の在留資格変更・在留期間更新許可のガイドラインでは素行が善良であることが考慮要素とされています。罰金前科、反復する事件、常習性がうかがわれる事案は、この段階で不利に働きます。

再入国についても整理しておきます。不起訴で終われば有罪判決が存在せず、刑罰を要件とする上陸拒否事由には当たりません。退去強制を受けて出国した場合は原則として5年、過去に退去強制を受けたことがある方は10年、上陸が拒否されます(入管法5条1項9号)。期間が経過すれば、この事由による拒否はなくなります。退去強制・在留特別許可の手続については別のページで詳しく述べています。

当事務所はどのように対応しますか

刑事事件と在留手続を切り離さず、一つの見通しの中で扱います。受任した時点で入管法24条のどの号が問題になるのかを特定し、そこから逆算して起訴前の活動を設計します。

  • 不起訴処分を最優先目標とする弁護方針。執行猶予判決でも在留を失う類型があることを前提に、23日間の起訴前弁護に力を注ぎます。示談交渉、被害弁償、生活環境の調整を早期に組み立て、検察官へ意見書を提出します。
  • 刑事弁護と入管手続のワンストップ対応。刑事の弁護人と入管の代理人が別々になることで生じる情報の断絶を避け、同じ弁護士が最後まで担当します。
  • 退去強制事由についても故意・過失を争う。制裁的な行政処分に責任主義の射程が及ぶべきであるとの主張を展開しており、この論点は現在も係争中です。
  • 松村大介弁護士本人が全工程を直接担当し、外国人事件専属の中国語通訳が在籍します。捜査機関が手配する通訳とは別に、ご本人のために動く立場の通訳が同席します。
  • 微信(WeChat ID:matsumura1119)で中国本国のご家族と直接連絡できます。

財産犯では、特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案で全件について不起訴処分を得た事例、出し子とされた20代女性について不起訴処分を得た事例があります。また、不法就労助長罪が認定された事件で在留特別許可を得た実績もあります。いずれも事件ごとに事情が異なり、同じ結果を保証するものではありません。取り扱った事件の類型は外国人事件の解決事例に、刑事と在留の関係は外国人の刑事事件と在留にまとめています。ご相談はお問い合わせから承ります。

よくある質問

被害品を返して謝れば、事件にはなりませんか

店舗が警察に通報しない対応を取ることはありますが、それは店舗の判断であって、法律上そうなるわけではありません。いったん現行犯逮捕されれば、被害品を返還しても事件は検察官に送致され、処分が判断されます。返還と弁償は、処分を軽くする方向に働く事情として意味を持ちます。

永住者ですが、万引きで永住資格を失いますか

永住者は別表第二ですので、入管法24条4号の2は適用されません。窃盗で執行猶予付き判決を受けても、直ちに退去強制事由には当たらず、1年を超える実刑(同条4号リ)に至って初めて該当します。ただし在留資格取消しや、近時の永住許可の運用の厳格化とは別の問題ですので、軽く考えてよいという意味ではありません。

留学生です。執行猶予がついたら、その後どうなりますか

留学は別表第一ですので、窃盗で拘禁刑に処せられれば執行猶予でも入管法24条4号の2に該当し、退去強制手続の対象となります。手続の中で在留特別許可を求めることはできますが、許否は在留期間、家族関係、素行、人道上の配慮その他の個別事情によって判断され、結果を保証することはできません。

中国にいる家族が、示談金を送ることはできますか

できます。ただし国際送金には日数と書類を要し、起訴・不起訴が決まるまでの期間に間に合わないことがあります。受任後すぐに送金経路をご案内し、必要に応じて弁護士の預り金口座を用いる方法もご説明します。

本記事は一般的な解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。見通しは罪名、在留資格、在留歴、家族関係その他の事情によって大きく変わります。具体的なご事情は弁護士に直接ご相談ください。

本記事は2026年9月時点の情報です。

執筆:松村大介(弁護士・第一東京弁護士会所属/登録番号59077)。舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田3-4-10 布施ビル本館3階)代表。外国人の刑事事件と在留(退去強制・在留特別許可)を主たる注力分野とし、中国語圏の依頼者の事件を数多く取り扱う。外国人事件専属の中国語通訳が在籍し、逮捕直後の接見から在留手続まで弁護士本人が一貫して対応する。

舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119

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