舟渡国際法律事務所

中国人の刑事事件で不起訴を得るために|起訴・不起訴を分ける要素と示談・身元引受の実務

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中国人の刑事事件で不起訴を得るために|起訴・不起訴を分ける要素と示談・身元引受の実務

中国人の刑事事件で不起訴を得るために|起訴・不起訴を分ける要素と示談・身元引受の実務

2026/09/05

外国人の刑事事件で本当の分かれ目になるのは、法廷ではなく、その手前の起訴・不起訴の判断です。執行猶予付きの判決を得ても、罪名と在留資格の組合せによっては在留資格を失います。他方、不起訴で終われば有罪判決が存在しないため、刑罰を要件とする退去強制事由には該当しません。だからこそ当事務所は、執行猶予ではなく不起訴処分の獲得を最優先の目標に据えています。本稿では、その判断が何によって分かれ、逮捕から23日間で何を積み上げるべきかを整理します。

本記事の要点

  • 令和6年の来日外国人被疑事件の起訴猶予率は48.35%で、およそ半数が起訴されずに終わっています。
  • 起訴・不起訴は、犯罪の軽重や情状、犯罪後の状況を考慮して検察官が決めます(刑事訴訟法248条)。
  • 被害者のいる事件では、示談と被害弁償の有無が判断に強く影響します。
  • 中国本土からの送金は外貨管理上の手続に日数を要するため、着手の遅れがそのまま結果に響きます。
  • 被害者のいない事件でも、共謀の認識や役割の限定を証拠に基づいて示すことで、嫌疑不十分の不起訴を求める余地があります。

起訴と不起訴は何によって分かれますか

検察官は、犯人の性格、年齢、境遇、犯罪の軽重、情状、犯罪後の状況を考慮して、起訴しないことができます(刑事訴訟法248条)。証拠上有罪の見込みがあっても、これらの事情を踏まえて起訴しないという判断があり、これが起訴猶予です。証拠が足りない場合の不起訴(嫌疑不十分)とは理由が異なります。

処分の種類意味主に働きかける対象
起訴猶予嫌疑はあるが、事情を考慮して起訴しない示談、被害弁償、反省、再犯防止の環境、初犯であること
嫌疑不十分証拠上、有罪の立証が困難共謀の認識、役割、客観的資料との矛盾
嫌疑なし犯罪の成立が認められない行為そのものの不存在、正当行為等
公判請求公開の法廷で審理を求める被害の程度、組織性、常習性、否認の有無等
略式命令請求100万円以下の罰金・科料で書面審理により終わる比較的軽微な事案。ご本人の同意が必要

令和6年の来日外国人被疑事件では、起訴率44.28%、起訴猶予率48.35%でした(法務省「令和7年版犯罪白書」)。罪名による差は大きく、来日外国人の起訴率は窃盗52.53%、詐欺53.35%、覚醒剤取締法違反71.88%である一方、傷害等は25.69%、遺失物等横領を含む横領は4.61%です。同じ「不起訴を目指す」であっても、罪名によって難易度と主戦場が違うということです。

示談はいつ、どのように進めますか

結論から言えば、勾留が決まった直後から動きます。処分は逮捕から23日以内に決まるため、判決前に間に合えばよいという発想では遅すぎます。

被害者の連絡先は、通常、加害者側には知らされません。弁護人が検察官を通じて被害者の意向を確認し、示談の申入れをすることになります。被害者が示談を望まない場合や、連絡先の開示に同意しない場合もあります。その場合でも、被害弁償の意思を示し、贖罪寄付を行うなど、できることは残ります。

身柄拘束中のご本人は、資金を動かすことも書面を用意することもできません。ご家族が資金と資料を準備し、弁護人が交渉を担うという分担になります。示談書には、被害弁償の額と支払方法のほか、宥恕の意思、被害届の取下げ、清算条項を盛り込むのが通例です。外国人事件では、ご本人が帰国する可能性を踏まえ、支払を先行させる形にすることが実務上多くなります。

中国のご家族から示談金を送るにはどうすればよいですか

ここが外国人事件に固有の障害です。中国本土からの送金は外貨管理上の手続を経る必要があり、金額によっては書類の準備に時間がかかります。23日間という期限を前提にすると、着手が数日遅れるだけで処分に間に合わなくなります。

実務上は、日本国内にいるご親族やご友人に一時的に立て替えていただき、後日精算する方法、勤務先の協力を得る方法などを検討します。いずれの場合も、資金の出所を説明できる資料を残しておくことが重要です。とりわけ資金洗浄や特殊詐欺が問題となっている事件では、示談金の原資について説明を求められることがあります。

また、送金の経路によっては、それ自体が別の問題を生むことがあります。無許可で為替取引を反復すれば銀行法違反となり得るため(同法2条2項の為替取引の意義については最高裁平成13年3月12日判決)、いわゆる地下銀行や個人間の両替に頼るべきではありません。正規の金融機関を通す方法を、あらかじめ弁護人と相談してください。

身元引受人にはどなたがなれますか

法律上の資格はありません。日本国内でご本人の生活を監督し、書面で意思を示せる方であれば、会社の上司、学校の関係者、日本に住むご親族、配偶者など、どなたでも構いません。

身元引受書には、住居の提供、就労や通学の状況、監督の方法、出頭の確保について具体的に記載します。抽象的な「監督します」という一文よりも、どこに住み、誰が日々の生活を見るのかが具体的に書かれているほうが説得力を持ちます。外国人の事件では、住居の安定と旅券の管理が特に重視されます。

勤務先の協力が得られる場合、雇用を継続する旨の書面は、不起訴を求める場面でも、その後の在留期間の更新の場面でも意味を持ちます。逆に、事件を理由に解雇されると、在留資格の基礎である活動が失われ、刑事処分とは別に在留が危うくなります。この点は外国人の刑事事件と在留のページでも触れています。

検察官にはどのように働きかけますか

終局処分がされる前に、弁護人が意見書を提出します。処分が出てからでは遅く、勾留期間の後半、遅くとも延長期間の終盤までに提出できるよう逆算して準備します。

意見書に盛り込む要素は、事案によりますが、おおむね次のとおりです。示談の成立と被害弁償の完了、被害者の宥恕、前科前歴のないこと、ご本人の反省、就労や就学の継続の見込み、身元引受人による監督、再発防止のための具体的な措置、そして事件の中でのご本人の役割の限定です。外国人の事件では、有罪判決が在留資格に及ぼす帰結を説明することもあります。

共犯事件では、役割の位置付けが結論を左右します。特殊詐欺のように多数の関与者がいる類型では、末端の役割にとどまる方と、指示や資金の回収に関与した方とで扱いが異なります。通信記録や報酬の額といった客観的な資料から、ご本人の位置を具体的に示すことが必要です。

被害者のいない事件ではどう戦いますか

薬物事件、入管法違反、銃刀法違反、資金洗浄などには示談の相手がいません。この類型では、主戦場は事実と証拠の側に移ります。

実際、口座を経由した資金洗浄の事件で、逮捕された5人のうち3人が嫌疑不十分で不起訴となったと報じられた例があります(2026年1月にライブドアニュースに掲載された報道)。資金が動いた事実が裏付けられても、それが犯罪による収益であるという認識と、共謀の存在が立証できなければ、起訴には至りません。争点が認識と共謀に絞られる類型では、捜査段階での供述の在り方が決定的な意味を持ちます。

薬物事件は事情が異なります。来日外国人の覚醒剤取締法違反の起訴率は71.88%と高く(法務省「令和7年版犯罪白書」)、加えて有罪判決を受ければ、罰金でも執行猶予でも退去強制事由(入管法24条4号チ)に該当します。運搬の依頼を受けた経緯、荷物の中身の認識、報酬の説明などを早い段階で整理する必要があります。詳しくは外国人の薬物事件のページをご覧ください。

不起訴になれば在留資格は安全ですか

刑罰を要件とする退去強制事由には該当しません。入管法24条4号チ(薬物)、4号リ(1年を超える実刑)、4号の2(別表第一の在留資格者の特定の罪)は、いずれも有罪判決または刑の言渡しを前提とするため、不起訴であれば問題になりません。

ただし、在留手続が完全に無関係になるわけではありません。在留期間の更新や在留資格の変更の審査では、素行が善良であるかどうかが考慮されるため、事件の経緯について説明を求められることがあります。事実を隠すよりも、経緯と再発防止の措置を資料とともに説明するほうが、通常は有利に働きます。また、不法残留や資格外活動が並行して問題となっている場合には、刑事処分とは別に入管の手続が進みます。刑の種類ごとの整理は退去強制・在留特別許可・監理措置のページにまとめています。

よくある質問

初犯なら不起訴になりますか

初犯であることは有利な事情の一つですが、それだけで結論が決まるわけではありません。被害の程度、組織的な犯行かどうか、被害弁償の有無などが併せて考慮されます。結果を事前に保証できるものではなく、有利な事情をどれだけ具体的な資料として示せるかが実務の課題になります。

本人が認めていない事件でも示談はできますか

事実関係を争う場合、示談の申入れが不利に働かないかを慎重に検討します。争う部分と、争わない部分を切り分けたうえで判断することになります。方針が定まらないまま謝罪や弁償を先行させると、後の主張と矛盾しかねません。

贖罪寄付とは何ですか

被害者が示談に応じない場合や、被害者のいない事件で、弁護士会や公益団体に寄付を行うことをいいます。反省の具体的な表れとして考慮されることがあります。示談に代わるものではありませんが、他にできることが限られる事案では意味を持ちます。

不起訴になったことは記録に残りますか

有罪判決ではないため前科にはあたりませんが、捜査機関には記録が残ります。将来の在留手続や入国審査の際に、経緯について確認を受ける可能性はあります。他方、退去強制を受けて出国した場合の上陸拒否や、薬物事件による上陸拒否(入管法5条1項5号)とは、性質が異なります。

ご家族は弁護人にどう協力すればよいですか

資料の収集と資金の準備、そして身元引受人の確保です。当事務所は微信(WeChat ID:matsumura1119)で中国本土のご家族と直接やり取りし、必要な資料を中国語でご案内しています。中国語での説明は中文页面をご覧ください。

本記事は一般的な解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。処分の見通しは罪名、在留資格、証拠の状況などによって変わり、結果を保証するものではありません。具体的なご事情はお問い合わせからご相談ください。

本記事は2026年9月時点の情報です。

執筆:松村大介(弁護士・第一東京弁護士会所属/登録番号59077)。舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田3-4-10 布施ビル本館3階)代表。外国人の刑事事件と在留(退去強制・在留特別許可)を主たる注力分野とし、中国語圏の依頼者の事件を数多く取り扱う。外国人事件専属の中国語通訳が在籍し、逮捕直後の接見から在留手続まで弁護士本人が一貫して対応する。

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ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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