舟渡国際法律事務所

刑の種類と罪名と在留資格で見る強制送還リスク早見表|不起訴・罰金・執行猶予・実刑の帰結

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刑の種類と罪名と在留資格で見る強制送還リスク早見表|不起訴・罰金・執行猶予・実刑の帰結

刑の種類と罪名と在留資格で見る強制送還リスク早見表|不起訴・罰金・執行猶予・実刑の帰結

2026/09/05

外国人の刑事事件で最も多く受けるご質問は、「この刑で日本にいられなくなりますか」というものです。この問いには一律の答えがなく、刑の種類、罪名、在留資格の三つの組合せで決まります。同じ執行猶予付き判決でも、薬物事件なら退去強制事由に直結し、永住者の方の窃盗事件なら直ちには該当しません。本稿では、この三つの軸を表に落として整理します。

本記事の要点

  • 在留資格は、活動を根拠とする別表第一と、身分・地位を根拠とする別表第二に分かれ、この区別が結論を大きく左右します。
  • 刑の種類は、不起訴、罰金、全部執行猶予、一部執行猶予、実刑の5つに分けて考えます。
  • 薬物事件は有罪判決を受けたこと自体で退去強制事由に該当し(入管法24条4号チ)、罰金でも執行猶予でも、在留資格の種類を問いません。
  • 別表第一の方が窃盗、詐欺、傷害等の列挙された罪で拘禁刑に処せられた場合は、執行猶予が付いても該当します(同条4号の2)。
  • 退去強制事由に該当しなくても、在留期間の更新が認められずに在留を失う第二の経路があります。

なぜ在留資格を別表第一と別表第二に分けるのですか

退去強制事由の一部が、別表第一の在留資格の方だけを対象としているからです。ここを取り違えると、結論が正反対になります。

別表第一は、日本で行う活動を根拠とする在留資格です。技術・人文知識・国際業務、経営・管理、技能、企業内転勤、高度専門職、技能実習、特定技能、興行、留学、家族滞在、短期滞在、特定活動などが含まれます。別表第二は、身分や地位を根拠とする在留資格で、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者の四つです。特別永住者は入管特例法に基づく地位で、別枠として扱います。

令和7年12月末現在、中国籍の在留者は930,428人で国籍別の第1位(22.6%)ですが、そのうち永住者は357,565人です。別表第二と特別永住者を合わせると438,601人、およそ47.1%にあたります(出入国在留管理庁「在留外国人統計」)。裏を返せば、約52.9%の方は別表第一であり、後述する4号の2のリスクを負います。

刑の種類はどのように分ければよいですか

五つに分けます。不起訴、罰金・科料、全部執行猶予、一部執行猶予、実刑です。分ける理由は、入管法の各号が要求する刑の重さが異なるためです。

刑の種類有罪判決の有無入管法上の位置付け
不起訴(起訴猶予・嫌疑不十分等)なし刑罰を要件とする退去強制事由には該当しない
罰金・科料あり(拘禁刑ではない)薬物事件は該当。それ以外は原則として該当しない
全部執行猶予付きの拘禁刑あり4号リの但書により除外。薬物と4号の2は該当
一部執行猶予付きの拘禁刑あり現実に執行される部分が1年を超えるかどうかで判断
実刑あり1年を超えれば4号リに該当。全ての在留資格に及ぶ

なお、令和4年改正刑法の施行により、自由刑は拘禁刑に一本化されました。以下の説明は、すべて現行法の拘禁刑を前提とします。

窃盗・詐欺・傷害等の場合はどうなりますか

結論は在留資格によって分かれます。別表第一の方は、執行猶予が付いても退去強制事由に該当します。別表第二の方は、1年を超える実刑でなければ該当しません。

刑の種類別表第一(就労・留学・家族滞在等)別表第二(永住者・定住者・日本人の配偶者等)特別永住者
不起訴該当しない該当しない該当しない
罰金・科料該当しない(更新の審査では不利に働く)該当しない該当しない
全部執行猶予該当する(4号の2)該当しない該当しない
実刑・1年以下該当する(4号の2)該当しない(更新は極めて困難)該当しない
実刑・1年を超える該当する(4号リ・4号の2)該当する(4号リ)該当しない

入管法24条4号の2は、別表第一の在留資格をもって在留する方が、刑法の一定の章の罪により拘禁刑に処せられた場合を退去強制事由としています。対象は、住居侵入、通貨・文書・有価証券・支払用カード電磁的記録・印章の各偽造、賭博、殺人、傷害、逮捕監禁、略取誘拐・人身売買、窃盗・強盗、詐欺・恐喝、盗品等に関する罪などです。危険運転致死傷(自動車運転死傷処罰法2条・6条1項)等も対象に含まれます。

逆に、この列挙にない罪、例えば過失運転致死傷や不同意わいせつ等は、4号の2には直接該当しません。もっとも、更新の審査では当然に不利に働きますし、1年を超える実刑であれば4号リに該当します。窃盗事件の具体的な流れは外国人の窃盗・万引き事件、傷害事件は外国人の傷害・暴行事件のページで扱っています。

薬物事件の場合はどうなりますか

薬物は別格です。有罪の判決を受けたこと自体が退去強制事由となり、刑の重さも在留資格の種類も問いません(入管法24条4号チ)。

刑の種類別表第一別表第二・永住者特別永住者
不起訴該当しない該当しない該当しない
罰金該当する(4号チ)該当する(4号チ)該当しない
全部執行猶予該当する(4号チ)該当する(4号チ)該当しない
実刑該当する(4号チ)該当する(4号チ)該当しない

対象となるのは、麻薬及び向精神薬取締法、大麻取締法、あへん法、覚醒剤取締法、麻薬特例法、刑法第2編第14章の各違反です。大麻については、令和6年12月12日以降、麻薬及び向精神薬取締法上の麻薬として規律され、使用罪(同法66条の2、7年以下の拘禁刑)が新設され、単純所持も7年以下の拘禁刑とされています。栽培等の規制は「大麻草の栽培の規制に関する法律」に置かれました。

さらに、簡易な出国手続である出国命令(同法24条の3)は、24条4号ハから4号ヨまでのいずれにも該当しないことを要件とするため、薬物事件で4号チに該当する方は利用できません。将来の再入国という点でも、薬物に関する日本または外国の法令違反で刑に処せられた方は上陸を拒否され(同法5条1項5号)、この事由には期間の定めがありません。詳細は外国人の薬物事件のページをご覧ください。

入管法違反や不法就労助長ではどうなりますか

この領域には、刑罰を前提としない退去強制事由があります。刑事処分の有無にかかわらず、事実の存在自体で該当する類型です。

入管法24条対象刑罰との関係
3号の4他の外国人に不法就労活動をさせる等の行為(不法就労助長)刑事処罰を要しない。行為の存在で該当
4号イ資格外活動を専ら行っていると明らかに認められる者刑罰を要しない
4号ロ在留期間を経過して残留する者(不法残留)刑罰を要しない
4号ヘ入管法73条の罪、外国人登録に関する法令違反拘禁刑以上(執行猶予付きは除かれる)
4号の4届出義務違反、在留カードの受領・提示義務違反等拘禁刑以上

不起訴を得ても入管手続が残るのは、この構造があるためです。刑事と入管を切り離さずに扱う必要があるのは、まさにこの点にあります。関連する論点は不法就労・オーバーステイのページで整理しています。

退去強制事由に当たらなければ安心ですか

そうとは限りません。在留を失う経路はもう一つあります。在留期間の更新や在留資格の変更が認められず、在留期限の到来によって在留を失う経路です。

更新や変更の審査では、素行が善良であることが考慮されます。罰金前科や、4号の2に列挙されていない罪の執行猶予判決であっても、この審査では不利に働きます。別表第一の有期の在留資格に特有のリスクで、更新を要しない永住者にはこの経路は生じません。さらに、在留資格の取消し(同法22条の4)は刑罰とは別の制度で、令和7年の取消件数は1,446件と過去最高になりました(出入国在留管理庁)。就労資格の方が身柄拘束や失職により活動を行わなくなった場合には、この制度が問題になり得ます。

統計では、実際にどのような人が退去強制されていますか

刑事事件による退去強制は、数の上では少数です。令和7年の退去強制令書発付は単独事由の集計で7,722人ですが、内訳は不法残留(4号ロ)5,778人、薬物(4号チ)86人、1年を超える実刑(4号リ)41人、特定犯罪(4号の2)49人でした(出入国在留管理庁「出入国管理統計」)。「刑事事件を起こせば強制送還」という理解は、統計の上では正確ではありません。

ただし国籍によって様相が異なります。中国籍の発付686人のうち、4号リは単独11人と不法残留との並立36人の計47人で、6.9%を占めます。ベトナムの2.3%と比べると約3倍です。中国籍の方については、実刑判決の在留への影響を他国籍より重く見ておく必要があります。

他方で、退去強制事由に該当しても在留特別許可の余地はあります。令和7年の許可人員は審査段階824人、口頭審理29人、異議申出177人の計1,030人でした。令和5年改正入管法により申請手続が法定化され(同法50条2項)、考慮すべき事情が明文化され(同条5項)、不許可の場合には理由を付した書面が交付されます(同条10項)。もっとも退去強制令書の発付後は申請できず(同条3項)、許否は個別の事情によります。同じような事情があれば許可されるというものではありません。

よくある質問

執行猶予なら在留できると聞きましたが本当ですか

半分は正しく、半分は誤りです。1年を超える実刑を要件とする4号リは、全部執行猶予の場合には該当しません。しかし薬物事件(4号チ)と、別表第一の方の列挙罪(4号の2)は、執行猶予でも該当します。ご自身の在留資格がどちらの別表かをまず確認してください。

罰金でも在留に影響しますか

薬物事件は罰金でも4号チに該当します。それ以外の罪では退去強制事由には該当しませんが、更新や変更の審査では不利な事情として考慮されます。

永住者なら強制送還されませんか

されることがあります。4号リ(1年を超える実刑)と4号チ(薬物の有罪判決)は永住者にも及びます。適用されないのは、別表第一の方だけを対象とする4号の2です。

一部執行猶予の場合はどう判断されますか

現実に執行される部分が1年を超えるかどうかで判断されます。実刑部分が1年以下であれば、4号リには該当しません。ただし薬物事件であれば、この点にかかわらず4号チに該当します。

強制送還された後、日本に戻れますか

退去強制を受けて出国した方は、原則として出国の日から5年間、過去にも退去強制を受けたことがある方は10年間、上陸を拒否されます。期間が経過すれば、この事由による拒否はなくなります。他方、薬物に関する法令違反で刑に処せられた方の上陸拒否には期間の定めがなく、再入国には法務大臣の上陸特別許可(同法12条1項)を得るほかありません。

本記事は一般的な解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際の判断は、罪名の細部、在留歴、家族関係その他の事情によって変わります。具体的なご事情はお問い合わせからご相談ください。

本記事は2026年9月時点の情報です。

執筆:松村大介(弁護士・第一東京弁護士会所属/登録番号59077)。舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田3-4-10 布施ビル本館3階)代表。外国人の刑事事件と在留(退去強制・在留特別許可)を主たる注力分野とし、中国語圏の依頼者の事件を数多く取り扱う。外国人事件専属の中国語通訳が在籍し、逮捕直後の接見から在留手続まで弁護士本人が一貫して対応する。

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