舟渡国際法律事務所

日本で執行猶予を受けて帰国した後、本国で処罰されるのか

お問い合わせはこちら

日本で執行猶予を受けて帰国した後、本国で処罰されるのか

日本で執行猶予を受けて帰国した後、本国で処罰されるのか

2026/09/03

執行猶予の判決を受けて身柄が解かれたものの、在留資格を失って日本を離れることになった。そうした方から、帰国後に本国で改めて処罰されるのではないか、というご相談を受けることがあります。

この不安には、二つの異なる問いが含まれています。一つは、本国の法制が外国での判決をどう扱うかという問い。もう一つは、日本の側で執行猶予がどのような意味を持ち、在留や将来の入国にどう影響するかという問いです。前者はその国の法律の問題であり、後者は日本法の問題です。

以下では、後者を中心に条文に沿って整理します。本国での取扱いについては、現地の法律家にご確認ください。

日本の執行猶予とはどのような処分か

執行猶予は、拘禁刑を言い渡したうえで、その執行を一定期間猶予する制度です。

刑の全部の執行を猶予する場合と、一部の執行を猶予する場合があります。いずれにしても、有罪の判決であるという点は変わりません。無罪や不起訴とは、法的な位置づけがまったく異なります。

令和4年改正刑法により、令和7年6月1日から自由刑は拘禁刑に一本化されました。それ以前の判決を引用する場合を除き、現行法の下では拘禁刑と表記されます。

帰国後、本国で処罰されるのか

外国で受けた判決を本国がどう扱うかは、その国の法律が定める問題であり、日本の法律から答えが出るものではありません。

一般論として、多くの国は自国民が国外で行った一定の行為について自国の刑法の適用を定めており、また外国の裁判所の判断をどこまで考慮するかについても、それぞれの国内法に規定を置いています。したがって、結論はその国の法制次第です。日本の弁護士がその結論を保証することはできません。

関連して、外国籍の方が身柄を拘束された場合には、領事関係に関するウィーン条約36条により、本国の領事機関への通報と領事官との接見が保障されています。通報を希望するかどうかについては、弁護人と相談したうえで判断することになります。

日本における記録と刑の消滅

日本の刑法34条の2は、刑の消滅について定めています。

一定の期間の経過により刑の言渡しは効力を失うものとされていますが、これは日本の法律上の効果です。他国での記録の扱いや、入管法上の上陸拒否事由に当たるかどうかは、それぞれ別の問題として検討する必要があります。

執行猶予でも在留資格に跳ね返る場合

執行猶予がついたかどうかは、退去強制事由の判断において決定的な意味を持つ場面と、まったく意味を持たない場面があります。

入管法24条4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を挙げますが、但書があり、刑の全部の執行を猶予された場合は除かれます。一部猶予であっても、実刑となる部分が1年以下であれば同様です。この場面では、執行猶予がついたことに大きな意味があります。

これに対し入管法24条4号チは、麻薬・大麻・あへん・覚醒剤等に関する法令違反で有罪の判決を受けた者を対象とし、罰金でも執行猶予付きでも刑の免除でも該当します。4号リの柱書が、ニからチまでに掲げる者のほか、となっているため、薬物事犯は4号リの守備範囲の外にあります。ここでは執行猶予がついても結論が変わりません。また24条4号の2は、別表第一の在留資格で在留する方が、強盗、不同意性交等、危険運転致死傷(自動車運転死傷処罰法2条・6条1項)等で拘禁刑に処せられた場合を対象とします。

なお、刑事処分に至らない場合でも、3か月以上、在留資格に応じた活動を行わないで在留していると、正当な理由がある場合を除き入管法22条の4により在留資格が取り消され得ます。身柄拘束の期間が長引くと、この点が問題になることがあります。

統計から見る執行猶予の位置

執行猶予は例外的な結論ではなく、罪名によって割合が大きく異なります。

令和6年の犯罪白書によれば、起訴猶予率は大麻35.5%、覚醒剤8.5%、麻薬15.9%、麻薬特例法52.5%です。また全部執行猶予率は、大麻84.2%、覚醒剤36.0%となっています。数字が示すのは、薬物事犯では執行猶予自体は珍しくない一方、有罪判決を受ければ入管法24条4号チに該当するという構造が変わらないという点です。だからこそ、量刑ではなく不起訴を目標に置く意味があります。

もう一度日本に来られるのか

再来日の可否は、入管法5条1項のどの上陸拒否事由に当たるかによって決まります。

同項4号は1年以上の拘禁刑に処せられた方を対象とします(政治犯罪は除かれます)。退去強制を受けた方については同項9号が、イ1年、ロ5年、ハ10年を定めており、ハは過去に退去強制されたことがある方が再び退去強制された場合です。出国命令によって出国した方は同項9号の2により1年です。

薬物に関する同項5号には期間の定めがなく、罰金でも外国の法令違反でも足ります。この場合、再入国は入管法12条1項の上陸特別許可によることになります。

よくある誤解

  • 執行猶予は有罪ではない、という理解。有罪の判決であることに変わりはありません。
  • 執行猶予なら在留資格に影響しない、という理解。24条4号リでは除外されますが、4号チでは除外されません。
  • 日本で処罰されたのだから本国では何も起きない、という理解。本国での取扱いはその国の法制によります。

ご本人とご家族が取れる行動

出発点は、身柄が拘束された段階で弁護人を選任し、接見を通じて事実関係を確認することです(刑事訴訟法39条1項)。

取調べでは同法198条2項により黙秘権が告知され、同条4項が供述調書の読み聞けと増減変更の申立てを定めています。刑事手続で作成された供述調書は、その後の違反審査や口頭審理の資料になります。通訳を介した内容が自分の述べたことと違うと感じたときは、その場で訂正を求めてください。通訳・翻訳は同法175条・178条、一定の事件の録音録画は同法301条の2によります。

当事務所の対応

当事務所では、松村大介弁護士が接見と打合せに直接対応します。中国語については、外国人事件専属の通訳が常駐しています。

弁護方針としては、執行猶予判決ではなお不十分であると考え、不起訴処分を得ることを最優先の目標に置いています。薬物事犯では有罪判決そのものが退去強制事由になるため、刑の重さではなく有罪か否かが分かれ目になるからです。刑事事件と入管手続は一体として設計し、退去強制事由の該当性についても故意や過失を争う視点で検討します。初回のご相談は無料です。

結びに

執行猶予は、日本の刑事手続の中では大きな意味を持つ結論ですが、その意味は場面ごとに変わります。在留資格の場面、上陸の場面、そして本国の制度の場面では、それぞれ異なる基準が働きます。本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119

この記事の簡体字中国語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099373/

----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639


東京にて中国人の方をサポート

東京を中心に刑事事件の弁護

東京にて行政事件に関する対応

----------------------------------------------------------------------

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。