弁護人の接見に通訳を連れて行く|費用と手配の実際
2026/09/03
家族が逮捕されたが、弁護士は日本語しか話さない。通訳を連れて行ってもらえるのか、その費用は誰が払うのか。ご家族からのお問い合わせで最も多いもののひとつが、この接見の通訳に関する質問です。
接見は、身体を拘束された方が外部と実質的なやり取りをする、ほとんど唯一の場です。そこで言葉が通じなければ、弁護人は事件の内容を知ることができず、本人は自分に何が起きているのかを知ることができません。通訳の手配は、付随的なサービスではなく、弁護の出発点です。
この記事では、接見通訳がどのように手配され、費用がどう扱われるのか、国選と私選で何が違うのか、そして通訳を入れた接見でまず確認すべきことを整理します。
接見交通権と、そこに通訳が入る意味
身体を拘束された被疑者・被告人は、立会人なしに弁護人と接見する権利を持ちます。
刑事訴訟法39条1項は、身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人と立会人なくして接見し、書類や物の授受をすることができると定めています。捜査機関の職員が同席しないという点が決定的に重要です。取調べでは言えなかったこと、通訳の訳が違うと感じた点、家族に伝えたいことを、ここで初めて安全に話すことができます。
ただし、この権利は言葉が通じることを前提としています。通訳が入らなければ、立会人がいないという保障は形だけのものになってしまいます。最高裁判所の広報資料『あなたも法廷通訳を ごぞんじですか』(令和7年1月版)によれば、令和5年に終局した要通訳事件の被告人は3,851人にのぼり、中国語は16.1パーセントを占めます。通訳を要する弁護活動は、日常的な実務です。
接見通訳の費用はどう扱われるか
接見通訳の費用には、公的な支援制度の枠組みに基づく基準があります。
日本司法支援センター(法テラス)が定める接見通訳料の基準は、30分以内が8,380円、それを超える場合は以降10分ごとに1,047円です。これは通訳人に支払われる報酬の基準額であり、弁護士報酬とは別のものです。
国選弁護の事件では、この枠組みの中で通訳人が手配されます。私選弁護の場合は、弁護人が事件の内容と言語に応じて通訳人を選び、費用の負担についてあらかじめ依頼者側と取り決めます。いずれの場合も、接見のたびに通訳人が同行するとは限らず、事件の段階や打合せの内容に応じて必要性が判断されます。
国選と私選で、手配の流れが変わる
国選弁護では通訳人の選定が制度の枠内で行われ、私選弁護では弁護人が直接手配します。
この違いは、言語の選択肢と機動性に影響します。需要の多い言語であれば大きな差は生じにくい一方、話者の少ない言語や方言が問題になる事件では、私選の方が柔軟に人選できる場合があります。逆に、私選であれば必ず適任者が見つかるというものでもありません。
重要なのは、どちらの場合でも、通訳人が事件の内容を理解して訳せる人かどうかを弁護人が見極める必要がある、という点です。日常会話ができることと、薬物、共謀、故意といった法律上の概念を正確に橋渡しできることは、別の能力です。
秘密交通権と通訳人の位置づけ
接見に同行する通訳人は、弁護人の補助者として秘密交通の枠内に入ります。
接見で話した内容が捜査機関に伝わることはありません。通訳人にも守秘が求められます。他方、法廷で宣誓した通訳人が虚偽の通訳をした場合には、刑法171条の虚偽通訳罪が問題となり得ます。通訳人は中立の立場で言葉を移す役割であり、助言や交渉をする立場ではない、という区別も押さえておいてください。
通訳を入れた接見で、まず確認すべきこと
- 取調べで何を聞かれ、何と答えたか。とくに認めたと受け取られかねない発言の有無。
- 供述調書に署名押印したかどうか。読み聞けの際に訳がおかしいと感じた箇所。
- 在留カードの有無、在留資格の種類と期限。
- 家族の在留状況、就労先、住居地の届出の状況。
- 本国の家族や領事館への連絡希望の有無。
刑事の説明不足は、在留資格の判断に直結する
接見で情報が正確に共有されないと、入管手続の準備が遅れます。
刑事事件で作られた供述調書は、退去強制手続における違反審査や口頭審理の資料として用いられます。したがって、刑事の段階でどのような事実関係が固まったかが、そのまま在留資格の判断の土台になります。
入管法24条4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としますが、但書があり、全部執行猶予が付された場合は除外されます。一部猶予の場合も実刑部分が1年以下なら除外されます。他方、同条4号チは薬物犯罪について有罪の判決を受けた者を挙げ、罰金でも執行猶予でも刑の免除でも該当します。この違いを本人が理解しているかどうかで、供述の方針も変わってきます。
よくある誤解
- 弁護士が外国語を話せなければ依頼できない、というのは誤りです。通訳を介した弁護は通常の実務です。
- 接見の通訳人が捜査機関に内容を伝えるのではないか、という心配は不要です。秘密交通の枠内にあります。
- 取調べに通訳がついたから接見は不要だ、というのも違います。取調べの通訳人は捜査機関側が手配した人です。
- 執行猶予なら在留に響かない、とは限りません。薬物事件は入管法24条4号チにより該当します。
当事務所の対応
舟渡国際法律事務所では、松村大介弁護士が接見に直接出向きます。中国語については、外国人事件専属の通訳が常駐しており、初回接見の段階から言葉の壁を挟まずに事情を聴き取ることができます。その他の言語は、事案に応じて通訳人を手配します。
弁護方針としては、執行猶予判決ではなお不十分であると考え、不起訴処分を最優先の目標とします。刑事事件と入管手続は一体のものとして設計し、退去強制事由の該当性についても故意・過失を含めて検討します。初回相談は無料です。微信(WeChat)ID matsumura1119 でもご連絡いただけます。
ご相談にあたって
接見で何を話すかは、事件の見通しを大きく変えます。通訳を挟むからこそ、優先順位を決めて臨むことが大切です。本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
この記事の簡体字中国語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099301/
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