留学生アルバイトの週28時間管理 企業が問われる場面と不法就労助長罪
2026/09/03
飲食店や小売の現場で外国人アルバイトを受け入れている企業のご担当者から、週28時間という上限は繁忙期でも一切超えてはいけないのか、他社での掛け持ち分まで自社が把握する義務があるのか、というご質問をよくいただきます。本人の申告がないまま超過が続き、更新申請の段階で初めて発覚することも珍しくありません。
本記事では、資格外活動許可の内容と確認の仕方、複数就労での責任の所在を入管法の条文に沿って整理し、超過が本人の在留資格と企業の刑事責任にどう跳ね返るのかを説明します。
週28時間は、就労を認める代わりに付けられた条件である
結論から言えば、週28時間の上限は努力目標ではなく、資格外活動許可という処分に付された条件そのものです。留学や家族滞在の在留資格は、本来は報酬を受ける活動を予定していません。そこに例外として収入を伴う活動を認めるのが資格外活動許可であり、包括的に与えられる許可には、1週について28時間以内という枠と、風俗営業等に係る業務では働けないという制限が付きます。教育機関の長期休業期間には別の枠がありますが、これも許可の内容として定まったものです。
重要なのは1週の数え方です。どの曜日を起点に7日間を区切っても上限を超えていない、という前提でシフトを組む必要があり、月末で帳尻を合わせるという発想は通用しません。
企業の責任は、不法就労助長罪という形で現れる
上限を超える就労をさせた企業は、入管法73条の2の不法就労助長罪に問われる可能性があります。法定刑は5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金、又はその併科です。同条2項は、在留資格や活動内容を知らなかったことを理由に処罰を免れるには、知らないことについて過失がなかったことを行為者の側で示さなければならない構造を採っています。
経営者や管理者が外国籍の場合は、入管法24条3号の4にも注意が必要です。不法就労助長行為をした者は退去強制事由に該当し、この号は行為があれば足りる構造で、刑事処罰を受けたことは要件になっていません。
警察庁の令和7年の統計では、不法就労助長事件の検挙件数は253件、検挙人員は308人で、雇用されていた不法就労外国人475人の国籍はベトナム169人、タイ69人、インドネシア63人の順でした。
本人の在留資格には、退去強制と取消しの二方向で跳ね返る
超過就労は、本人にとって在留資格を失う入口になります。第一に、入管法24条4号イは、専ら在留資格外の活動を行っていると明らかに認められる者を退去強制事由としています。学業の実態がほとんどなく就労が生活の中心になっている場合が典型です。第二に、入管法73条の罪により拘禁刑に処せられた場合は、同法24条4号ヘに該当します。
刑事事件にならなくても、入管法22条の4による在留資格の取消しがあります。正当な理由がないのに3か月以上、当該在留資格に応じた活動を行わないで在留していることが典型的な取消事由です。出入国在留管理庁の令和7年の統計では、在留資格の取消しは1,446件で、在留資格別では技能実習973件、留学343件でした。
取消しに至らない場合でも更新や変更の審査で素行として考慮され、卒業後に技術・人文知識・国際業務への変更を申請する段階で、在学中の超過就労を理由に不許可となる例もあります。
複数就労は、自社のシフトだけを見ていても防げない
上限は勤務先ごとではなく本人単位で通算されるため、自社の勤務時間だけを管理していても違反は防げません。他社の勤怠記録を直接取得することはできませんから、採用時と一定期間ごとに他の就労先の有無と時間数を書面で申告してもらい、変更があれば速やかに届け出るよう就業規則や誓約書に定めることになります。
過失がなかったことを示す場面では口頭の確認だけでは足りず、申告書、面談記録、シフト表、給与台帳が一体として残っているかどうかが後の判断を分けます。
採用時と採用後の確認を、書面で残す
確認の出発点は在留カードです。表面の在留資格と在留期間だけでなく、裏面の資格外活動許可の記載を必ず見てください。許可の記載がなければ、留学や家族滞在の在留資格でも報酬を伴う活動はできません。業務が在留資格の範囲に収まるか疑義があるときは、就労資格証明書の交付を受けてもらう方法もあります。
入管法23条は在留カードの携帯と提示を求め、携帯義務違反は同法75条の3により20万円以下の罰金、提示義務違反は同法75条の2により1年以下の拘禁刑又は20万円以下の罰金とされています。所属機関に関する届出は同法19条の16及び19条の17により14日以内に行う必要があります。
現場でよく聞く誤解を三つ整理する
もっとも多い誤解は、本人が申告しなかったのだから会社に責任はない、というものです。入管法73条の2第2項の構造からは、確認体制の不備がそのまま企業側の弱点になります。
次に多いのが、資格外活動許可があればどの仕事でもよい、という誤解です。包括的な許可でも風俗営業等に係る業務は除かれており、店舗の実態がこれに当たれば、28時間の枠内であっても許可の範囲外の就労になります。
三つ目は、罰金なら在留に響かないという誤解です。罰金であっても更新や変更における素行の評価には影響し、更新が認められないという形で在留は失われ得ます。
当事務所の対応
当事務所では、松村大介弁護士が接見と打合せに直接対応します。外国人事件については中国語の専属通訳が常駐しており、その他の言語は事案に応じて通訳人を手配します。
弁護方針としては、執行猶予判決を得れば足りるとは考えず、不起訴処分を最優先の目標とします。供述調書は違反審査や口頭審理の資料となるため、刑事手続の初期から入管手続を見据えて供述を整理します。退去強制事由への該当性についても、故意や過失の有無を争う視点をもって検討します。企業からのご相談では、従業員本人の刑事弁護と企業としての対応を切り分けて設計します。初回のご相談は無料で、微信(WeChat)ID matsumura1119 でもご連絡いただけます。
おわりに
週28時間の管理は労務管理の問題であると同時に、本人の在留と企業の刑事責任に直結します。超過が判明した段階で事実関係を整理し、本人の在留手続と企業側の対応を同時に考え始めることが結果を左右します。本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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この記事のインドネシア語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099275/
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