保釈を通すために家族が準備するもの|身元引受書と住居の証明
2026/09/03
起訴の連絡を受けたご家族から、私たちは何を用意すればよいですかと尋ねられることがあります。この質問は、実は保釈の成否に直結しています。裁判所が判断しているのは被告人の人柄そのものではなく、公判に出頭し続ける体制が現実に存在するかどうかだからです。その体制を形にできるのは、多くの場合ご家族です。
本記事は、書類を作る側の視点から書きます。何を、誰が、どのように書くのか。抽象的な言葉を並べた書面と、生活の実態が見える書面とでは、読まれ方がまったく違います。あわせて、保釈が認められた後に在留資格の問題がどう続くのかも整理します。
家族の準備が結論を左右する理由
保釈の判断では、逃亡のおそれと罪証隠滅のおそれが小さいと言えるかが中心になります。この二つは、本人の意思だけでは示せません。どこに住み、誰が日々の行動を把握し、収入や生活をどう維持するのか。これらは第三者が説明して初めて説得力を持ちます。
特に外国人の事件では、生活の基盤が日本にあることを書面で示す作業が重要になります。裁判所が見ているのは国籍ではなく、出頭を担保する仕組みの実質です。ご家族の準備は、その仕組みを可視化する作業だと考えてください。
身元引受書に書くべきこと
身元引受書は、私が責任を持ちますという一文では足りません。書くべきなのは、責任の中身です。次の項目を具体的に埋めていきます。
- 引受人の氏名、生年月日、住所、職業、在留資格または国籍
- 被告人との関係と、これまでどのくらい一緒に生活してきたか
- 釈放後に被告人が住む場所と、引受人自身がそこに住むのかどうか
- 日中の所在をどう把握するか。勤務先、通学先、連絡の頻度と方法
- 公判期日に同行できるかどうか
- 関係者に接触させないために具体的に何をするか
抽象的な決意表明ではなく、日々の生活の描写になっているほど、書面としての力は強くなります。日本語で作成しますが、内容は必ず本人と引受人が理解したうえで署名してください。
住居を示す書類
住居は、保釈の条件として指定される場所そのものです。書面としては、賃貸借契約書の写し、公共料金の領収書、住民票などが用いられます。同居する家族がいる場合は、その方の在留カードの写しも添えます。
注意が必要なのは、事件の関係者と同じ場所に住むことになっていないかという点です。共犯とされている人物や被害者と居住地が近い場合、条件面での調整が必要になります。契約名義が本人ではない場合には、名義人の同意が分かる書面を用意しておくと手続が滞りません。
保証金の用意で気をつけること
保証金の額は、事件の性質や被告人の資力を考慮して裁判所が事件ごとに定めます。一律の基準額は公表されていません。したがって、金額が決まる前に全額を日本国内に移しておく必要はありませんが、決定後に速やかに納付できる状態にしておくことは重要です。
実務上よく問題になるのは、資金の出所と名義です。誰の資金を、どのような経緯で用意したのかを説明できるようにしておいてください。海外からの送金には時間がかかることがあり、着金の遅れがそのまま釈放の遅れになります。納付の方法や窓口については、弁護人を通じて確認するのが確実です。保証金は、条件を守り出頭を続ければ手続終了後に返還されます。
旅券の提出と行動制限を受け入れる
外国人の事件では、旅券を提出することや、指定された住居から離れないことが条件として付されることがあります。これらを受け入れる姿勢をあらかじめ書面で示しておくと、裁量による保釈の判断材料になります。
制限を受け入れるという意思表示は、逃亡のおそれを小さくする最も分かりやすい方法のひとつです。あわせて、旅券が捜査で押収されている場合には、押収品目録交付書の写しを添えて、その事実を明らかにしておきます。
保釈の後に続く在留資格の問題
刑事手続で保釈が認められても、退去強制事由に当たる場合には入管の手続が続きます。退去強制事由である入管法24条4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を対象とし、但書により刑の全部の執行を猶予された場合は除外されます。一部猶予でも実刑部分が1年以下なら除外されます。
退去強制手続に進んだ場合、入管法50条の在留特別許可が検討対象になります。同条5項は、在留を希望する理由、家族関係、素行、本邦に在留することとなった経緯、在留期間その他の事情を考慮要素として定めています。保釈のためにご家族が整えた書面は、この場面でもそのまま資料になります。二度手間ではなく、同じ準備が二つの手続を支えます。
出入国在留管理庁の令和7年の統計では、在留特別許可は申請2,424件に対し許可1,026件、不許可1,233件でした。準備の質が問われる手続であることが、数字からも読み取れます。
よくある誤解
- 身元引受人は日本人でなければならない。そのような要件はありません。生活の実態と監督の具体性が問われます。
- 保証金を多く積めば必ず認められる。額は裁判所が定めるものであり、金額だけで結論が決まるわけではありません。
- 有罪になれば保証金は戻らない。条件を守っていれば返還されます。
- 書類は日本語でなくてもよい。裁判所法74条により手続は日本語で行われるため、翻訳を添えます。
- 保釈されれば在留の問題も終わる。退去強制事由に当たる場合、手続は続きます。
当事務所の対応
舟渡国際法律事務所では、松村大介弁護士が接見と打合せに直接対応します。中国語については外国人事件専属の通訳が常駐しており、韓国語を含むその他の言語については事案に応じて通訳人を手配します。
ご家族が用意した書面は、弁護人が内容を確認し、必要に応じて補充してから提出します。もっとも、私たちは執行猶予判決で足りるとは考えず、不起訴処分を最優先の目標として方針を組み立てます。起訴されなければ保釈の問題自体が生じないためです。刑事事件と入管手続は一体として設計します。刑事段階の供述調書が違反審査や口頭審理の資料になるためです。退去強制事由に当たるかどうかについても、故意や過失の有無を含めて争う視点を持ちます。初回相談は無料で、微信(WeChat)ID matsumura1119 でもご連絡いただけます。
おわりに
ご家族にできることは、思っているよりも具体的で、思っているよりも大きい範囲に及びます。決意ではなく生活を書いた書面が、結局のところ最も強い書面です。本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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この記事の韓国語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099209/
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