舟渡国際法律事務所

日本に起訴前の保釈がない理由|権利保釈・裁量保釈と保証金

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日本に起訴前の保釈がない理由|権利保釈・裁量保釈と保証金

日本に起訴前の保釈がない理由|権利保釈・裁量保釈と保証金

2026/09/03

逮捕された家族のために保釈金を用意したい。海外から日本の刑事手続を調べた方が最初に考えるのは、たいていこのことです。ところが弁護人に相談すると、まだ保釈を請求できる段階ではないと言われる。この食い違いは、日本の保釈制度が起訴後にしか働かないという構造から生じています。

本記事では、なぜ起訴前に保釈が存在しないのか、その間に何ができるのか、起訴後の保釈がどのような二段構えになっているのか、そして保証金がどう決まりどう返ってくるのかを説明します。最後に、保釈が認められても身体拘束が終わらない場合、すなわち入管の収容に移る場合についても触れます。

起訴前に保釈が存在しない理由

日本の保釈は、公訴が提起された後の被告人について認められる制度であり、起訴前の被疑者には適用されません。これは運用の問題ではなく、制度の設計そのものです。捜査段階の身体拘束は勾留として行われ、その解放手段は保釈とは別の仕組みに委ねられています。

この構造は多くの国の制度と異なるため、誤解が生じやすい部分です。逮捕された段階で保証金を積めば出られるという前提で準備を進めると、時間と資金の使い方を誤ります。まず確認すべきなのは、事件が起訴前なのか起訴後なのかという一点です。

起訴前の段階で使える手段

起訴前に取り得る手段は保釈ではありませんが、何もできないわけではありません。実際に使われるのは次のようなものです。

  • 弁護人との接見。刑訴法39条1項により、身体を拘束されている場合でも立会人なしで打合せができます。方針を決められるのはこの場だけです。
  • 勾留理由の開示。刑訴法82条以下により、勾留の理由を公開の法廷で明らかにするよう請求できます。家族が傍聴できる数少ない機会でもあります。
  • 勾留に対する不服申立てと、勾留の取消しや執行停止を求める活動。いずれも要件は厳格ですが、事案によっては機能します。
  • 取調べの録音録画。刑訴法301条の2は、一定の事件について録音録画を義務づけています。

外国人の事件では、これらに加えて通訳の確保が重要になります。刑訴法175条と178条が通訳と翻訳について定めており、自由権規約14条3項(a)(f)は、罪の告知を理解できる言語で受ける権利と、通訳を無償で付される権利を定めています。

起訴後の保釈は二段構え

起訴後の保釈には、原則として認めなければならない保釈と、裁判所の裁量による保釈の二つがあります。前者は権利保釈と呼ばれ、刑訴法89条が定めています。同条は、重い罪に当たる場合や、罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がある場合など、一定の除外事由を挙げており、それらに当たらなければ保釈を許さなければならないという構造です。

除外事由に当たる場合でも、刑訴法90条により、裁判所は裁量で保釈を許すことができます。実務では、この裁量保釈をどう説得するかが弁護人の主要な仕事になります。逃亡のおそれと罪証隠滅のおそれをどう小さく見せるかではなく、どう現実に小さくするかが問われます。

保証金はどう決まり、いつ返ってくるのか

保証金の額は、事件の性質、証拠の状況、被告人の資力などを考慮して裁判所が個別に定めます。一律の基準額は公表されておらず、事件ごとに異なります。したがって、いくら用意すればよいかという質問に、事前に確定的な答えを出すことはできません。

保証金は、保釈の条件を守り、公判に出頭し続ければ、手続の終了後に返還されます。有罪判決を受けたかどうかで返還の可否が決まるわけではありません。他方、指定された住居を離れる、出頭しない、関係者に接触するといった条件違反があれば、保釈が取り消され、保証金の全部または一部が没取されることがあります。返ってくる前提の資金であっても、拘束期間中は動かせないという点は、資金計画に影響します。

外国人の事件で壁になる点

外国人の事件で保釈の判断が厳しくなりやすいのは、住居と身元引受の実質が問われるからです。裁判所が見ているのは国籍ではなく、公判に出頭し続ける現実的な担保があるかどうかです。したがって、次のような準備が意味を持ちます。

  • 身元引受書。誰が、どのような関係で、どこで、どう監督するのかを具体的に書く
  • 住居の確保。賃貸借契約書や、同居する家族の在留カードの写し
  • 就労先や学校からの受入れに関する書面
  • 旅券の提出や、指定された場所への居住といった条件を受け入れる用意

準備の質が高ければ、裁量保釈の説得材料は厚くなります。逆に、書面が抽象的だと、判断は保守的になります。

保釈されても収容が続く場合

刑事手続で保釈が認められても、退去強制事由に該当する場合には、入管による収容が始まることがあります。ここは刑事と入管を別々に考えていると見落とす部分です。刑事の身体拘束が解かれた瞬間に、入管の手続に引き継がれるという事態が現実に起こります。

もっとも、収容以外の選択肢もあります。出入国在留管理庁の統計によれば、監理措置は令和6年6月10日から同年末までに1,123件が決定されており、内訳は退去強制令書発付前が647件、発付後が476件です。同じ期間の仮放免は127件でした。監理人の9割以上は親族や知人であり、所在不明となった者はいませんでした。刑事の保釈で用意した身元引受の体制は、この場面でもそのまま活きます。

よくある誤解

  • 逮捕された翌日に保釈金を払えば出られる。起訴前に保釈はありません。
  • 保証金には決まった相場がある。裁判所が事件ごとに定めます。
  • 有罪になれば保証金は戻らない。条件を守っていれば返還されます。
  • 外国人だから保釈は無理だ。判断されるのは国籍ではなく、出頭を担保する体制の実質です。
  • 保釈されれば身体拘束は終わる。退去強制事由に当たる場合、入管の手続が続くことがあります。

当事務所の対応

舟渡国際法律事務所では、松村大介弁護士が接見と打合せに直接対応します。中国語については外国人事件専属の通訳が常駐しており、その他の言語については事案に応じて通訳人を手配します。

保釈は起訴後の課題ですが、準備は起訴前から始まります。もっとも、私たちは執行猶予判決で足りるとは考えず、不起訴処分を最優先の目標として方針を組み立てます。起訴されなければ、保釈の問題そのものが生じないためです。刑事事件と入管手続は一体として設計します。取調べで作られた供述調書が、後の違反審査や口頭審理の資料になるためです。退去強制事由に当たるかどうかについても、故意や過失の有無を含めて争う視点を持ちます。初回相談は無料で、微信(WeChat)ID matsumura1119 でもご連絡いただけます。

おわりに

保釈という言葉を検索してたどり着いた方に最初にお伝えしたいのは、いま事件がどの段階にあるかを確認してくださいということです。段階が分かれば、資金も時間も正しい場所に使えます。本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119

この記事の英語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099207/

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