日本人の配偶者等の在留資格と刑事事件 離婚が重なった場合の考え方
2026/09/02
刑事事件が起きると、家庭の側にも波が及びます。配偶者との関係が悪化し、離婚の話が出る。並行して、刑事手続が進んでいく。日本人の配偶者等の在留資格をお持ちの方の場合、この二つは別々の出来事ではなく、在留資格という一点で交差します。
ご相談の場面で最も多いのは、どちらから手を付ければよいのか分からない、というお悩みです。刑事事件を先に片付けるべきか、離婚の条件を先に決めるべきか。結論としては、順番よりも、それぞれが在留にどう作用するかを把握したうえで同時に管理することが重要です。本記事では、その全体像を条文に沿って整理します。
別表第二であることは有利に働く
日本人の配偶者等は別表第二の在留資格です。入管法24条4号の2は、強盗、不同意性交等、危険運転致死傷等の重大犯罪で拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としますが、その対象は別表第一の在留資格をもって在留する者に限られます。したがって、日本人の配偶者等の方にはこの規定は適用されません。留学や就労資格の方と比べて、この点は明確に有利です。
適用される退去強制事由は二つ
中心になるのは、入管法24条4号リと同号チです。4号リは無期または1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としますが、但書により全部執行猶予が付された場合は除外されます。一部猶予でも実刑部分が1年以下であれば除外されます。これに対して4号チは、麻薬・大麻・あへん・覚醒剤等に関する法令違反で有罪の判決を受けた者を対象とし、罰金でも執行猶予でも刑の免除でも該当します。在留資格の別表も問いません。したがって、家族関係がどれほど安定していても、薬物事犯では有罪判決そのものが退去強制事由になります。この場合、起訴前の段階における弁護活動の比重が大きくなります。
離婚が在留資格に与える影響 6か月という基準
離婚が問題になるのは、在留資格の取消しを定める入管法22条の4との関係です。日本人の配偶者等については、配偶者の身分を有する者としての活動を継続して6か月以上行わないで在留していることが取消し事由とされています。ただし正当な理由がある場合は除かれます。離婚が成立した場合はもちろん、離婚が成立していなくても、別居が続き婚姻の実体が失われていると評価されれば、この規定が問題になり得ます。配偶者からの暴力を避けるために別居している場合や、離婚調停が係属している場合などは、正当な理由の主張として意味を持ちます。主張するためには、調停の記録、相談機関の記録、別居に至った経緯を示す資料が必要です。
離婚後にどの在留資格を目指すか
離婚後も日本での生活を続ける場合、実務では定住者への在留資格変更が検討されます。婚姻期間の長さ、日本での生活基盤、日本人との間の子の監護養育の有無などが判断の要素になります。日本人の子を現に監護養育している場合は、その事実が重要な意味を持ちます。ここでも6か月という時間の制約は働きますので、離婚の成立を待ってから考えるのではなく、別居の段階から準備を始めることが現実的です。
在留特別許可はどう判断されるか
退去強制事由に該当すると判断された場合には、在留特別許可が検討されます。入管法50条2項は収容令書により収容されている者と監理措置決定を受けた者に申請権を認め、同条3項は退去強制令書の発付後の申請を認めていません。考慮要素は同条5項に法定されており、在留を希望する理由、家族関係、素行、本邦に在留することとなった経緯、在留期間などが挙げられます。不許可の場合は同条10項により理由を付記した書面が交付されます。運用の基準は2024年6月に改定されたガイドラインです。出入国在留管理庁の令和7年の統計では、在留特別許可は申請2,424件に対して許可1,026件、不許可1,233件でした。離婚を経た事案では、日本人の子との関係や監護の実態が、同条5項の家族関係という考慮要素の中で具体的に検討されます。
よくある誤解
第1に、離婚しても在留カードの期限までは何の問題もないという理解です。6か月の取消し事由がありますから、そうはなりません。第2に、離婚届を出していなければ大丈夫という理解です。問われるのは婚姻の実体であり、届出の有無だけではありません。第3に、刑事事件は家庭の問題とは無関係だという理解です。刑事事件を契機に婚姻関係が崩れれば、退去強制事由と取消し事由が同時に進行することになります。
当事務所の対応
当事務所では、松村大介弁護士が接見と打合せに直接対応します。中国語については外国人事件専属の通訳が常駐しており、その他の言語については事案に応じて通訳人を手配します。方針としては、執行猶予判決を得れば足りるとは考えず、不起訴処分の獲得を最優先の目標としています。刑事の供述調書は違反審査や口頭審理の資料として用いられますので、刑事弁護と入管手続を一体として設計します。離婚が関わる事案では、別居の経緯、監護の実態、生活基盤に関する資料を早い段階から整えることを重視し、退去強制事由の該当性そのものについても故意や過失を含めて争う視点を持ちます。初回のご相談は無料です。微信(WeChat)ID matsumura1119 でもご連絡いただけます。
おわりに
家庭の問題と刑事事件が重なると、どうしても目の前の一つに気を取られます。しかし在留資格の側から見れば、二つは同じ一本の線の上にあります。本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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この記事の簡体字中国語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099113/
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