勾留中・保釈中に在留期間更新申請はできるのか 取次ぎと期限徒過
2026/09/02
ご本人が警察署の留置施設にいる。在留カードは押収されているか、家族の手元にある。そして在留期間の満了日が2週間後に迫っている。このような状態で、更新申請はできるのでしょうか。
この問いには、二つの層があります。ひとつは、制度上できるのかという問題。もうひとつは、実際に誰がどう動けば間に合うのかという問題です。前者だけを調べても事態は動きません。本記事では、本人出頭の原則と申請の取次ぎ、期限を過ぎてしまった場合の帰結、そして判決の内容が在留にどう跳ね返るのかを、順に説明します。
更新申請は在留期間の満了前でなければならない
在留期間更新許可申請は、在留期間が満了する前にしなければ意味を持ちません。満了前に申請が受理されていれば、入管法21条4項の特例期間により、処分がされるまでの間は従前の在留資格で在留できます。在留資格変更の場合は同法20条5項に同様の定めがあります。逆に、満了日を1日でも過ぎてしまえば、この仕組みは働きません。刑事手続の日程がどうであれ、まず確認すべきは満了日です。
本人出頭の原則と申請の取次ぎ
更新申請は、原則としてご本人が地方出入国在留管理局に出頭して行うものとされています。もっとも、一定の場合には申請の取次ぎが認められており、ご本人が出頭できない事情があるときに用いられます。勾留中は当然に出頭できませんから、弁護人を通じて、管轄の入管に対し、取次ぎが可能か、必要書類は何か、ご本人の署名をどのように得るかを確認する作業が最初の一歩になります。取次ぎができるかどうかは事案により異なりますので、一般論として断定はできません。早い段階で確認を始めることが、選択肢を残す唯一の方法です。
保釈中の申請で気をつけること
保釈中であれば出頭は可能ですが、保釈には住居の制限などの条件が付されています。遠方の入管へ行く場合や、日程が公判期日と重なる場合は、事前に弁護人と調整し、必要であれば裁判所への手続を経る必要があります。また、旅券が捜査機関に押収されたままである場合、申請時に提示できる書類が限られますので、その扱いも事前に確認してください。
期限を過ぎてしまった場合
在留期間を経過して在留する状態は、入管法24条4号ロの不法残留に該当します。同時に、同法70条1項5号の罪として3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金またはその併科の対象になります。もっとも、自ら出頭して速やかに出国する意思を示し、不法残留以外の退去強制事由に該当せず、過去に退去強制されたことも出国命令により出国したこともなく、速やかに出国することが確実と見込まれる場合には、入管法24条の3の出国命令の手続があります。出国命令により出国した場合の上陸拒否期間は同法5条1項9号の2により1年です。ただし出国命令の要件には、24条4号ハからヨまでのいずれにも該当しないことが含まれるため、薬物事犯に該当する方はこの手続を利用できません。出入国在留管理庁の令和7年の統計では、退去強制手続または出国命令手続を執った入管法違反者は18,442人で、うち不法残留が17,031人(92.3%)を占めています。
ご家族ができること
ご家族の役割は、情報を一か所に集めることに尽きます。第1に、在留カードの写し、旅券の写し、直近の許可通知の写しを揃えてください。満了日と在留資格の種類が分からないままでは、弁護人も入管への確認ができません。第2に、勤務先や学校との関係がどうなっているかを確認してください。退職や退学が生じていれば、入管法19条の16および19条の17による所属機関に関する届出が14日以内に必要になる場合があり、放置すれば在留資格の取消しを定める同法22条の4の問題にもつながります。第3に、面会や差入れの際に、事件の内容そのものについて詳細なやり取りをすることは避けてください。留置施設での面会には職員が立ち会い、内容が記録されることがあります。事件に関する打合せは、弁護人との接見を通じて行うのが原則です。
刑事処分は在留資格にどう跳ね返るか
判決の内容は、在留の帰趨を直接左右します。入管法24条4号リは無期または1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としますが、但書により全部執行猶予が付された場合は除外されます。同条4号チは薬物関係の法令違反で有罪の判決を受けた者を対象とし、罰金でも執行猶予でも該当し、在留資格の別表を問いません。同条4号の2は、強盗、不同意性交等、危険運転致死傷等で拘禁刑に処せられた別表第一の在留資格者を対象とします。在留特別許可については、入管法50条2項が収容令書により収容されている者と監理措置決定を受けた者に申請権を認め、同条3項は退去強制令書の発付後の申請を認めていません。動ける時期が限られていることが分かります。
よくある誤解
第1に、勾留中だから期限は止まるという誤解です。止まりません。第2に、家族が代わりに窓口へ行けば必ず受け付けてもらえるという誤解です。取次ぎの可否は事案によります。第3に、期限を過ぎても不起訴になれば自動的に元に戻るという誤解です。不起訴は退去強制事由のうち刑罰を要件とするものを回避しますが、不法残留という事実は別に評価されます。
当事務所の対応
当事務所では、松村大介弁護士が接見と打合せに直接対応します。中国語については外国人事件専属の通訳が常駐しており、英語その他の言語については事案に応じて通訳人を手配します。方針としては、執行猶予判決では足りないと考え、不起訴処分の獲得を最優先の目標としています。初回の接見の段階で在留期間の満了日と申請状況を確認し、刑事弁護と入管手続を一体として設計します。退去強制事由の該当性についても、故意や過失を含めて争う視点を持ちます。初回のご相談は無料です。微信(WeChat)ID matsumura1119 でもご連絡いただけます。
おわりに
刑事事件のご相談で、在留期間の満了日が最初の論点になることは、意外に知られていません。カレンダーを開くところから弁護は始まります。本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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この記事の英語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099107/
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