在留期間更新申請書の犯罪処分歴の欄はどう書くか 反則金・微罪処分・不起訴の扱い
2026/09/02
在留期間の更新申請書を書き進めていて、中ほどにある「犯罪を理由とする処分を受けたことの有無」という欄で手が止まった、という相談は珍しくありません。スピード違反で反則金を納めただけの場合はどうなのか。取調べを受けたが結局起訴されなかった場合はどうなのか。十代のころの保護観察は書くのか。判断の分かれ目が見えにくい欄です。
記載を誤ると単なる書き損じでは済まなくなることがあります。他方で、過去に何らかの処分を受けた事実があること自体が、そのまま不許可を意味するわけでもありません。恐れて隠すことが、実際にはいちばん重い結果を招きます。
本記事では、この欄が何を尋ねているのか、区分ごとの考え方、そして虚偽の記載をした場合に何が起きるのかを、入管法の条文に沿って整理します。
この欄が尋ねているのは日本国内外を問わない処分歴である
結論から言えば、この欄は日本国内の処分だけでなく、外国で受けた刑事処分も含めて申告することを求めています。在留状況の審査において申請人の素行は独立した判断要素であり、その基礎情報を申請人自身に申告させる仕組みです。
ここでいう処分は、有罪の確定判決に限られません。罰金の略式命令も処分ですし、外国の裁判所が言い渡した刑も処分です。入管法5条1項5号が薬物関係の外国法令違反まで上陸拒否事由としていることからも分かるとおり、入管法は外国での処分歴を無視しません。
反則金・微罪処分・保護処分・不起訴はどう考えるか
結論として、それぞれ法的な性質が異なるため、一律に「有」「無」で片づけることはできません。区分ごとに性質を押さえる必要があります。
- 交通反則通告制度による反則金:反則金を納付すると公訴が提起されない仕組みであり、刑罰そのものではありません。そのため軽度の速度超過などで反則金を納めただけであれば、刑事処分歴とは区別して扱われるのが一般的です。
- 反則金の対象外となる違反:無免許運転、酒気帯び運転、著しい速度超過などは反則制度の対象外で、略式命令による罰金が科されます。これは刑罰であり、明確に処分歴に当たります。
- 微罪処分:警察限りで処理し検察官に送致しない扱いで、有罪判決ではありません。ただし捜査を受けた記録は残ります。
- 少年時の保護処分:保護観察や少年院送致は刑罰ではなく保護のための処分であり、刑の言渡しとは性質が異なります。
- 不起訴処分:検察官が起訴しないと決めた処分で、前科にはあたりませんが、捜査を受けた事実そのものは残ります。
迷いやすいのは「刑罰ではないが記録は残る」類型です。書かなくてよいと自己判断した結果、審査の過程で捜査歴が判明し説明を求められる場面は実務上あります。迷う事項があるときは、空欄のまま提出したり自己流で処理したりせず、申請前に弁護士に確認するのが安全です。
虚偽の記載は取消しと刑事責任の両方につながる
結論として、事実に反する記載は、在留資格の取消しという行政上の不利益と、刑事責任という二つの経路で跳ね返ります。
行政上は、入管法22条の4が在留資格の取消事由を定め、その中には虚偽の申請によって在留資格を取得した場合が含まれます。取消しは在留期間の途中でも行われうる、更新不許可とは別の重い措置です。
刑事上は、偽りその他不正の手段によって在留に関する許可を受けた場合、入管法70条1項に定める罪の問題となります。同項の罪の法定刑は3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金、又はその併科です。ここで注意すべきなのは、罰金であっても有罪の確定判決である以上、その後の更新申請や永住申請の素行審査に長く影響するという点です。
出入国在留管理庁の令和7年の統計では、在留資格の取消件数は1,446件でした。取消しは決して例外的な措置ではありません。
刑事処分が在留資格にどこまで跳ね返るか
結論として、同じ有罪でも、罪名と刑の重さによって入管法上の帰結はまったく異なります。
| 類型 | 入管法上の帰結 |
|---|---|
| 無期又は1年を超える拘禁刑の実刑 | 入管法24条4号リの退去強制事由。ただし但書があり、刑の全部の執行猶予が付された場合は除外される |
| 薬物犯罪での有罪判決 | 入管法24条4号チ。罰金でも執行猶予でも刑の免除でも該当し、在留資格の別表を問わない |
| 一定の重大犯罪で拘禁刑 | 入管法24条4号の2。別表第一の在留資格をもって在留する者が対象 |
| 資格外活動で入管法73条の罪により拘禁刑 | 入管法24条4号ヘ |
4号リには但書があるため、「執行猶予でも必ず退去強制になる」という説明は正確ではありません。他方、4号リの柱書は「ニからチまでに掲げる者のほか」と定めており、薬物は4号リの守備範囲の外にあって、4号チで別途、罰金でも該当します。この差は大きく、申請書の記載を検討する段階でも意識しておく必要があります。
申請前にご本人とご家族ができること
結論として、更新申請の準備は、書き始める前の事実整理から始まります。
- 警察や検察から受けた呼出状、送致の通知、略式命令の書面などを時系列で集める。処分の名称が書面に残っていることが多く、性質の判断に直結します。
- 納付書を探す。反則金の納付書と罰金の納付書は別のものです。
- 結論を知らされていない事件があれば、今どうなっているかを確認する。処分未定と不起訴確定は意味が違います。
- 迷う項目を一覧にして、提出前に弁護士に相談する。提出後の訂正より、提出前に整えるほうがはるかに容易です。
ご家族としては、本人が不安から事実を小さく言おうとしがちである点を踏まえ、隠すことのほうが結果を悪くすると具体的に伝えることが助けになります。
よくある誤解
結論として、この欄をめぐる誤解の多くは「前科がなければ何も書かなくてよい」という思い込みから生じています。
第一に、不起訴になれば捜査の事実そのものが消えるという誤解です。不起訴は有罪ではありませんが、捜査を受けた事実がなかったことになるわけではありません。第二に、罰金は軽いので在留に影響しないという誤解です。薬物犯罪については罰金でも入管法24条4号チに該当します。第三に、外国での処分は日本の入管には分からないという誤解です。分かるかという事実の問題と、申告義務があるかという法の問題は別です。第四に、書き間違えても後で直せばよいという誤解です。虚偽と評価されうる記載は、その後の手続全体の信用に影響します。
当事務所の対応
当事務所では、松村大介弁護士が接見や打合せに直接対応します。通訳については、中国語は外国人事件専属の通訳が常駐しており、その他の言語は事案に応じて通訳人を手配します。
刑事事件では、執行猶予判決では足りないと考え、不起訴処分の獲得を最優先の目標として弁護活動を組み立てます。刑事手続で作成された供述調書はその後の違反審査や口頭審理の資料になりうるため、刑事事件と入管手続は最初から一体のものとして設計します。退去強制事由の該当性についても、故意や過失を争う余地がないかを検討します。
更新申請書の記載についても、過去の処分歴の性質を法的に整理したうえで、事実に即した記載と説明資料の準備を一緒に行います。初回相談は無料です。微信(WeChat)ID matsumura1119 でもご連絡いただけます。
おわりに
申請書の一つの欄は、その後の在留の安定を左右する記録になります。過去に処分を受けた事実そのものより、それをどう申告し説明したかのほうが、審査ではしばしば重く働きます。
本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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この記事のベトナム語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099081/
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