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執行猶予なら在留は安泰という誤解 入管法24条4号リの但書と4号チの違い

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執行猶予なら在留は安泰という誤解 入管法24条4号リの但書と4号チの違い

執行猶予なら在留は安泰という誤解 入管法24条4号リの但書と4号チの違い

2026/09/02

執行猶予がつけば身柄は解かれ、日本での生活も続けられる。そう考えて刑事裁判の終わりを一つの区切りと受け止める方は多いのですが、入管法の条文はそこまで単純にできていません。

結論から書くと、全部執行猶予によって退去強制事由から外れるのは、入管法24条4号リという一つの号だけです。そして薬物事件を捕捉する4号チには、その但書がまったく及びません。この二つの号の構造の違いを知らないまま刑事手続を終えてしまうと、判決の翌日から始まる入管の手続で足元をすくわれます。

この記事では、二つの号がどう違うのか、猶予判決が意味を持つ場面と持たない場面はどこで分かれるのかを、条文に即して整理します。

4号リの但書は何を除外しているのか

入管法24条4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としつつ、但書によって全部執行猶予が付された場合を除外しています。刑の一部の執行猶予の場合も、実際に服する部分が1年以下であれば除外されます。

この号に関する限り、猶予判決を得ることには決定的な意味があります。1年6月の実刑と1年6月執行猶予3年とでは、宣告された刑期は同じでも、退去強制事由該当性という一点で結論が正反対になります。刑事弁護において執行猶予を目指すことが、在留の維持に直結する典型的な場面です。

但書が及ぶ範囲は4号リの内側にとどまる

4号リの柱書は、ニからチまでに掲げる者のほか、という書き出しになっています。これは、ニからチまでで個別に定められた類型は4号リの守備範囲の外にある、という意味です。

したがって、4号リに置かれた但書も、ニからチまでの各号には効きません。執行猶予だから大丈夫という理解は、4号リだけを見て他の号を見ていないことから生じています。

4号チは有罪判決そのものを要件にしている

入管法24条4号チは、麻薬・大麻・あへん・覚醒剤等に関する法令に違反して有罪の判決を受けた者を対象とし、刑の重さを一切要件にしていません。罰金であっても、全部執行猶予であっても、刑の免除であっても該当します。在留資格が別表第一か別表第二かも問われません。

令和7年版犯罪白書によれば、令和6年の全部執行猶予率は大麻で84.2%です。大麻事件で猶予判決が出ること自体は珍しくありませんが、猶予がついたことは4号チの結論を左右しません。ここが最も誤解されている点です。

薬物事件では退去強制以外の入口もふさがれる

薬物で有罪判決を受けた場合、影響は退去強制手続の枠を超えて広がります。第一に、入管法5条1項5号の上陸拒否事由には期間の定めがありません。5条1項4号や9号のように何年という年限が定められておらず、罰金でも、外国の法令違反でも足ります。再入国の道は、入管法12条1項の上陸特別許可に限られます。

第二に、入管法24条の3の出国命令は、4号ハからヨまでのいずれにも該当しないことを要件としています。薬物該当者はこの要件を満たさないため、自ら出頭して短期間で出国し、上陸拒否期間を1年にとどめるという選択肢が使えません。

それでも在留特別許可の余地は残る

4号チに該当することと、在留が確定的に失われることは同じではありません。入管法50条1項の但書には加重要件が列挙されていますが、そこに4号チは含まれていません。無期又は1年を超える実刑でなければ、この加重要件は課されないという構造です。

入管法50条5項は、在留を希望する理由、家族関係、素行、本邦に在留することとなった経緯、在留期間その他の事情を考慮要素として法定しています。2024年6月改定の在留特別許可ガイドラインが現行の運用基準です。同条2項により、収容令書により収容されている者と監理措置決定を受けた者には申請権があり、3項により退去強制令書が発付された後は申請できません。10項は、不許可の場合に理由を付記した書面を交付すべきことを定めています。

猶予を目指す前に不起訴を目指す

4号チの構造からすると、薬物事件で在留を守るための出発点は、有罪判決そのものを回避すること、すなわち不起訴処分の獲得です。令和6年の起訴猶予率は、犯罪白書によれば大麻で35.5%、覚醒剤で8.5%、麻薬で15.9%、麻薬特例法で52.5%です。罪名によって幅は大きく、事案の内容と弁護活動の中身が結果を分けます。

不起訴となれば有罪判決は存在せず、4号チの要件は満たされません。執行猶予を最終目標に据えるか、不起訴を最終目標に据えるかで、起訴前の弁護活動の設計はまったく変わります。

薬物であっても入管法の対象外となる場合

すべての薬物関連事件が4号チに当たるわけではありません。4号チが挙げているのは、麻薬及び向精神薬取締法、大麻草の栽培の規制に関する法律、あへん法、覚醒剤取締法といった法令の違反です。エトミデート等の指定薬物は医薬品医療機器等法による規制であり、4号チの列挙する罪名には当たりません。

なお、令和6年12月12日施行の改正により、大麻取締法は大麻草の栽培の規制に関する法律へと改称され、大麻は麻薬及び向精神薬取締法上の麻薬に位置付けられました。同法66条の2として使用罪が新設され、法定刑は7年以下の拘禁刑です。単純所持の法定刑も5年以下から7年以下に引き上げられています。

ご本人とご家族が今できること

まず、罪名を正確に確認することです。同じく薬物と呼ばれていても、どの法令の違反かによって4号チに当たるかどうかが変わります。

次に、取調べでの説明を弁護人と詰めることです。刑事事件の供述調書は、その後の違反審査や口頭審理で資料として使われます。認識の有無や経緯についての説明が、退去強制事由の該当性を争う場面にそのまま影響します。

そして、家族関係、就労歴、納税や社会保険の状況といった資料を早めに集めておくことです。入管法50条5項の考慮要素は、口頭で述べるだけでなく、書面で裏づけることが求められます。

当事務所の対応

舟渡国際法律事務所では、松村大介弁護士が接見と打合せに直接あたります。中国語については外国人事件専属の通訳が常駐しており、その他の言語は事案に応じて通訳人を手配します。

薬物事件では、執行猶予判決を得ても4号チの問題が残るため、不起訴処分の獲得を最優先の目標として弁護活動を設計します。刑事事件と入管手続を一体のものとして扱い、退去強制事由の該当性についても、故意や認識の有無を含めて争う余地を検討します。初回相談は無料で、微信(WeChat)ID matsumura1119 でもご連絡いただけます。

おわりに

執行猶予という言葉の安心感と、条文が定める要件との間には、無視できない開きがあります。判決の前にその開きを把握しておくことが、家族の生活を守る現実的な手立てになります。本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119

この記事の簡体字中国語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099063/

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