舟渡国際法律事務所

日本で逮捕されたときの初動 クメール語話者とご家族のために

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日本で逮捕されたときの初動 クメール語話者とご家族のために

日本で逮捕されたときの初動 クメール語話者とご家族のために

2026/09/02

深夜、聞き慣れない番号から短い通話があり、警察署の名前だけを聞き取った。翌朝かけ直しても、本人には取り次いでもらえない。カンボジア出身の方のご家族から寄せられるご相談は、しばしばこの状態から始まります。

日本の刑事手続は、最初の三日間と、そこから続く二十日間の使い方で流れが大きく変わります。ところが、その間に何が進んでいるのかは、外からは見えにくい構造になっています。この記事では、逮捕直後の時間の枠、通訳をどう確保するか、弁護人がどう付くか、勾留中に何ができるか、そして刑事処分が在留資格にどう跳ね返るかを整理します。

最初の72時間と、その後の20日間

逮捕後の手続は法定の期限に沿って進みます。警察は逮捕から48時間以内に事件を検察官へ送致し、検察官は身柄を受け取ってから24時間以内、かつ逮捕から72時間以内に、裁判官へ勾留を請求するかどうかを決めます。

勾留が認められると原則10日間、やむを得ない事由があるときは延長でさらに最大10日間となり、起訴・不起訴の判断まで最大で23日間、身体を拘束されたまま取調べが続き得ます。この期間に作成された供述調書が、後の裁判でも、入管の手続でも使われます。だからこそ、最初の数日の対応が結論に影響します。

通訳は誰が、どのように用意するのか

通訳は捜査機関や裁判所の側で手配されます。刑事訴訟法175条は国語に通じない者に陳述をさせる場合に通訳人を付すことを、178条は国語でない文字等の翻訳を定めています。裁判所法74条は裁判所において日本語を用いると定めており、自由権規約14条3項(f)は使用言語を理解できない場合に無償で通訳の援助を受ける権利を保障しています。

もっとも、クメール語は事件数の多い言語ではありません。最高裁判所『あなたも法廷通訳を ごぞんじですか』令和7年1月版によれば、通訳を必要とした事件の終局被告人は令和5年に3,851人で、カンボジア語は2.2パーセントでした。人材の層が薄い言語では、期日や接見の調整に時間がかかることがあります。訳語に疑問を感じたときはその場で述べてかまいません。刑法171条は虚偽の通訳を犯罪と定めています。

弁護人はどう付くのか

弁護人を付ける経路は三つあります。第一に当番弁護士で、逮捕された方は一度、無料で弁護士を呼ぶことができます。第二に被疑者国選弁護で、勾留された段階から資力要件のもとで選任されます。第三に私選弁護で、ご家族が依頼する形です。

刑事訴訟法39条1項は、身体を拘束された被疑者・被告人が、弁護人または弁護人になろうとする者と立会人なしに接見し、書類や物の授受をすることを認めています。ご家族との面会が制限されている段階でも、弁護人の接見は別枠です。外部との唯一の確実な通路になることが少なくありません。

刑事処分が在留資格にどう跳ね返るか

刑事事件の帰結は、そのまま在留の問題に接続します。入管法24条4号リは、無期または1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としますが、但書により刑の全部の執行猶予が付された場合は除外されます。一部猶予の場合も、実刑部分が1年以下であれば除外されます。

これに対し、同条4号チは、麻薬・大麻・あへん・覚醒剤等に関する法令に違反して有罪の判決を受けた者を挙げており、罰金でも執行猶予でも刑の免除でも該当します。在留資格の種類も問いません。さらに入管法5条1項5号により、薬物関係の上陸拒否には年限の定めがなく、期間の定めのない上陸拒否となります。薬物事件は、他の罪名とは構造が異なります。

加えて、身体拘束が長引くこと自体が在留資格に影響し得ます。入管法22条の4は、正当な理由なく3か月以上その在留資格に応じた活動を行わないでいることを取消事由の一つとしています。留学や技能実習の在留資格をお持ちの場合、学校や実習先との関係が切れることの意味は小さくありません。

ご家族が抱きやすい誤解

罰金で済んだのだから在留には響かない、という理解をよく聞きます。多くの罪名についてはそのとおりですが、薬物事件では罰金でも4号チに該当します。ここは区別しなければなりません。

また、大使館や領事館が弁護してくれるという期待も見られます。領事関係に関するウィーン条約36条は、拘禁された外国人の要請に基づく領事通報と領事接見を定めていますが、領事官が弁護人の役割を担うわけではありません。制度の性質を正しく把握しておくことが大切です。

ご家族が今日できること

  • 本人が留置されている警察署名と、逮捕された日付を確認する。勾留の期限計算の出発点になります。
  • 在留カード、旅券、雇用契約書または在学証明、住居に関する資料、家族関係を示す書類を集める。勾留や保釈の判断でも、その後の入管手続でも使われます。
  • 領事機関への通報を希望するかどうかを、本人の意向として確認する。
  • 勤務先や学校への連絡の要否と方法を、弁護人と相談してから決める。入管法19条の16および19条の17の所属機関等に関する届出は14日以内であり、身体拘束中も期限は進みます。

当事務所の対応

舟渡国際法律事務所では、松村大介弁護士が接見と打合せに直接対応します。取調べで何をどう述べるか、勾留に対して準抗告を行うか、身元引受の体制をどう組むかを、事件の見通しとあわせて検討します。

通訳体制については、中国語は外国人事件専属の通訳が常駐しています。クメール語を含むその他の言語は、事案に応じて通訳人を手配します。弁護方針としては、執行猶予判決ではなお不十分と考え、不起訴処分を最優先の目標とします。刑事の供述調書が後の違反審査や口頭審理の資料になるため、刑事事件と入管手続は一体として設計します。退去強制事由の該当性についても故意や過失を争う視点で検討します。初回相談は無料です。微信のIDは matsumura1119 です。

おわりに

最初の数日は、情報が最も少なく、判断の材料も乏しい時期です。それでも、警察署名の確認、書類の準備、弁護人との接触という三つは、その場で始められます。本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119

この記事のクメール語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099043/

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