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日本に黙秘権はあるのか ミランダ警告との違いを条文から整理する

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日本に黙秘権はあるのか ミランダ警告との違いを条文から整理する

日本に黙秘権はあるのか ミランダ警告との違いを条文から整理する

2026/09/02

取調べで何も話さなくてよいのか。話さなければかえって不利になるのではないか。外国籍の方やそのご家族から、最も多く寄せられる質問のひとつがこれです。母国の映画で見た警察官のせりふを思い出し、日本でも同じ警告が読み上げられるはずだと考える方も少なくありません。

結論から言えば、日本にも黙秘権はあります。ただし、根拠も、告知のされ方も、行使したときの実務上の扱いも、英語圏で知られるミランダ警告とはかなり異なります。この記事では、根拠条文から在留資格への影響までを順に整理します。

日本の黙秘権はどの条文に基づくのか

根拠は憲法38条1項と刑事訴訟法198条2項の二つです。憲法38条1項は、何人も自己に不利益な供述を強要されないと定めます。この保障は日本国民に限られず、日本にいる外国籍の方にも及びます。在留資格の種類や在留の適法性によって薄まることはありません。

刑事訴訟法198条2項は、被疑者の取調べに際して、あらかじめ自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げなければならないと定めています。告知は捜査機関の義務です。また、日本が締結する自由権規約14条3項(a)は理解する言語で罪の性質と理由を告げられる権利を、同項(f)は無償で通訳の援助を受ける権利を定めています。

そして前提となるのが刑事訴訟法39条1項の接見交通権です。身体を拘束された被疑者・被告人は、弁護人または弁護人になろうとする者と立会人なしに接見し、書類や物の授受ができます。何を話し何を話さないかは、本来この接見で相談したうえで決める事柄です。

ミランダ警告との三つの違い

最大の違いは、告知を欠いた場合の効果です。英語圏で知られる枠組みでは、警告を経ない供述は原則として証拠から排除されます。日本では、198条2項の告知を欠いたことが直ちに証拠能力を失わせるとは扱われず、任意性を判断する一要素にとどまります。

第二に、弁護人の立会いです。日本の被疑者取調べに弁護人が立ち会う権利は明文で保障されていません。取調室にいるのは被疑者と取調官、必要な場合の通訳人です。だからこそ、接見で事前に方針を固める重みが他国より大きくなります。

第三に、身体拘束の長さです。逮捕後48時間以内に検察官へ送致され、検察官は逮捕から72時間以内に勾留を請求するか決めます。勾留は原則10日、延長で最大10日、起訴の判断まで最大23日間、拘束下の取調べが続き得ます。

告知は実際にいつ、どのように行われるか

告知は取調べの冒頭で口頭により行われるのが通常です。ただし、その言い回しが権利の全体像を伝えるとは限りません。いま黙っていても後から話せること、一度録取された内容を取り消すのは容易でないこと、弁護人と相談してから答えると述べてよいことまで説明されるとは限りません。最後の一文は正当な答え方であり、初期段階では安全な選択になることが多いといえます。

なお刑事訴訟法301条の2は、裁判員裁判対象事件と検察官独自捜査事件について、身体拘束下の取調べの原則全過程録音録画を求めています。対象は限定されており、自分の取調べが対象かは弁護人を通じて確認するのが確実です。

通訳を介した取調べで起きやすいこと

通訳を介する場面では、言葉の置き換えの段階で意味がずれ、それが記録として残ります。刑事訴訟法175条は国語に通じない者の陳述に通訳人を付すことを定め、裁判所法74条は裁判所で日本語を用いると定めています。

最高裁判所『あなたも法廷通訳を ごぞんじですか』令和7年1月版によれば、通訳を必要とした事件の終局被告人は令和5年に3,851人で、英語は3.8パーセントでした。母語ではないが英語なら通じるという理由で英語通訳が選ばれることもあり、その場合は認識や意図の程度といった微妙な部分ほど落ちます。訳が正確でないと感じたらその場で述べてかまいません。刑法171条は虚偽通訳を犯罪と定めています。

供述調書に署名する前に

供述調書は、あなたの言葉そのものではなく、取調官が日本語でまとめた文章です。刑事訴訟法198条4項は、調書を読み聞かせまたは閲覧させて誤りがないかを問い、被疑者が増減変更を申し立てたときはその供述を調書に記載しなければならないと定めます。訂正を求める権利があり、署名押印を拒む自由もあります。

黙秘の判断が在留資格に跳ね返る場面

刑事事件の供述調書は、その後の入管の違反審査や口頭審理でも資料として用いられ得ます。刑事手続と入管手続を一体として設計すべき理由がここにあります。

入管法24条4号リは、無期または1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としますが、但書により刑の全部の執行猶予が付された場合は除外されます。一部猶予でも実刑部分が1年以下なら除外されます。執行猶予でも必ず退去強制になるという説明は正確ではありません。他方、同条4号チは麻薬・大麻・あへん・覚醒剤等に関する法令違反で有罪の判決を受けた者を挙げ、罰金でも執行猶予でも刑の免除でも該当し、在留資格の別を問いません。薬物事件は刑の重さで結論が変わらない点で扱いが大きく異なります。

令和7年版犯罪白書によれば、令和6年の来日外国人被疑事件の起訴率は44.28パーセントで、全体の40.38パーセントより高い水準です。ここでいう来日外国人は、永住者、永住者の配偶者等、特別永住者、在日米軍関係者、在留資格不明者を除いた定義です。起訴を避けることの意味は、外国籍の方の場合により重くなります。

よくある誤解

黙秘すると勾留が長引くから話した方がよい、という理解が広く見られます。勾留の可否は罪証隠滅と逃亡のおそれで判断されるもので、供述の有無だけで決まりません。事案によっては早期に説明した方がよい場面もあり、一律の正解はありません。

一度話したらもう黙秘できない、という誤解もあります。黙秘権はどの段階でも行使できます。ただし作成済みの調書が消えるわけではありません。

ご本人とご家族が取れる行動

  • 当番弁護士の派遣を求めると述べる。逮捕された方は一度、無料で弁護士を呼べます。
  • 領事機関への通報を希望すると述べる。領事関係に関するウィーン条約36条が領事通報と領事接見を定めています。
  • ご家族は在留カード、旅券、雇用契約書、家族関係を示す書類を整える。勾留や保釈の判断でも、後の入管手続でも使われます。
  • 入管法19条の16・19条の17の所属機関等に関する届出は14日以内であり、身体拘束中も期限は進みます。

当事務所の対応

舟渡国際法律事務所では、松村大介弁護士が接見と打合せに直接対応します。取調べのどの段階で何を述べ、どの点は弁護人と相談してから答えると告げるかを具体的に検討します。中国語は外国人事件専属の通訳が常駐しています。英語を含むその他の言語は、事案に応じて通訳人を手配します。

弁護方針としては、執行猶予判決ではなお不十分と考え、不起訴処分を最優先の目標とします。供述調書が後の違反審査や口頭審理の資料になる以上、刑事事件と入管手続は一体として設計します。退去強制事由の該当性についても故意や過失を争う視点で検討します。初回相談は無料です。微信のIDは matsumura1119 です。

おわりに

黙秘権は二択で語られがちですが、実際には、いつ、何について、どのように述べるかという設計の問題です。設計は罪名、証拠の状況、在留資格の種類によって変わります。本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119

この記事の英語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099041/

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