在留カードを持っているのに不法滞在?|在留資格の取消しと残留
2026/08/27
在留カードは手元にある。写真も番号も印字され、在留期間の欄にはまだ先の日付が入っている。それなのに、入管から在留資格を取り消すという通知が届いた、あるいは職務質問の場で、あなたにはもう在留資格がないと言われた。そうした状況では、何が起きているのか分からないまま時間だけが過ぎていきます。
在留カードという「カード」を持っていることと、在留資格という「法的な地位」があることは、別のことです。この記事では、在留資格の取消し(入管法22条の4)を受けた後に日本にとどまった場合の刑事上・行政上の扱いを、条文に沿って整理します。
在留カードが手元にあれば、在留資格は残っているのですか
いいえ、必ずしもそうではありません。在留カードは、在留資格を持っていることを対外的に示すための書類であって、在留資格そのものではありません。取消しがされれば、カードの在留期間の欄に将来の日付が残っていても、在留資格という地位は失われます。
カードを持っているから大丈夫だという判断は危険です。取消しに関する書類が届いた記憶がある方、住居を移した後に入管からの郵便を受け取っていない方は、まず自分の在留資格が現在どうなっているのかを確認するところから始めてください。
在留資格の取消しとは、どのような制度ですか
在留資格の取消しは、入管法22条の4に定められた制度です。法律が号ごとに列挙する事由に当たると判断された場合に、いったん与えられた在留資格を取り消すことができるとされています。列挙されている事由には、偽りその他不正の手段によって上陸の許可や在留資格の変更・更新の許可を受けた場合のほか、その在留資格に応じた活動を相当の期間行っていない場合、住居地に関する届出の義務を果たしていない場合などが含まれます。
どの号に当たるとされているのかは、その後の見通しを大きく左右します。取消しの前には、本人が意見を述べる機会が設けられています。これは形式的な手続ではなく、事実関係の誤りや、活動を行えなかったことについての正当な理由を、資料とともに主張できる場です。また、取消しの際には、出国のための期限が指定される場合と、指定されない場合があります。期限を過ぎてなお日本にとどまれば、そこから先は不法残留と同じ土俵の問題になります。
在留資格を取り消された後も日本に残ると、何罪になりますか
在留資格の取消しを受けた後に日本に残留した場合は、取消しの理由となった号などに応じて、入管法70条1項3号、3号の2又は3号の3のいずれかに当たります。法定刑は同項の柱書により、3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金、又はその併科です。
在留期間を過ぎて残留する場合の70条1項5号とは条文の号が異なりますが、法定刑は同じです。つまり、取消し後の残留は行政上の問題にとどまらず、刑事罰の対象となる犯罪です。入管の手続だから警察は関係ない、という理解は誤りです。なお拘禁刑とは、令和4年改正刑法(令和7年6月1日施行)により、従来の2種類の自由刑を一本化して新設された刑をいいます。
取消しを受けると、退去強制の対象になりますか
はい。在留資格を取り消された方については、入管法24条2号の2から2号の4までのいずれかが退去強制事由として定められています。どれに当たるかは、取消しの理由となった号と、取消しの際に出国のための期限が指定されたかどうかによって変わります。
手続は、入国警備官による違反調査(27条以下)に始まり、収容令書(39条)による収容又は監理措置決定(44条の2第7項)を経て、入国審査官の違反審査(45条以下)と認定(47条3項)へ進みます。認定に不服があれば口頭審理を請求し(48条)、特別審理官の判定(48条8項)を受けます。さらに不服があれば法務大臣への異議の申出(49条)を行い、その裁決の段階で、在留特別許可(50条)が出されるか、退去強制令書が発付される(51条)かが分かれます。
取消しを受けた後でも、出国命令で帰ることはできますか
場合によります。出国命令(入管法24条の3)の対象となるのは、24条2号の4、4号ロ、6号から7号までのいずれかに該当する外国人に限られます。取消しに関する退去強制事由のうち、出国命令の対象として掲げられているのは2号の4であり、2号の2と2号の3は掲げられていません。対象となる類型に当たる場合でも、次の5つの要件をすべて満たす必要があります。
- イ又はロのいずれかに当たること。イは、27条の規定による違反調査の開始前に、速やかに本邦から出国する意思をもって自ら出入国在留管理官署に出頭した場合。ロは、違反調査の開始後、47条3項の通知を受ける前に、入国審査官又は入国警備官に対して速やかに出国する意思がある旨を表明した場合です。
- 24条3号から3号の5まで、4号ハからヨまで、8号又は9号のいずれにも当たらないこと。
- 本邦に入った後に、住居侵入、通貨偽造・文書偽造・有価証券偽造・支払用カード電磁的記録、賭博、殺人、傷害、逮捕監禁、略取誘拐、窃盗強盗、詐欺恐喝、盗品等に関する刑法各章の罪や、暴力行為等処罰法、盗犯等防止法、特殊開錠用具所持禁止法、自動車運転死傷処罰法、盗難特定金属製物品処分防止法の一定の罪により拘禁刑に処せられたものでないこと。
- 過去に本邦からの退去を強制されたこと、又は55条の85第1項の規定による出国命令により出国したことがないこと。
- 速やかに本邦から出国することが確実と見込まれること。
要件を満たす場合、主任審査官は速やかに出国を命じ、15日を超えない範囲内で出国期限を定めます(55条の85第1項)。住居や行動範囲の制限などの条件を付すことができます(同条3項)。出国命令の手続は、退去強制手続と異なり、収容を前提としません。
出国命令と退去強制とで、次に日本へ来られる時期はどれくらい違いますか
大きく違います。上陸拒否期間は入管法5条1項9号などに定められており、出国の仕方によって次のように分かれます。
- 出国命令により出国した場合は、出国した日から1年(5条1項9号ホ)。
- 24条の3第1号ロに当たる方、つまり違反調査の開始後に出国の意思を表明した方が出国命令で出国し、その後に短期滞在の活動を行おうとする場合は、出国した日から5年(9号ヘ)。
- 退去強制されたが、52条5項の決定を受け、期限までに自ら出国した場合(短期滞在目的を除く)は、退去の日から1年(9号ロ)。
- 退去強制された方で、それ以前に退去強制歴も出国命令歴もない場合は、退去の日から5年(9号ハ)。
- 退去強制された方で、すでに退去強制歴又は出国命令歴がある場合は、退去の日から10年(9号ニ)。
- 24条4号オからヨまでに該当して退去強制された場合は、期間の定めがありません(5条1項10号)。薬物関係法令違反による処罰歴に関する5条1項5号にも年限の定めはありません。
1年で足りるのか、5年なのか、10年なのか、あるいは期間の定めがないのか。その分かれ目は、多くの場合、手続のどの段階で自ら動いたかによって決まります。
在留資格を取り消されても、在留特別許可を求めることはできますか
できる場合があります。入管法50条1項は、退去強制対象者に該当する場合であっても、各号のいずれかに当たるときは、本人からの申請により、又は職権で在留を特別に許可することができると定めています。永住許可を受けているとき(1号)、かつて日本国民として本邦に本籍を有したことがあるとき(2号)、人身取引等により他人の支配下に置かれて在留するとき(3号)、難民の認定又は補完的保護対象者の認定を受けているとき(4号)のほか、その他法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき(5号)が挙げられており、取消しを受けた方の多くは5号の枠組みで検討することになります。
申請は、収容令書により収容された外国人又は監理措置決定を受けた外国人が行うものとされています(50条2項)。それ以前の段階では、職権の発動を求める活動になります。退去強制令書が発付された後は申請することができません(50条3項)。判断の時点は、認定・判定に服したとき、又は異議の申出に理由がないと裁決された後です(50条4項)。考慮される事情は50条5項に定められており、在留を希望する理由、家族関係、素行、本邦に入国することとなった経緯、本邦に在留している期間、その間の法的地位、退去強制の理由となった事実、人道上の配慮の必要性のほか、内外の諸情勢及び本邦における不法滞在者に与える影響その他の事情が挙げられています。許可される場合には在留資格と在留期間が決定され、条件を付すことができます(50条6項)。許可をしない処分をするときは、速やかに理由を付した書面で知らせなければならないとされています(50条10項)。
ここで、取消しの類型について有利に働きうる点があります。50条1項ただし書は、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者(刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者、及び一部猶予で実刑部分が1年以下の者を除く)や、24条3号の2・3号の3・4号ハ・4号オからヨまでに該当する者について、本邦への在留を許可しないことが人道上の配慮に欠けると認められる特別の事情があると認めるときに限る、という加重要件を設けています。取消しに関する24条2号の2から2号の4までは、この列挙に含まれていません。不法残留(24条4号ロ)と同じく、加重要件の対象ではないということです。もっとも、別の事件で実刑1年超の判決を受ければ、そこでただし書がかかります。刑事事件の見通しと在留の見通しは、この一点で直結しています。
なお、在留特別許可に係るガイドライン(令和6年3月改定、令和6年6月10日施行)は、在留特別許可を、本邦からの退去を強制されるべき外国人に対して例外的・恩恵的に行われる措置と位置づけたうえで、不法滞在を申告するため自ら地方出入国在留管理官署に出頭したことを積極要素として考慮すると明記し、他方で不法滞在の長期化は消極要素として評価されるとしています。
摘発される前に、自ら動くことの意味
在留資格の取消しには、他の類型にない特徴があります。ある日を境に、自分では今までどおり暮らしているつもりなのに、法的には在留資格のない状態になっているという点です。取消しの通知や、意見を述べる機会の案内が届いた時点が、実質的な最初の分岐点になります。
その先で上陸拒否期間の長さを分けるのは、24条の3第1号のイとロの違いです。27条の違反調査が始まる前に自ら出入国在留管理官署に出頭すればイに当たり、出国命令で出国した場合は1年です(5条1項9号ホ)。違反調査が始まってから出国の意思を表明した場合はロに当たり、その後に短期滞在で来日しようとすると5年になります(9号ヘ)。摘発を受けて出国命令の2番目から4番目の要件を欠けば、出国命令自体を使えず、退去強制として5年(9号ハ)又は10年(9号ニ)です。日本に残ることを目指す場合も方向は同じで、ガイドラインは自ら出頭したことを積極要素、不法滞在の長期化を消極要素としています。何もせずに時間が過ぎることは、この両面で不利に働きます。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としています。担当するのは松村大介弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号59077、2019年登録)です。
体制の特徴は三つあります。第一に、接見の初動から公判の結審まで、松村弁護士が全工程を直接担当します。事務員や若手弁護士による代行は行いません。第二に、外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しています。捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を利用していただけます。第三に、刑事手続が終わった後の在留資格の更新・変更等については、提携の行政書士とワンストップで対応します。
解決事例を二件ご紹介します。観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの、在留資格を失って不法滞在の状態となり、逮捕・起訴された事案では、婚姻・認知が未了で当局から一旦不受理とされたところ、憲法的な観点から交渉して婚姻・認知を成立させ、刑事裁判を意識した被告人質問・証人尋問を行い、過去の許可事例を分析したうえで、1回の手続で在留特別許可を獲得しました。
また、冤罪により不法就労助長罪に問われ、強制退去の危機に瀕した女性の事案では、退去強制事由には故意・過失が不要とする従来の実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を提起して上訴審まで争いました。その後、入管から在留特別許可が認められています。
初回のご相談は無料です。費用は事案に応じてお見積りします。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのお問い合わせでも差し支えありません。
最後に
在留資格の取消しに関する手続では、意見を述べる機会の段階、違反調査が始まる前の段階、退去強制令書が発付される前の段階と、選べる道が段階的に狭まっていきます。早い段階であるほど、選べる手段は多く残っています。
本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、ここで紹介した過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではありません。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
お問い合わせ
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