無免許運転やひき逃げで逮捕されたら|外国免許・国際免許の落とし穴と、在留資格への影響
2026/07/20
日本で自動車を運転するには、日本の運転免許か、条約に基づく国際運転免許証、あるいは一定の国の免許と翻訳文の組合せが必要でございます。ところが、この要件は国によって扱いが異なり、「本国の免許があるから運転できる」と信じたまま無免許運転となってしまう外国人の方が、後を絶ちません。本記事は、交通事件でご自身やご家族が捜査対象となった場合の見通しを整理するものでございます。
中国の運転免許は日本でそのまま使えない
国際運転免許証は、ジュネーブ条約の締約国が発行したものに限り、日本で有効とされます。中国はこの条約の締約国ではないため、中国の運転免許証や、中国で発行された国際免許を称する書面によって日本で運転することはできません。日本の免許への切替え(外国免許切替、いわゆる外免切替)の手続を経る必要がございます。この点の誤解は非常に多く、悪意なく無免許運転(道路交通法64条1項、3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金)に至ってしまう事案が実際に生じております。
事故が伴う場合の罪名
人身事故を起こした場合には、自動車運転死傷行為処罰法5条の過失運転致死傷罪(7年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金)が基本となります。無免許であった場合は同法6条4項により刑が加重されます。加えて、事故現場から立ち去れば、道路交通法72条1項の救護義務違反、いわゆるひき逃げが成立し、被害者が死傷している場合には10年以下の拘禁刑という重い法定刑が科され得ます。飲酒が絡めば危険運転致死傷罪の検討にも及びます。
立ち去ってしまう心理と、その評価
外国人の方が事故現場から立ち去ってしまう背景には、言葉が通じない不安、在留資格への恐れ、警察への不信といった事情が働いていることがございます。こうした事情は、犯罪の成否そのものを左右するものではございませんが、動機の了解可能性として量刑上考慮され得る要素でございます。他方、立ち去りの一事によって「反省がない」「逃亡のおそれがある」と評価され、勾留や起訴の判断に不利に働く現実もございます。だからこそ、早い段階で事情を正確に説明する機会を確保することが重要になります。
在留への影響と、不起訴を目指す意味
交通事件は、罰金で終わることも多い一方、死傷結果が重い事案では実刑や1年を超える拘禁刑となることもございます。その場合、入管法24条4号リの退去強制事由に該当し得ます。また、退去強制に至らずとも、在留期間更新の審査では素行が善良であることが求められ(入管法21条3項)、無免許運転やひき逃げは、この評価において軽くは扱われません。示談の成立は、被害者個人の財産・身体という保護法益が侵害された類型であるだけに、処分に反映されやすい領域でもございます。起訴前の示談成立は、不起訴獲得の現実的な鍵になります。
初動で押さえておきたい点
- 任意保険の有無と内容を、直ちにご確認ください。示談交渉の可否と速度が、処分の見通しを大きく変えます。
- 免許の有効性について誤解があった場合、その誤解に至った経緯(誰にどう説明されたか)を記録してください。無免許の故意を争う土台になり得ます。
- 通訳の質が結果を左右いたします。事故態様の説明は細部が重要であり、訳出のずれが過失の評価を変えてしまうことがございます。
当事務所のご案内と解決事例
当事務所は、被害者のいる事件における示談交渉を、刑事処分と在留資格の双方を見据えて進めてまいりました。
たとえば、盗撮の被害に遭われた方の代理人として刑事告訴と示談交渉を担当し、300万円の慰謝料の支払による示談を成立させた事例がございます。被害者側の立場で交渉を重ねてきた経験は、加害者側に立つ場面で、被害者のお気持ちがどこにあるのかを見誤らないための土台になっております。
また、卸売業を営む依頼者が取り込み詐欺の被害に遭われた事案では、刑事告訴を端緒として相手方を特定し、被害額を大きく上回る7,500万円の解決金による解決を実現しております。交渉の局面で何が動かせるのかを見極める作業は、刑事事件の示談にも通じるものでございます。
当事務所の最大の特徴として、松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします(事務員・若手弁護士による代行を行いません)。また、当事務所には外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を、刑事手続全般にわたってご利用いただけます。刑事手続が終わった後の在留資格の更新・変更につきましても、提携の行政書士と連携し、ワンストップでご相談をお受けしております。
おわりに
交通事件は、誰にでも起こり得るという意味で、他の類型とは性質を異にいたします。とりわけ免許の要件をめぐる誤解は、制度の分かりにくさに起因する面が否めません。事情を正確に伝えることで見通しが変わる余地は、十分に残されております。
なお、本記事は令和8年7月時点の法令に基づく一般的な解説であり、個別の事案につきましては弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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