在留カードを他人に貸した・借りたら|入管法違反となる「名義の貸し借り」と、その重い代償
2026/07/20
在留カードは、偽造した場合だけでなく、他人に貸したり、他人のものを借りて使ったりした場合にも、入管法上の犯罪となります。「同郷の知人に頼まれて、少しの間だけ貸した」「働くために友人のカードを借りた」という、ご本人としては軽い気持ちの行為が、在留資格そのものを失う結果につながることがございます。本記事は、名義の貸し借りに関わってしまった方とそのご家族に向けて、法的な位置付けを整理するものでございます。
貸した側・借りた側それぞれに罪が成立する
入管法73条の6は、在留カードを他人に提供した者、他人の在留カードを受領・所持した者、これらを斡旋した者を、いずれも1年以下の拘禁刑又は20万円以下の罰金に処すると定めております。貸した側にも罪が成立する点は、意外に知られておりません。さらに、借りたカードを用いて就労した場合には資格外活動(入管法70条1項4号等)が、雇用主が事情を知りながら就労させた場合には不法就労助長罪(入管法73条の2)が、それぞれ問題となり、事案は一気に拡がってまいります。
なぜ「軽い気持ち」が重く扱われるのか
在留カードは、その方が誰であり、どのような資格でこの国に在留しているのかを公証する制度の中核でございます。名義の貸し借りは、この制度の前提そのものを掘り崩す行為として、出入国管理の秩序という社会的な法益を侵害するものと評価されます。被害者個人への弁償によって解消される性質の犯罪ではないため、示談という手段が使いにくく、その分だけ、関与の経緯や動機、そこに至った生活上の事情を丁寧に説明する弁護活動が重要になります。
在留への影響
この類型で見落とされやすいのが、刑が軽く済んだ場合の在留への影響でございます。仮に罰金にとどまり、入管法24条4号リの退去強制事由には形式的に該当しなかったとしても、在留期間の更新・変更の審査においては、素行が善良であることが求められます(入管法21条3項、在留資格の変更・在留期間の更新のガイドライン)。出入国管理の秩序を直接に侵害した類型は、この素行の評価において厳しく見られる傾向がございます。「罰金で済んだから大丈夫」とは限らないのが実際でございます。
初動で押さえておきたい点
- 貸した経緯・借りた経緯を、時系列で正確に整理してください。対価の有無、依頼者との関係、用途の説明の有無が、後の主張の骨格になります。
- カードの提供が斡旋業者を介していた場合、ご本人が組織の一員と見られる危険がございます。関係性の説明は慎重を要しますので、弁護人を通じて行ってください。
- 黙秘権は正当な権利でございます。「友達だから貸しただけ」という説明が、提供の故意を認める記載として残ることがございます。
当事務所のご案内と解決事例
当事務所は、入管法違反の刑事事件と、その後の在留手続とを一体のものとして扱ってまいりました。刑事の処分が決まってから入管のことを考えるのでは、多くの場合、手遅れになるためでございます。
たとえば、観光目的で来日された方が在留資格を失い、不法滞在で逮捕・起訴された事案において、当時は婚姻と認知の手続が未了であったため当局から一旦は受理されない状況にございましたが、憲法的な観点から当局と交渉して手続を実現させ、刑事裁判では在留を見据えた被告人質問と証人尋問を行いました。国籍国発行の公的書類がほとんど得られない困難な状況下で有利な証拠を積み上げ、過去の許可事例を分析した結果、在留特別許可を一度の申請で獲得した事例がございます。
また、不法就労助長の罪に問われ強制退去の危機に立たされた女性について、退去強制事由の判断に故意・過失を要しないとされてきた従来の実務そのものを問う訴訟を、現在係争中でございます。名義の貸し借り事案でも、どこまで認識していたのかという点は、刑事だけでなく入管の局面でも意味を持ち続けます。
当事務所の最大の特徴として、松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします(事務員・若手弁護士による代行を行いません)。また、当事務所には外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を、刑事手続全般にわたってご利用いただけます。刑事手続が終わった後の在留資格の更新・変更につきましても、提携の行政書士と連携し、ワンストップでご相談をお受けしております。
おわりに
在留カードの貸し借りは、ご本人にとっては人助けのつもりであったり、生活のためのやむを得ない選択であったりいたします。その事情は、法的に無意味ではございません。処分が固まる前に、経緯を正確に伝える機会をお作りいただければと存じます。
なお、本記事は令和8年7月時点の法令に基づく一般的な解説であり、個別の事案につきましては弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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