犯罪収益の資金洗浄役として逮捕されたら|組織犯罪処罰法違反と、中国籍の方の在留資格
2026/07/20
詐欺の被害金を、複数の口座を経由させ、あるいは暗号資産に交換して出所を分からなくする、いわゆる資金洗浄の摘発が続いております。「送金の手伝いをすれば手数料がもらえる」と誘われ、詐欺そのものには関与していないつもりで巻き込まれる在日中国人の方も少なくありません。本記事は、ご自身やご家族が資金洗浄の疑いをかけられた場合に、何が争われ、在留資格にどう跳ね返るのかを整理するものでございます。
問われうる罪名
犯罪によって得られた収益であることを知りながら、その取得や処分を仮装し、あるいは隠匿した場合、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律10条の犯罪収益等隠匿罪が問題となります。法定刑は10年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金、又はこれらの併科でございます。加えて、口座の名義を貸した経緯によっては犯罪収益移転防止法違反が、詐欺グループとの結び付きが認められれば詐欺罪の共犯が、それぞれ併せて検討されることになります。
争点は「犯罪収益であることの認識」に集約される
この類型で決定的に重要なのは、動かした金銭が犯罪によって得られたものであると認識していたかどうかでございます。捜査機関は、報酬の不自然な高さ、送金の分割や名義の分散といった手口の異常性、指示のやり取りに用いられたアプリの秘匿性などから、認識があったと推認しようといたします。もっとも、これらは間接事実にすぎません。どのような説明を受けて関与したのか、報酬の額は業務の対価として説明可能な範囲だったのか、指示者との関係はどのようなものだったのか。こうした事情を初期から丁寧に積み上げることで、認識の不存在や希薄さを具体的に示す余地が残されております。
外国人事件特有のリスク
この類型は法定刑が重く、実刑または1年を超える拘禁刑が言い渡される可能性が現実にございます。その場合、入管法24条4号リの退去強制事由に該当し得ます。同号は執行猶予が付された場合の扱いを含め、条文の構造を号ごとに精査する必要がございます。また、退去強制に至らずとも、在留期間更新の審査における素行の評価(入管法21条3項)を通じて、更新が認められない事態も生じております。刑事の見通しだけを見て安心することはできない、というのが外国人事件の実際でございます。
不起訴処分を最優先の目標に置く
以上を踏まえますと、この類型の弁護活動は、公判で執行猶予を得ることを最終目標とすべきではなく、起訴前の段階で不起訴処分を獲得することを最優先に組み立てるべきものと考えております。不起訴となれば前科は付かず、退去強制事由にも該当いたしません。認識の不存在、グループ内での位置付けの従属性、被害弁償への協力の姿勢、日本での生活の実態といった事情を、検察官面談と意見書によって具体的に示してまいります。
初動で押さえておきたい点
- 黙秘権は正当な権利でございます。「送金しただけです」という善意の説明が、かえって関与の詳細を認める調書として残ることがございます。
- 携帯電話やアプリの履歴は重要な証拠でございます。消去は証拠隠滅と評価されかねませんので、弁護人にご相談のうえ対応をお決めください。
- 通訳の質が結果を左右いたします。資金の流れに関する説明は複雑で、訳出のずれがそのまま供述の矛盾として記録される危険がございます。
当事務所のご案内と解決事例
当事務所は、複数人が関与する組織型の事案、とりわけ末端で関与したとされる方の弁護に、数多く取り組んでまいりました。
たとえば、特殊詐欺の出し子行為に関わったとされた20代の女性について、指示役から欺かれ、あるいは圧力を受けていた状況や、犯意が認められないことを総合的に主張し、不起訴処分を獲得した事例がございます。組織の末端に置かれた方が、全体像を知らされないまま役割だけを担わされる構造は、資金洗浄事案にも共通いたします。
また、特殊詐欺の受け子として複数回にわたり再逮捕された事案において、取調べへの対応を徹底し、不当な取調べには抗議しつつ主張と立証を尽くした結果、全ての事件について不起訴処分を得た事例もございます。再逮捕が重なる局面こそ、一件ごとに争点を切り分ける作業が要になります。
当事務所の最大の特徴として、松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします(事務員・若手弁護士による代行を行いません)。また、当事務所には外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を、刑事手続全般にわたってご利用いただけます。刑事手続が終わった後の在留資格の更新・変更につきましても、提携の行政書士と連携し、ワンストップでご相談をお受けしております。
おわりに
資金洗浄の事案では、ご本人には「頼まれた送金をしただけ」という素朴な感覚があることが多く、その感覚と、捜査機関が描く組織図との間には大きな隔たりがございます。その隔たりを、証拠に基づいて埋めていくのが弁護人の役割でございます。早い段階でご相談いただければ、打てる手はまだ残されております。
なお、本記事は令和8年7月時点の法令に基づく一般的な解説であり、個別の事案につきましては弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
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