「一度帰国して、また入り直せばよい」という誤解|退去強制歴と上陸拒否期間、5年・10年の分かれ目
2026/07/19
在留資格に問題が生じた方から、「いったん中国に帰って、あらためてビザを取り直せばよいのではないか」というご質問をいただくことがございます。しかし、日本を離れる際にどのような手続を経たかによって、その後に再入国できるまでの期間は大きく変わってまいります。この違いを知らないまま出国してしまうと、取り返しのつかない結果を招くことがございます。本記事では、上陸拒否期間の仕組みを整理いたします。
上陸拒否期間という制度
入管法5条1項9号は、退去強制を受けた者について、一定期間、日本への上陸を認めないと定めております。退去強制を受けたことが初めての方は原則として5年間、過去にも退去強制を受けたことがある方は10年間、日本に入国することができません。さらに、薬物犯罪や売春関係など一定の事由に該当する場合には、期間の定めなく上陸が拒否されることもございます。旅行や短期の商用はもとより、家族の看護のための一時的な来日も認められません。
出国命令制度を選べる場合、選べない場合
他方、不法残留の状態にある方が自ら入国管理局に出頭し、一定の要件を満たす場合には、出国命令制度(入管法24条の3)の対象となり得ます。この制度によって出国した場合、上陸拒否期間は1年に短縮されます。要件は、速やかに出国する意思をもって自ら出頭したこと、不法残留以外の退去強制事由に当たらないこと、窃盗等の一定の罪で拘禁刑に処せられたことがないこと、過去に退去強制または出国命令による出国をしたことがないことなどでございます。5年と1年の差は、ご本人の人生設計にとって極めて大きな違いでございます。
出国してしまってからでは、選び直せない
ここが実務上もっとも申し上げたい点でございます。摘発を受けて退去強制手続に入ってしまった後で、「やはり出国命令にしてほしい」と求めても、要件を満たさなければ認められません。また、在留特別許可を求める道を選ぶのか、出国命令によって短期間で出直す道を選ぶのかは、ご家族の状況、就労の見込み、日本での生活の実態を踏まえて、出国前に判断すべき事柄でございます。いったん退去強制を受けてしまえば、5年という期間は動かせません。
刑事事件が絡む場合の注意
刑事事件で処分を受けた方の場合、出国命令制度の要件のうち、窃盗等の一定の罪により拘禁刑に処せられていないことという要件に注意が必要でございます。刑事手続の段階で不起訴処分を獲得できていれば、この要件との関係で不利にはなりません。刑事弁護の段階における不起訴の獲得が、入管手続における選択肢の幅そのものを決めるという構造は、外国人事件を貫く要点でございます。
出国を検討される前にご確認いただきたいこと
- ご自身が退去強制手続に入っているのか、まだ入っていないのかを確認してください。この違いが、選べる制度を分けます。
- 日本人配偶者やお子様がいらっしゃる場合、在留特別許可を求める余地が現実にございます。出国を急がず、まずご相談ください。
- 過去に退去強制や出国命令を受けたことがあるかどうかは、期間を5年と10年に分ける重要な事実でございます。
当事務所の入管手続への取組と解決事例
当事務所は、在留資格を失った方について、日本に残る道と、短期間で出直す道の双方を検討したうえで、ご本人にとって最善の選択をご提案しております。
不法滞在で起訴されるに至った方について、婚姻・認知の手続を整えたうえで在留特別許可を獲得した事例がございます。日本に生活の基盤とご家族がある場合、出国を急ぐことが必ずしも最善とは限りません。
また、退去強制事由の判断における故意・過失の要否を問う訴訟を現在係争中でございます。加えて、特殊詐欺の出し子に関わったとされた方について不起訴処分を獲得した事例もございます。刑事段階で前科を回避することが、入管手続における選択肢を確保することにつながってまいります。
当事務所の最大の特徴として、松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします(事務員・若手弁護士による代行を行いません)。また、当事務所には外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を、刑事手続全般にわたってご利用いただけます。刑事手続が終わった後の在留資格の更新・変更につきましても、提携の行政書士と連携し、ワンストップでご相談をお受けしております。
おわりに
一度帰国して入り直す、という選択は、条件が整えば確かに現実的な道でございます。しかし、その条件を満たしているかどうかは、出国する前にしか確かめられません。ご判断の前に、一度お立ち寄りいただければと存じます。
なお、本記事は令和8年7月時点の法令に基づく一般的な解説であり、個別の事案につきましては弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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