ナマコ・アワビの密漁で摘発されたら|漁業法違反と共犯構造、在留資格への影響
2026/07/19
夜間の海岸でナマコやアワビを採取し、これを買い取って流通させる密漁事案の摘発が、各地で続いております。高値で取引される水産物であることから、採取役・運搬役・買受役に役割が分かれた組織的な形態をとることも多く、外国人の方が採取役や運搬役として関わったとして摘発される例も報じられております。本記事では、この類型の法的な骨組みと、在留資格への影響を整理してまいります。
漁業法の特定水産動植物の採捕規制
令和2年に施行された改正漁業法は、ナマコ・アワビ・シラスウナギを特定水産動植物と定め、その違法な採捕について、3年以下の拘禁刑若しくは3000万円以下の罰金、又はこれらの併科という重い法定刑を定めております(漁業法132条、189条)。さらに、違法に採捕されたものと知りながら運搬・保管・取得・処分の媒介をした場合も、同様に処罰の対象とされております。罰金の上限が3000万円と高額であることは、この分野の規制強化の姿勢を端的に示すものでございます。
争点は「特定水産動植物であることの認識」
運搬役や買受役として関わった方の事案では、対象物が違法に採捕されたものであることの認識、すなわち故意の有無が中心争点となります。単に「海産物を運んでほしい」と依頼され、時間帯や報酬の不自然さに気づいていなかったという事情は、故意の認定を左右いたします。他方、深夜の人目を避けた受渡し、相場を大きく上回る報酬といった事情は、認識を推認する方向に働きますので、個々の事実関係を精密に検討する必要がございます。
在留資格への影響
漁業法違反は、入管法24条4号チが列挙する薬物・銃刀法等の類型には含まれておりません。したがって、罰金刑にとどまる場合には、直ちに退去強制事由に該当するものではございません。もっとも、1年を超える拘禁刑に処せられた場合には同条4号リの問題が生じますし、就労資格をお持ちの方が資格外の収入活動として採捕に従事していた場合には、同条4号ハ(資格外活動)の問題も併存いたします。号ごとに要件が異なりますので、条文に即した整理が欠かせません。
不起訴を目指すために
この類型は、水産資源という公共的な利益にかかわるため、被害者個人との示談によって解決するという構造にはなじみにくい面がございます。だからこそ、故意の不存在や関与の従属性を証拠に基づいて示すこと、採捕物の返還や漁業協同組合への謝罪、再発防止の具体的な担保を積み上げることが、不起訴処分に向けた現実的な道筋となります。
初動で押さえておきたい点
- 現場で採取された物の種類・数量について、確認しないまま調書に署名しますと、後に量刑の前提として固定されてしまいます。
- 報酬の受領方法や依頼の経緯を示す記録は、関与の程度を説明する重要な資料でございますので、保全が有効でございます。
- 夜間・早朝の摘発が多い類型でございますので、逮捕の連絡を受けたご家族は、まず留置先を確認し、弁護人の派遣をご検討ください。
当事務所のご案内と解決事例
当事務所は、複数名が役割を分担する組織的な事案において、依頼者ご本人の関与の程度を丁寧に切り分ける弁護を積み重ねてまいりました。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者について、証拠を一点ずつ検証し、無罪判決を獲得した事例がございます。運搬や保管を担った方が対象物の性質をどこまで認識していたかという争点は、密漁事案の構造と重なる部分が少なくありません。
また、裁判員裁判対象事件を含む重大事件や、国際的に報道された事件への対応経験も重ねてまいりました。入管手続の局面では、公的書類の乏しい困難な状況下で在留特別許可を獲得した事例もございます。
当事務所の最大の特徴として、松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします(事務員・若手弁護士による代行を行いません)。また、当事務所には外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を、刑事手続全般にわたってご利用いただけます。刑事手続が終わった後の在留資格の更新・変更につきましても、提携の行政書士と連携し、ワンストップでご相談をお受けしております。
おわりに
密漁事案は、罰金の上限が3000万円に引き上げられたことに象徴されるように、社会的な非難が強まっている領域でございます。それだけに、末端で関わった方が実態以上に重く扱われる危険もございます。ご本人が本当に何を知っていたのかを、早い段階で丁寧に確認させていただきたく存じます。
なお、本記事は令和8年7月時点の法令に基づく一般的な解説であり、個別の事案につきましては弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
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