金地金の密輸・無申告輸入で逮捕されたら|関税法違反と消費税の不正還付、中国籍の方が直面する在留資格の問題
2026/07/19
香港などから金塊を航空機で持ち込み、税関に申告しないまま国内で売却する、いわゆる金地金の密輸事案が、近時繰り返し報じられております。荷物の運搬だけを頼まれ、中身の詳細を知らされないまま関わってしまう方も少なくありません。本記事は、こうした事案に巻き込まれた在日中国人の方、そして日本に駆けつけたご家族に向けて、手続の見通しと在留資格を守るための考え方を整理するものでございます。
問われうる罪名と法定刑
金地金を輸入する際は、消費税等の課税対象となるため税関への申告が必要です。これを申告せずに持ち込めば、関税法111条の無許可輸入罪(10年以下の拘禁刑若しくは1000万円以下の罰金、又はこれらの併科)や、同法110条の関税等ほ脱罪が問題となります。さらに、国内での売却にあたり消費税相当額を上乗せして受け取り、あるいは輸出免税を仮装して還付を受けた場合には、消費税法違反や詐欺罪が加わることもございます。
運搬役の「故意」が中心争点となりやすい
この類型で実務上もっとも争われるのは、運搬を担った方が、荷物の中身と申告義務の存在をどこまで認識していたかという点でございます。報酬の額、依頼者との関係、渡航の頻度、荷物の隠匿方法といった間接事実から故意が推認されることが多く、逆に言えば、これらの事情を丁寧に解きほぐすことで、故意の不存在や認識の希薄さを示す余地が残されております。捜査の初期段階で、どのような経緯で依頼を受けたのかを正確に記録しておくことが、後の主張の土台になります。
外国人事件特有のリスク
関税法違反で起訴され、有罪判決を受けた場合、その刑が1年を超える拘禁刑であれば、入管法24条4号リの退去強制事由に該当し得ます。同号は執行猶予が付された場合を一律に除外するものではなく、号ごとの構造を条文に即して精査する必要がございます。また、退去強制に至らない場合でも、在留期間更新の審査における素行の評価(入管法21条3項)を通じて、更新が認められない事態も現実に生じております。
不起訴処分を最優先の目標に置く理由
以上の構造からすれば、この類型の弁護活動は、公判で執行猶予を得ることではなく、起訴前の段階で不起訴処分を獲得することを最優先の目標として組み立てるべきものと考えております。不起訴となれば前科は付かず、退去強制事由にも該当いたしません。故意の不存在、関与の従属性、税額の納付、生活の実態といった事情を、検察官面談と意見書によって具体的に示してまいります。
初動で押さえておきたい点
- 黙秘権は正当な権利でございます。荷物の中身についての認識を曖昧なまま述べ、それが調書に残ると、後に覆すことは容易ではありません。
- 逮捕直後から弁護人を選任し、税関・警察のいずれの手続で動いているのかを整理していただくことが有効でございます。
- 通訳の質が結果を左右いたします。関税・税務の用語は日常会話とは異なり、訳出のずれがそのまま供述の食い違いとして記録されることがございます。
当事務所のご案内と解決事例
当事務所は、国境を越える事案、すなわち海外の関係者・海外の証拠・複数国の手続が絡む刑事事件を、数多く取り扱ってまいりました。
たとえば、覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者について、押収物と通信記録を一点ずつ検証し、所持の故意と営利目的の不存在を主張して、無罪判決を獲得した事例がございます。運搬役の「中身を知らなかった」という主張を、証拠に基づいて具体的に立ち上げる作業は、密輸事案にも共通いたします。
また、裁判員裁判対象事件や、国際的に報道された重大事件への対応経験も重ねてまいりました。さらに、入管手続の局面では、公的書類がほとんど得られない困難な状況下で証拠を積み上げ、在留特別許可を一度の申請で獲得した事例もございます。
当事務所の最大の特徴として、松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします(事務員・若手弁護士による代行を行いません)。また、当事務所には外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を、刑事手続全般にわたってご利用いただけます。刑事手続が終わった後の在留資格の更新・変更につきましても、提携の行政書士と連携し、ワンストップでご相談をお受けしております。
おわりに
金地金の密輸事案は、金額の大きさばかりが注目されがちですが、弁護の勝負どころは「その方が何を知っていたか」という一点にございます。ご本人にとっては、ただ荷物を運んだだけという素朴な感覚があるはずで、その感覚を法的な主張に翻訳するのが弁護人の仕事でございます。早い段階でご相談いただければ、打てる手はまだ残されております。
なお、本記事は令和8年7月時点の法令に基づく一般的な解説であり、個別の事案につきましては弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
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