入管法24条4号リの構造を読み解く|なぜ『執行猶予でも退去強制』が起こるのか
2026/06/24
外国人事件のご相談では、「執行猶予なのに、なぜ強制送還の話が出るのか」というご質問を多くいただきます。その答えは、入管法24条各号の構造、とりわけ4号リの読み方にあります。本記事は、競合する解説では踏み込まれにくいこの条文の構造を、制度として一般的に整理するものです。記載は2026年6月時点の理解に基づきます。
退去強制事由は号ごとに構造が異なる
入管法24条は、退去強制となる事由を多数の号に分けて列挙しております。重要なのは、これらが一律の基準で並んでいるのではなく、号ごとに要件の構造が異なるという点です。たとえば、4号チは薬物事犯等を刑の重さを問わず列挙する一方、4号リは「無期又は1年を超える拘禁刑」という量刑の基準を設けています。自己の事案がどの号に触れ得るのかを正確に見極めなければ、見通しを誤ります。
4号リの『1年を超える拘禁刑』と除外の構造
4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由とします。ここで鍵となるのが、刑の全部の執行猶予が付された場合の取扱いです。同号には、全部執行猶予の場合を一定の範囲で除外する構造が組み込まれており、執行猶予の付された全部執行猶予判決であれば、この号には該当しないと整理される場面がございます。「執行猶予なら在留できる」という説明は、この4号リの構造だけを念頭に置いたものといえます。
なぜ『執行猶予でも退去強制』が起こるのか
では、なぜ執行猶予でも退去強制となる事案があるのか。それは、4号リ以外の号、とりわけ4号チが働く場合です。薬物事犯は、4号チにより刑の重さや執行猶予の有無を問わず退去強制事由とされ得るため、執行猶予が付いても退去強制の対象となります。つまり、「執行猶予かどうか」だけでなく、「どの罪で、どの号に触れるのか」を見極めることが、結論を分けるのです。号の構造を取り違えると、安心が一転して退去強制につながりかねません。
残された憲法上の論点(故意・過失要件論)
さらに、退去強制事由の判断に故意・過失を要するかという、より根本的な論点がございます。従来の入管実務は、退去強制を客観的事実のみで判断し、故意・過失を要件としないとしてまいりました。しかし、これは責任主義の射程を行政処分にどこまで及ぼすかという憲法論を孕みます。松村大介弁護士は、この点を正面から問う訴訟を現在係争中です。号の構造の精密な読解と、その先にある憲法論の双方を見据えることが、外国人の在留を守る弁護の核心であると考えております。
当事務所のご案内と解決事例
当事務所は、入管法24条各号の構造を号ごとに精査し、刑事段階から在留を見据えた弁護を行ってまいりました。
冤罪により不法就労助長罪に問われ強制退去の危機に瀕した女性を救済すべく、退去強制事由には故意・過失を要しないとする従来の実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を現在係争中です。
観光目的で来日された方が日本人女性との間にお子様を授かりながら在留資格を失い、不法滞在で逮捕・起訴された事案で、婚姻・認知の手続を成立させ、入管当局の過去の許可事例を分析して、在留特別許可を一度の申請で獲得した事例がございます。
当事務所の最大の特徴として、松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします(事務員・若手弁護士による代行は行いません)。また、当事務所には外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を刑事手続全般にわたってご利用いただけます。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更等についても、提携の行政書士と連携してワンストップで対応いたします。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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