刑事事件と退去強制は別の線路を走る|入管法違反類型でみる二重トラックの構造
2026/06/23
外国人の事件をめぐっては、「刑事で決着がつけば、それで終わり」という理解が広く見られます。しかし実際には、刑事手続と退去強制手続は、別々の制度として、別々の判断で進みます。この記事は、在留カード偽造や不正入国援助といった入管法違反の類型を題材に、刑事と入管という二つのトラックの構造を制度面から掘り下げて整理するものです。
二つのトラックはなぜ別々に動くのか
刑事手続は、国家が個人の刑事責任を問い、刑罰を科すかどうかを判断する制度です。これに対し退去強制手続は、入管法に基づき、外国人を国外に退去させるかどうかを判断する行政手続です。目的も根拠法も判断機関も異なるため、刑事で不起訴・無罪となっても、入管が独自に退去強制事由の有無を判断する、という構造が生まれます。
退去強制手続の大まかな流れ
退去強制の手続は、おおむね、入国警備官による違反調査、入国審査官による違反審査、特別審理官による口頭審理、法務大臣等への異議の申出、という段階を経て進みます。この過程で在留特別許可を求めることができ、最終段階で在留が認められることもあります。各段階に手続上の意味があり、どこで何を主張するかによって結果が変わります。
入管法24条は「号ごと」に構造が違う
退去強制事由を定める入管法24条は、号ごとに要件が異なります。たとえば4号リは「無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者」を対象としますが、刑の全部の執行猶予を受けた場合は除かれます。一方、薬物関係の有罪(4号チ)には、こうした執行猶予の除外規定が定められていません。「執行猶予なら大丈夫」という一般論が通用しない理由は、まさにこの号ごとの構造の違いにあります。自分の事案がどの号に該当し得るのかを正確に見極めることが、防御の出発点です。
独自の視点――責任主義は退去強制にも及ぶか
刑事責任は、故意・過失という「責任」があって初めて問えるのが大原則です(責任主義)。ところが入管実務では、退去強制事由の判断にあたり故意・過失を要件としない運用が長く続いてきました。客観的に該当事実があれば足りる、という考え方です。これに対し松村大介弁護士は、責任主義の射程を行政処分にも及ぼすべきではないかという問題意識から、不法就労助長を理由とする退去強制の事案でこの点を正面から争う訴訟を現在係争中です(事例D-2・結果を予断するものではありません)。他の事務所ではあまり見られない、本ブログ独自の視座です。
二重トラックを前提とした防御の組み立て
二つのトラックが別々に動く以上、防御も二段構えで考える必要があります。第一に、刑事手続の段階で故意・過失や構成要件該当性を徹底して争い、不起訴処分を目指す。第二に、仮に有罪となっても、入管手続で退去強制事由の該当性を争い、責任主義の射程や比例原則を主張する。第三に、在留特別許可の段階では、入管庁が過去に公表した許可事例を分析し、同種事情との均衡(平等原則)を主張する。刑事弁護の初動から、この三段の備えを意識して証拠を残すことが重要です。
当事務所のご案内と解決実績
舟渡国際法律事務所の松村大介弁護士は、まさにこの二重トラックを一体で扱う弁護を実践してまいりました。不法就労助長を理由とする退去強制で責任主義の射程を問う係争中の取組み(事例D-2・結果を予断しません)に加え、在留資格を失った方について過去の許可事例の分析を通じて在留特別許可を一度で獲得した事例(事例D-1)や、受け子で複数回再逮捕された事案で全件不起訴を獲得した事例(事例B-2)がございます。
当事務所では、松村大介弁護士が刑事の初動から入管手続まで全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐いたします。手続後の在留資格の更新・変更等も、提携の行政書士と連携してワンストップで支援いたします。
おわりに
「刑事が終われば終わり」ではなく、刑事と入管という二つの線路を同時に見据えること――これが外国人事件の核心です。号ごとの構造の違いや責任主義の射程といった論点を踏まえた一貫した戦略が、在留を守る力になります。制度の全体像にご不安があれば、早めにご相談ください。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
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