在留資格のない人を働かせてしまったら|雇用主が問われる不法就労助長罪と「知らなかった」の壁
2026/06/23
人手不足のなか、紹介された人を雇ったところ、その人に就労資格がなかった――こうした経緯で、雇用主が不法就労助長罪(入管法73条の2)に問われる事案が後を絶ちません。経営者ご自身が外国籍の場合、刑事処分に加えて自らの在留資格まで失いかねず、影響は二重に及びます。この記事は、飲食・建設・小売などで人を雇う在日中国人の経営者の方に向けて、罪の構造と防御の考え方を整理いたします。
不法就労助長罪とは
入管法73条の2は、事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者、あるいは不法就労をあっせんした者などを処罰します。法定刑は拘禁刑又は罰金(あるいは併科)で、決して軽くありません。重要なのは、雇用主が相手の在留資格を知らなかったとしても、「過失(知らないことに落ち度があった場合)」があれば処罰を免れない構造になっている点です。在留カードの確認を怠った、不自然な点を見過ごしたといった事情が、過失の評価につながります。
逮捕後の流れ
逮捕されれば、48時間以内の検察官送致、24時間以内の勾留請求という流れをたどります。雇用の実態、採用時の確認状況、就労の指揮監督などが取調べの焦点となり、関係する従業員や帳簿も調べられます。最初の72時間で、採用経緯と確認体制を正確に説明できる準備を整えることが重要です。
外国人経営者特有のリスク(退去強制)
不法就労助長で有罪となった外国籍の経営者は、入管法24条4号ヌ(他の外国人に不法就労活動をさせた者等)に該当し得るほか、1年を超える実刑となれば4号リにも直結し得ます。経営する事業の継続だけでなく、ご本人とご家族の在留そのものが危うくなります。刑事処分が罰金や執行猶予で済んでも、在留資格の更新審査で「素行不良」と評価される危険が残ります。
「知らなかった」をどう争うか――故意・過失の問題
本罪の核心は、雇用主に不法就労についての認識(故意)または過失があったかどうかです。相手が精巧な偽造在留カードを示していた、紹介者を信頼する合理的事情があった、確認の体制を一応整えていたといった事情は、故意・過失の不存在を基礎づけ得ます。
さらに重要な視点があります。刑事事件では故意・過失を当然に検討するのに、退去強制という行政処分の場面では「故意・過失は要件でない」とする運用が長く続いてきました。松村大介弁護士は、責任主義の射程を行政処分にも及ぼすべきではないかという問題意識から、不法就労助長を理由とする退去強制の事案でこの点を正面から争う訴訟を現在係争中です(事例D-2・結果を予断するものではありません)。刑事段階から故意・過失の不存在を立証しておくことが、入管手続における主張の基礎になります。
不起訴処分を目標に
事業と在留を守る最善の道は、起訴前の不起訴処分です。採用時の確認の事実、偽造の精巧さ、是正措置、再発防止体制(在留カードの確認手順の整備等)を、検察官面談と意見書で具体的に示します。執行猶予で満足するのではなく、不起訴を目標に据えることが肝要です。
初動の3つのポイント
- 黙秘権:採用の経緯を曖昧に語ると、認識ありと受け取られかねません。事実関係を整理してから対応を。
- 早期の弁護人選任:帳簿・関係者の聴取が進む前に方針を固めることが大切です。
- 本人のための通訳:経営判断の経緯は微妙な事実を含みます。質の高い通訳が正確な説明を支えます。
当事務所のご案内と解決実績
舟渡国際法律事務所の松村大介弁護士は、不法就労助長を理由とする退去強制の危機にある女性の救済で、責任主義の射程を問う訴訟を係争中であり、退去強制事由における故意・過失要件論を実務に問う取組みを続けています(事例D-2・結果を予断しません)。これは他の事務所ではあまり見られない独自の視座です。
また、在留資格を失って逮捕・起訴された方について、過去の許可事例の分析を通じて在留特別許可を一度で獲得した事例(事例D-1)や、覚醒剤取締法違反(営利目的所持)の重い類型で無罪判決を獲得した事例(事例A-1)もございます。
当事務所では、松村大介弁護士が全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐いたします。手続終了後の在留資格の更新・変更等も、提携の行政書士と連携してワンストップで支援いたします。
おわりに
「知らなかった」では済まされない構造があるからこそ、採用時の確認体制と、いざというときの故意・過失の主張が事業と在留を守ります。従業員の在留資格に不安を感じたら、問題が大きくなる前にご相談ください。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
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