外国人の保釈は認められますか|起訴後にしかない日本の保釈と中国の取保候審の違い
2026/09/05
日本で家族が逮捕されたとき、中国のご親族から最初に尋ねられるのは、いつ保釈で出られるのかという質問です。中国の取保候審は捜査の段階から申し立てられるため、日本も同じだと考えるのは自然です。しかし日本の保釈は起訴された後にしか存在せず、逮捕から起訴・不起訴が決まるまでの最長23日間には、保釈という手段そのものがありません。この違いを知らずに待っていると、最も重要な三週間が過ぎてしまいます。
本記事の要点
- 日本の保釈は起訴後の被告人のための制度であり、起訴前の被疑者は請求できません(刑事訴訟法207条1項ただし書)。
- 起訴前に身柄が解かれる主な経路は、勾留請求の却下、準抗告、勾留の取消し・執行停止、そして検察官の不起訴処分です。
- 外国人の保釈で最大の争点は逃亡のおそれであり、日本国内の住居・身元引受人・旅券の保管をどれだけ具体的に示せるかで判断が変わります。
- 保証金は事件の性質と本人の資産に応じて裁判所が定め、条件違反がなければ手続の終了後に返還されます。
- 保釈が許可されても、退去強制事由に該当する方は入管に収容されることがあり、刑事と入管の二つの手続を並行して見ておく必要があります。
日本に起訴前の保釈はありますか
ありません。保釈は起訴された被告人について認められる制度で、被疑者の勾留には準用されません(刑事訴訟法207条1項ただし書)。逮捕後48時間以内に検察官へ送致され、検察官は24時間以内に勾留を請求します。認められれば原則10日間、延長でさらに最大10日間の拘束が続き、起訴・不起訴の判断はこの最長23日間の中で行われます。
この期間に釈放される経路は、勾留請求の却下、勾留の裁判に対する準抗告、勾留の取消しや執行停止、そして検察官の不起訴処分です。現実に最も可能性があるのは最後の経路です。法務省『令和7年版犯罪白書』によれば、令和6年の来日外国人被疑事件の起訴猶予率は48・35%でした。保釈を待つのではなく、この23日間に不起訴を取りにいくことが、外国人の刑事事件と在留を守る出発点になります。
中国の取保候審と日本の保釈はどこが違いますか
最大の違いは使える段階です。中国の刑事訴訟法上の取保候審は捜査の段階から申し立てることができ、期間の上限は12か月とされています。日本の保釈は起訴後にしか使えない代わりに、起訴後は判決の確定まで期間の上限がありません。
| 比較項目 | 中国の取保候審 | 日本の保釈 |
|---|---|---|
| 利用できる段階 | 捜査の段階から可能とされる | 起訴された後の被告人のみ |
| 担保の方法 | 保証人による保証又は保証金 | 原則として保証金の納付 |
| 期間の上限 | 12か月とされる | 上限はなく判決の確定まで |
| 住居 | 居住地を離れる際に許可を要する | 裁判所が制限住居を指定する |
| 出国・帰国 | 原則として認められない | 原則として認められない |
| 違反した場合 | 保証金の没収等 | 保釈の取消しと保証金の没取 |
保釈はどのような場合に認められますか
起訴後の保釈請求は原則として許さなければならないとされています(権利保釈。刑事訴訟法89条)。ただし、死刑又は無期若しくは短期1年以上の拘禁刑に当たる罪のとき、過去に一定の重い罪で有罪判決を受けたことがあるとき、常習として長期3年以上の拘禁刑に当たる罪を犯したとき、罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき、被害者や証人を威迫すると疑うに足りる相当な理由があるとき、氏名又は住居が分からないときは、この原則から外れます。
外国人の事件で実際に問題になるのは、罪証隠滅と住居の二つです。これらに当たる場合でも、裁判所は逃亡や罪証隠滅のおそれの程度と、拘束の継続によって本人が受ける健康上・経済上・社会生活上・防御の準備上の不利益の程度を考慮して、職権で保釈を許すことができます(同法90条)。弁護人の仕事は、おそれを下げる材料と、拘束が続く不利益を示す材料を同時に積み上げることです。
外国人であることは保釈の判断にどう影響しますか
不利に働くのは逃亡のおそれの評価です。母国に帰る先があること自体が逃亡の可能性として語られやすく、住居と身元引受人の実質が乏しいとこの評価を覆せません。第一に住居です。勤務先の寮に住んでいた方は逮捕を機に解雇され、住む場所を失うことが少なくありません。制限住居として示せる場所がなければ前提が欠けます。第二に身元引受人です。日本国内に生活を見る人がいるか、その人が出頭を確保できる関係にあるかが問われます。第三に旅券です。弁護人が旅券を預かって保管するなど、出国が事実上できない状態を具体的に示す必要があります。第四に言語です。制限住居や出頭義務の意味を本人が理解していることを、通訳を介した記録に残します。
保釈保証金はいくら必要ですか
保証金の額は、犯罪の性質及び情状、証拠の証明力、被告人の性格及び資産を考慮し、出頭を保証するに足りる相当な金額として裁判所が定めます(刑事訴訟法93条)。一律の相場はなく、同じ罪名でも被害額や前科の有無で大きく動きます。見込みは担当弁護士から説明を受けてください。
保証金は没収されるお金ではありません。逃亡や条件違反がなく手続が終われば返還されます。もっとも保釈が取り消されれば全部又は一部が没取されます(同法96条)。中国のご家族が日本の口座を持たない場合でも、日本国内の親族や勤務先の関係者が納付する方法、民間の立替制度を使う方法があります。誰の資金で納めるかは出頭確保の評価にも関わるため、弁護人と相談して決めてください。
保釈が認められても入管に収容されることがありますか
あります。刑事手続の身柄と入管手続の身柄は別だからです。在留期限が切れている方や退去強制事由に該当する方は、保釈が許可されてもその場で入国警備官に引き渡され、収容令書によって入管施設に収容されることがあります。ご家族から見れば、保証金を用意したのに帰ってこないという事態です。
この場面では、収容によらず手続を進める監理措置の申立てを検討します。出入国在留管理庁によれば、令和6年6月10日の施行から同年末までの監理措置決定は1,123件で、監理人の9割以上は親族・知人でした。刑事の保釈と入管の監理措置は、住居と身元引受人という土台を共有しています。詳しくは退去強制・在留特別許可・監理措置をご覧ください。
弁護士に依頼するとどのような対応ができますか
当事務所は起訴前の段階では不起訴処分の獲得を最優先の目標に据えます。執行猶予付きの判決を得ても在留資格を失う類型があるため、有罪判決そのものを作らないことが最も確実な在留の防御になるからです。起訴された場合は、制限住居の確保、身元引受人の確保、旅券の保管、通訳を介した誓約の記録という順に材料を積み上げて保釈を請求します。刑事弁護と入管手続はワンストップで担当し、受任時に入管法24条のどの号が問題になるかを特定して、保釈の準備と監理措置・在留特別許可の準備を同じ資料で進めます。退去強制事由についても故意・過失を争う立場から、制裁的な行政処分に責任主義の射程が及ぶべきであるとの主張を展開しており、不法就労助長罪が認定された事件で在留特別許可を得た実績がありますが、結果は個別の事情によります。松村大介弁護士本人が初回接見から一貫して担当し、外国人事件専属の中国語通訳が同席します。微信で中国本国のご家族と直接連絡を取ることもできます。ご相談はお問い合わせへ。
よくある質問
保釈中に中国へ一時帰国できますか
原則としてできません。制限住居を離れること自体に許可が必要であり、出国は逃亡と評価される行為の典型です。無断で出国すれば保釈は取り消され、保証金も没取されます。事情があるときは必ず事前に弁護人を通じて裁判所へ申し出てください。
日本に頼れる人がいません。身元引受人はどうすればよいですか
親族に限られません。勤務先の上司や知人が引受人になる例もあります。重要なのは肩書ではなく、本人と日常的に連絡が取れ、期日への出頭を現に確保できる関係にあることです。弁護人が引受人の陳述書を作成して裁判所へ示します。
保釈保証金を用意できなければ、判決まで出られませんか
資産が乏しいことは金額を定める際の考慮要素になります(刑事訴訟法93条)。納付できる額を疎明し、住居と身元引受人の条件を厚くすることで、金額の調整を求める余地があります。民間の立替制度を利用する方法もあります。
起訴される前に、家族が保証金を準備しておく意味はありますか
あります。起訴前に保釈は請求できませんが、起訴された当日に請求できるよう準備しておけば拘束の期間を短くできます。住居の確保、引受人の確保、資金の準備は起訴を待たずに進められます。
保釈された後に入管へ収容されたら、弁護士は何ができますか
収容の当否を争うほか、監理措置の申立て、仮放免の請求、在留特別許可を求める意見書の提出を検討します。刑事の弁護人がそのまま入管手続の代理人になれば、保釈のために集めた資料を活用できます。
本記事は一般的な解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。保釈の可否は事案により大きく変わりますので、具体的なご事情は弁護士にご相談ください。
本記事は2026年9月時点の情報です。
執筆:松村大介(弁護士・第一東京弁護士会所属/登録番号59077)。舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田3-4-10 布施ビル本館3階)代表。外国人の刑事事件と在留(退去強制・在留特別許可)を主たる注力分野とし、中国語圏の依頼者の事件を数多く取り扱う。外国人事件専属の中国語通訳が在籍し、逮捕直後の接見から在留手続まで弁護士本人が一貫して対応する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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